陽の暮れかけた横浜スタジアム。両袖に大きな太陽光パネルを擁し、バックスクリーンを背にして設置された巨大ステージに開演SEが鳴り響いた瞬間、スタジアム一面を埋め尽くしたクラップが、山田貴洋/伊地知潔/喜多建介/後藤正文の4人がオン・ステージすると一気に割れんばかりの歓声へと塗り替わっていく。そして、1曲目のデビュー・シングル“未来の破片”のギター・リフが轟くと、スタンディング・アリーナ(グラウンド)も客席もでっかいシンガロングの輪で包まれていく……二部構成で約3時間半にわたって開催されたこの日の『ASIAN KUNG-FU GENERATIONデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」』、第一部のセットリストは以下の通り。
■1部
01.未来の破片
02.エントランス
03.Hold me tight
04.電波塔
05.アンダースタンド
06.君の街まで
07.ブラックアウト
08.夏の日、残像
09.夜のコール
10.夏蝉
11.脈打つ生命
12.十二進法の夕景
13.未だ見ぬ明日に
14.橙
15.ループ&ループ
16.リライト
17.迷子犬と雨のビート
18.ワールド ワールド ワールド
19.新しい世界
“君の街まで”“ループ&ループ”“リライト”“迷子犬と雨のビート”といったシングル曲はもちろん、“電波塔”“アンダースタンド”“夏の日、残像”(『君繋ファイブエム』/2003年)、“脈打つ生命”“未だ見ぬ明日に”(ミニアルバム『未だ見ぬ明日に』/2008年)、“橙”(『マジックディスク』)といったアルバム曲(ゴッチいわく、“脈打つ生命”は「すげえ久々の曲、っつうか生まれて初めて生で演奏します」とのこと)のみならず、コンピ盤『NANO-MUGEN COMPILATION』にのみ収録されていた“夜のコール”“夏蝉”まで幅広い楽曲がリクエストを集めていることが、「1部」のセットリストからもわかる。
デビュー当時から、いやその前から、アジカンの音楽は常に「ひとりでも多くの人と音楽と/ロックとをつなげること」「自分たちのことは二の次で、ロックそのものを少しでも先に進めること」に向かって燃え盛っていたし、彼らがこの10年間で数多く行ってきた大規模なライブも、また横浜アリーナで開催してきた洋邦混成ロック・フェス『NANO-MUGEN FES.』も、まさにそんな意志に貫かれたものだった。それだけに、アジカンが純粋に自分たちの音楽と足跡と向き合う今回の横浜スタジアム2Daysは、アジカン・ヒストリー的に見ても極めて稀なことだし、特別なことだ。この日の会場を満たしていた祝祭感には、アジカンの10年史のみならず、そこに至るまでの苦悶の日々まで含めて讃え合うような、唯一無二の高揚感がみなぎっている。『NANO-MUGEN FES.』とはまったく違う形での、どこまでも感動的な「凱旋公演」だ。「1部」だけでも十二分に強力なセットリストだが、「1部」終盤のゴッチの「今日は二部構成になってます。実は、まだファン投票上位の曲は1曲もやっておりません!」の言葉に感激と衝撃がスタジアムを駆け巡る。“ワールド ワールド ワールド”から流れ込んだ“新しい世界”のスケール感で会場を熱く震わせて、「1部」は終了。
■2部
20.絵画教室
21.それでは、また明日
22.転がる岩、君に朝が降る
23.ムスタング
24.羅針盤
25.或る街の群青
26.海岸通り
27.君という花
28.Re:Re:
29.ソラニン
20分間の休憩を挟んでスタートした「2部」は、ファン投票ベスト10をカウントダウン形式で発表しつつ演奏。横浜スタジアムのスコアボードに楽曲名/ファン投票の順位が掲示されるーーのと同時に、「アジカン内での投票結果の順位」も発表していくあたり、アジカンならではの趣向だろう。ちなみに、上記のリストに「アジカンの投票順位」を併記すると以下の通り([ ]内がアジカン順位)。
