ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム

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「みんなどうもありがとう! 本当にいろいろ、いろいろありましたけど、すごく……ミュージシャンとして、幸せな10年だったと思います」。本編終盤、熱気あふれる横浜スタジアムの舞台で、ゴッチこと後藤正文はじっくり噛み締めるように話していた。2003年にシングル『未来の破片』でメジャー・デビューを飾ってから10周年を記念して、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが横浜スタジアムで2日間にわたって開催するアニバーサリー・ライブ。それぞれ「ファン感謝祭」「オールスター感謝祭」と銘打った2日間の1日目は「ファン感謝祭」。「今日はファン投票で選ばれた上位の曲しかやらないので!」とゴッチも言っていた通り、10周年記念ライブ特設サイトで実施したファン投票で上位にランクインした楽曲とともに、00年代以降の日本のロック・シーンをリードし続けてきたアジカンの10年史を、約3万人のオーディエンスとともに祝福し合う、最高のステージだった。

陽の暮れかけた横浜スタジアム。両袖に大きな太陽光パネルを擁し、バックスクリーンを背にして設置された巨大ステージに開演SEが鳴り響いた瞬間、スタジアム一面を埋め尽くしたクラップが、山田貴洋/伊地知潔/喜多建介/後藤正文の4人がオン・ステージすると一気に割れんばかりの歓声へと塗り替わっていく。そして、1曲目のデビュー・シングル“未来の破片”のギター・リフが轟くと、スタンディング・アリーナ(グラウンド)も客席もでっかいシンガロングの輪で包まれていく……二部構成で約3時間半にわたって開催されたこの日の『ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」』、第一部のセットリストは以下の通り。

■1部
01.未来の破片
02.エントランス
03.Hold me tight
04.電波塔
05.アンダースタンド
06.君の街まで
07.ブラックアウト
08.夏の日、残像
09.夜のコール
10.夏蝉
11.脈打つ生命
12.十二進法の夕景
13.未だ見ぬ明日に
14.橙
15.ループ&ループ
16.リライト
17.迷子犬と雨のビート
18.ワールド ワールド ワールド
19.新しい世界

ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム
“未来の破片”とそのカップリング“エントランス”の連射というエモーショナルな展開に続いて演奏していたのは、アジカン超初期の英語曲“Hold me tight”。「僕らが大学生の頃からやってる曲で、『ずいぶんかわいい歌うたってんな』みたいな感じでバカにされて。で、メジャーに行って(シングル『君の街まで』の)カップリングに入れたら『英語が下手だ』ってみんなに言われて。この中にも、そうやって俺のことdisった人いっぱいいると思いますけど(笑)。今日はそういうみなさんに復讐をする場でもありますし、同時に最大限の感謝を、今から数時間、全身全霊でみなさんに発しますので。心のグローブでキャッチしてください!」というゴッチのMCからも、この日のライブへの想いと、今この瞬間の充実感が滲む。最近は上田禎(G・Key)/三原重夫(Perc)/岩崎愛(Cho)の3人をサポートに迎えた7人編成でのライブが多かったし、翌日の「オールスター感謝祭」も7人編成でステージに立つアジカンだが、この日はたった4人のソリッドなアンサンブルで、しかしどこまでも堂々とスタジアムを揺さぶっていく。

“君の街まで”“ループ&ループ”“リライト”“迷子犬と雨のビート”といったシングル曲はもちろん、“電波塔”“アンダースタンド”“夏の日、残像”(『君繋ファイブエム』/2003年)、“脈打つ生命”“未だ見ぬ明日に”(ミニアルバム『未だ見ぬ明日に』/2008年)、“橙”(『マジックディスク』)といったアルバム曲(ゴッチいわく、“脈打つ生命”は「すげえ久々の曲、っつうか生まれて初めて生で演奏します」とのこと)のみならず、コンピ盤『NANO-MUGEN COMPILATION』にのみ収録されていた“夜のコール”“夏蝉”まで幅広い楽曲がリクエストを集めていることが、「1部」のセットリストからもわかる。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム
「でも何曲か、あんまりイントロで盛り上がってない曲とかあって。そういうの俺、いいと思う、逆に(笑)。“夏蝉”とかって、『NANO-MUGEN COMPILATION』(2008年)に入ってるんですけど……今、『100万回聴いた!』って誰か言ってたけど、それは嘘だって俺は思ってる(笑)。300万分って……何時間? 誰か計算しといて。あとで帰るまでにこいつをちゃんと問い詰めるから(笑)」という悪戯心満載のMCに、横浜スタジアムが爆笑で包まれる。「ごめん! 『100万回聴いたよ』って比喩じゃん? それをいちいち言葉尻をとらえて『ほんとかよお前』みたいな、そういうバンドをねーーこういうところでやる人たちの中では最も地味だしさ。そういう冴えない俺たちを、ずっと応援してきてくれて、みんなが僕たちの作った曲を聴いてくれたんだなあと思って。もう1曲目からずっと感動してるんですけど」。そんなゴッチの言葉に、熱い拍手が湧き起こっていく。

