本作に同時に収録されるツアードキュメンタリーの中で、初日の川口公演を終えた直後の宮本は「ロックバンドではなく、スーパーバンドにならなきゃいけない」と語っている。そんな命題を抱えた旅路の果てに彼が辿り着いた場所が、いかなる深淵であったか。エレカシという獰猛な音塊の中心としてではなく、「歌」という永遠不変の巨大さに抱かれるひとりの孤独なシンガーとして。その命の躍動がここには刻まれている。ドラマチックな演出と美しい照明に照らされ、バンドの見事な演奏と調和し、しなやかに身体は動き、壮絶な歌唱を披露する――その圧倒的なスケール感と華やかさ、それなのに常に胸を打つ、儚さ。“悲しみの果て”や“今宵の月のように”といったエレカシ楽曲が鮮やかに印象を変えているところも見どころだ。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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