阿部真央の新しいアルバムを待っていた。約3年ぶりである。この新作は彼女の歌声の魅力を、その豊かな表現の広がりを存分に感じさせてくれる。素晴らしい。1曲目“Just be alive”で響く穏やかで伸びやかな歌声が静かに胸を打つ。続くタイトル曲“Not Unusual”では深みのある慈愛に満ちた歌声が、彼女のボーカルの成熟を感じさせる。この2曲だけでも彼女の表現の更新を実感するが、“とおせんぼ”でのつぶやくように深い悲しみを滲ませる歌声や、“Who Am I”の低音からハイトーンまで広い振り幅で心象風景を描き出す内省的で切実な歌声には引き込まれずにいられない。阿部真央特有のスモーキーな歌声は“Don’t you get tired?（Album ver.）”でより深みを増し、グローバルなトレンドにも通ずるR&Bサウンドで新機軸を見せる。ポップなロックサウンドの“READY GO”では弾けるような歌声も健在。そしてラストのローズピアノの弾き語りで聴かせる“My hair you liked”の柔らかで、痛みも悲しみも知り尽くした大人だからこそ表現できる歌声まで、とにかくすべてが胸に沁みてくる。（杉浦美恵）