デビュー当時から、いやその前から、アジカンの音楽は常に「ひとりでも多くの人と音楽と/ロックとをつなげること」「自分たちのことは二の次で、ロックそのものを少しでも先に進めること」に向かって燃え盛っていたし、彼らがこの10年間で数多く行ってきた大規模なライブも、また横浜アリーナで開催してきた洋邦混成ロック・フェス『NANO-MUGEN FES.』も、まさにそんな意志に貫かれたものだった。それだけに、アジカンが純粋に自分たちの音楽と足跡と向き合う今回の横浜スタジアム2Daysは、アジカン・ヒストリー的に見ても極めて稀なことだし、特別なことだ。この日の会場を満たしていた祝祭感には、アジカンの10年史のみならず、そこに至るまでの苦悶の日々まで含めて讃え合うような、唯一無二の高揚感がみなぎっている。『NANO-MUGEN FES.』とはまったく違う形での、どこまでも感動的な「凱旋公演」だ。「1部」だけでも十二分に強力なセットリストだが、「1部」終盤のゴッチの「今日は二部構成になってます。実は、まだファン投票上位の曲は1曲もやっておりません!」の言葉に感激と衝撃がスタジアムを駆け巡る。“ワールド ワールド ワールド”から流れ込んだ“新しい世界”のスケール感で会場を熱く震わせて、「1部」は終了。

■2部
20.絵画教室
21.それでは、また明日
22.転がる岩、君に朝が降る
23.ムスタング
24.羅針盤
25.或る街の群青
26.海岸通り
27.君という花
28.Re:Re:
29.ソラニン

20分間の休憩を挟んでスタートした「2部」は、ファン投票ベスト10をカウントダウン形式で発表しつつ演奏。横浜スタジアムのスコアボードに楽曲名/ファン投票の順位が掲示されるーーのと同時に、「アジカン内での投票結果の順位」も発表していくあたり、アジカンならではの趣向だろう。ちなみに、上記のリストに「アジカンの投票順位」を併記すると以下の通り([ ]内がアジカン順位)。

10位 絵画教室 [88位]
9位 それでは、また明日 [9位]
8位 転がる岩、君に朝が降る [14位]
7位 ムスタング [30位]
6位 羅針盤 [48位]
5位 或る街の群青 [8位]
4位 海岸通り [3位]
3位 君という花 [6位]
2位 Re:Re: [19位]
1位 ソラニン [40位]

ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム
“絵画教室”(2ndアルバム『ソルファ』のアウトテイク。後にカップリングベスト『フィードバックファイル』に収録)のファン投票/アジカン投票の乖離っぷりに会場が沸いたり、最新アルバム『ランドマーク』収録のシングル“それでは、また明日”がどちらも「9位」とわかった瞬間におおっと歓声が湧いたり、ゴッチが「俺が納得いってないのが一個あって。“転がる岩~”のメンバーの順位が14位って……俺はもうちょっと好きなんだけどね」とボヤいたり……といった具合に、1曲ごとに単なるカウントダウンとは違う驚きと感激が広がっていく。そこに、「10年で100曲以上作って、改めて振り返ると思うこといっぱいあって……」と言いつつ披露される「『君繋ファイブエム』のタイトルに山ちゃんが『何言ってるかわからない』と激怒して『どれぐらい怒ってるかわかるか? 髪型変えるぞ!』と言った話」「デビュー前『アジカンやめる』と言っていたキヨシには、『ソルファ』を作り終わるぐらいまで『売れなくなったらこいつまた売れなくなんじゃねえの』と疑念を持っていて、『ファンクラブ』でキヨシとやっと友達になれた話」「インディーズ盤『崩壊アンプリファー』の歌入れの時、山ちゃんが玉置浩二のライブを観に行って来なかった話」など10年分の裏話が重なり合って、強烈な感慨と歓喜が巨大な空間を埋め尽くしていく。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム
ゴッチが「僕のすごい好きな曲です」と披露した“海岸通り”の雄大な響きに巻き起こった一面のハンドウェーブ。ファン投票1位の“ソラニン”はゴッチ自身「フラッシュバック00年代的な曲」と言っていたし、個人的にはアジカン内ランクは相当下かな?と思っていたので、「40位」には逆に驚いたが、スタジアムを満たしたでっかい多幸感はそんな個々のランクの差異すらロックの彼方へ吹っ飛ばすほどのエネルギーに満ちていた。余談だが、“或る街の群青”終わりのタイミングで遠くで花火が上がって、舞台上のアジカンの4人も驚いていたのだが、これは近くの横浜赤レンガ倉庫で開催されていたスピッツの野外ライブ終演後のものだったようだ。