10位 絵画教室 [88位]
9位 それでは、また明日 [9位]
8位 転がる岩、君に朝が降る [14位]
7位 ムスタング [30位]
6位 羅針盤 [48位]
5位 或る街の群青 [8位]
4位 海岸通り [3位]
3位 君という花 [6位]
2位 Re:Re: [19位]
1位 ソラニン [40位]
アンコールでは横浜DeNAベイスターズのユニフォームを羽織って登場した山ちゃん、キヨシ、建さん……に続いて、本編のままの衣装で登場したゴッチ。「だって聞いてないもん! 『みんなで同じの着てこうぜ』とか。ハブられてるからしょうがないじゃん!(笑)。野球のユニフォームは高校生の時に懲りて脱いだんだよね」とボヤきつつ、さらに喜多に「お前、阪神ファンだろ?」とツッコミを入れたりしつつ、手にしたギターはデビュー当時に使っていたギター:ギブソンのマローダー。「先輩に譲ってもらったんだけど、すっごい音悪いんだこのギター。久々に持って懐かしいんだけど……」と思い出を語るゴッチ。「このギターをハードケースに入れて、京急に乗って、または建ちゃんの運転する車で東京まで出て行って、ライブやって……俺たちもその時は20代の中頃に差し掛かっちゃってて。これからどうしよう?なんて思いながら、悩んで悩んで、やめようかなと思ったこともたくさんあって。でも、アジカンをやめずにここまで進んでこれたのは……この髪型変わんなかった人(山田)が、髪型と同じように変わらずに『このバンドを転がしてくんだ』『いいバンドなんだよ』っていう気持ちを表し続けてくれたっていう。それはすごく山ちゃんには感謝してます」という赤裸々な言葉に、惜しみない拍手が広がっていく。
続けてキヨシに「こいつがもたらしてくれた風みたいなのもあって。バンドの風通しもよくなったし、音楽的にも……ドラム上手でしょ? いろんな音楽的進歩の手助けをしてくれたんですよ。今ではバンマスっていうか、俺たちの演奏を後ろでコントロールしてる、いいドラマーになったなと思ってます。キヨシもありがとう」、さらに建さんに「よくキヨシと山ちゃんと俺で話すのは、『建さんこそASIAN KUNG-FU GENERATIONだよね』みたいな。建ちゃんはもっとやれるよ! 大学の時、『この人カッコいい』って思ったんだよ、顔ブスだけど(笑)。カッコいいっていうか、惹かれるものがずっとあるんだよ、この人には。だから、建ちゃんにはいちばん厳しいんだけどさ」とメッセージを伝えていくゴッチ。「すごい長いMCでごめんなさい。でもほんとに、この3人とバンドやれて、とてもとても嬉しいし。そして、もうほんと横浜の片隅で、誰にも見つけてもらえずに、ほんとにいじけて、石ころみたいに転がって……その時の気持ちを思い出すとね、今でも悪夢の中にいるような気分になるんですけど。こうやって10年かけて、いろんな人が自分たちの音楽を見つけてくれて。それがほんとにほんとに嬉しいです。ありがとうございます!」……10年間の想いのこもった感謝の言葉に、3万人のオーディエンスが力強い拍手と歓声で応えていく。
[SET LIST]
■1部
01.未来の破片
02.エントランス
03.Hold me tight
04.電波塔
05.アンダースタンド
06.君の街まで
07.ブラックアウト
08.夏の日、残像
09.夜のコール
10.夏蝉
11.脈打つ生命
12.十二進法の夕景
13.未だ見ぬ明日に
14.橙
15.ループ&ループ
16.リライト
17.迷子犬と雨のビート
18.ワールド ワールド ワールド
19.新しい世界
■2部
20.絵画教室
21.それでは、また明日
22.転がる岩、君に朝が降る
23.ムスタング
24.羅針盤
25.或る街の群青
26.海岸通り
27.君という花
28.Re:Re:
29.ソラニン
■ENCORE
30.ローリングストーン
31.遥か彼方