今年発表された“宝探し”は佐賀県江北町の70周年記念楽曲、“ポケットの中”はNetflixシリーズの主題歌、そして今回はAmazon Originalドラマ主題歌と、タイアップが続くくるり。ただ、タイアップだからポップな曲を用意したというより、どれもここまで普遍的なポップソングならばそりゃタイアップつくよな、と思わされるのが本当にすごい。曲作り、アレンジ、演奏すべてにおいて極めて濃密な情報量が凝縮された怪物作『天才の愛』を経て、とんでもない名曲連発（どれもミドルテンポの真っ直ぐな歌モノながら全く異なる印象の楽曲に仕上がっているため、「量産」とは言わない）体制に突入しているようだ。穏やかなピアノから始まりエレキギターの振動の膨らみと共に徐々にテンションを高めていくこの“八月は僕の名前”は、ポール・マッカートニー～初期オアシスの系譜に連なる壮大な美曲。ただ、これまでそうした楽曲では直接的なフレーズの引用などによって先達への畏敬の念を示してきたのに対し、今回は「名曲を書いたら自然とそうなった」ような佇まいであり、一層今の彼らが立つ地平の高さを感じさせる。（長瀬昇）

『ROCKIN'ON JAPAN』11月号より