アンコールでは横浜DeNAベイスターズのユニフォームを羽織って登場した山ちゃん、キヨシ、建さん……に続いて、本編のままの衣装で登場したゴッチ。「だって聞いてないもん! 『みんなで同じの着てこうぜ』とか。ハブられてるからしょうがないじゃん!(笑)。野球のユニフォームは高校生の時に懲りて脱いだんだよね」とボヤきつつ、さらに喜多に「お前、阪神ファンだろ?」とツッコミを入れたりしつつ、手にしたギターはデビュー当時に使っていたギター:ギブソンのマローダー。「先輩に譲ってもらったんだけど、すっごい音悪いんだこのギター。久々に持って懐かしいんだけど……」と思い出を語るゴッチ。「このギターをハードケースに入れて、京急に乗って、または建ちゃんの運転する車で東京まで出て行って、ライブやって……俺たちもその時は20代の中頃に差し掛かっちゃってて。これからどうしよう?なんて思いながら、悩んで悩んで、やめようかなと思ったこともたくさんあって。でも、アジカンをやめずにここまで進んでこれたのは……この髪型変わんなかった人(山田)が、髪型と同じように変わらずに『このバンドを転がしてくんだ』『いいバンドなんだよ』っていう気持ちを表し続けてくれたっていう。それはすごく山ちゃんには感謝してます」という赤裸々な言葉に、惜しみない拍手が広がっていく。

続けてキヨシに「こいつがもたらしてくれた風みたいなのもあって。バンドの風通しもよくなったし、音楽的にも……ドラム上手でしょ? いろんな音楽的進歩の手助けをしてくれたんですよ。今ではバンマスっていうか、俺たちの演奏を後ろでコントロールしてる、いいドラマーになったなと思ってます。キヨシもありがとう」、さらに建さんに「よくキヨシと山ちゃんと俺で話すのは、『建さんこそASIAN KUNG-FU GENERATIONだよね』みたいな。建ちゃんはもっとやれるよ! 大学の時、『この人カッコいい』って思ったんだよ、顔ブスだけど(笑)。カッコいいっていうか、惹かれるものがずっとあるんだよ、この人には。だから、建ちゃんにはいちばん厳しいんだけどさ」とメッセージを伝えていくゴッチ。「すごい長いMCでごめんなさい。でもほんとに、この3人とバンドやれて、とてもとても嬉しいし。そして、もうほんと横浜の片隅で、誰にも見つけてもらえずに、ほんとにいじけて、石ころみたいに転がって……その時の気持ちを思い出すとね、今でも悪夢の中にいるような気分になるんですけど。こうやって10年かけて、いろんな人が自分たちの音楽を見つけてくれて。それがほんとにほんとに嬉しいです。ありがとうございます!」……10年間の想いのこもった感謝の言葉に、3万人のオーディエンスが力強い拍手と歓声で応えていく。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」 @ 横浜スタジアム
「新曲を作りました。俺たちの10周年を想って作った曲です」というゴッチのコールとともに鳴り響いたのは、この10周年記念ライブのために作られた新曲“ローリングストーン”。《愛はないぜ 未来もない 気分はどう? ローリングストーン》という出口なき葛藤を希望と直結してきたアジカンの歩みそのもののような勇壮なロック・ナンバーが、横浜の夜空に熱く響き渡った。長い1日のグランド・フィナーレ=“遥か彼方”の余韻冷めやらぬ中、肩を組んで一礼する4人に、さらなる感動が胸の底から沸き上がってきた。「フェスでもツアーでも、昔の曲をまとめてやったりする機会ってなくて。逆にこうやって『聴きたい』って言ってもらった曲をやるのもいいなと思いながらね……昔のことって、思い出すんだなと思って。作った当時のこととか。ほんと感動しながら演奏してます」とゴッチも言っていたし、「僕らまだまだこれから15年、20年と続けていきますんで、よほどのことがなければ。また何か定期的に……」と、今回の「ファン感謝祭」的なリクエスト・ライブの可能性も示していたアジカン。そして、この10周年記念ライブの祝祭空間は2日目ーーマット・シャープ(ザ・レンタルズ)/細美武士(the HIATUS)/ホリエアツシ(ストレイテイナー)/金澤ダイスケ(フジファブリック)をゲスト・アクトに迎えた「オールスター感謝祭」へと続く!(高橋智樹)

[SET LIST]
■1部
01.未来の破片
02.エントランス
03.Hold me tight
04.電波塔
05.アンダースタンド
06.君の街まで
07.ブラックアウト
08.夏の日、残像
09.夜のコール
10.夏蝉
11.脈打つ生命
12.十二進法の夕景
13.未だ見ぬ明日に
14.橙
15.ループ&ループ
16.リライト
17.迷子犬と雨のビート
18.ワールド ワールド ワールド
19.新しい世界

■2部
20.絵画教室
21.それでは、また明日
22.転がる岩、君に朝が降る
23.ムスタング
24.羅針盤
25.或る街の群青
26.海岸通り
27.君という花
28.Re:Re:
29.ソラニン

■ENCORE
30.ローリングストーン
31.遥か彼方
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