歌声のスペシャリストが表現者としても進化

幾田りら『P.S.』
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YOASOBIのボーカル・ikuraとしての歌声は変幻自在の彩りに聴こえるけれど、シンガーソングライター・幾田りらとしての歌声は、とっても素朴でピュアに聴こえる。そんなミラクルなボーカリストである彼女が、幾田りらとして新たな可能性を見せてくれる新曲“P.S.”。映画『1秒先の彼』の主題歌となっており、その内容は、何をするにもワンテンポ早いハジメ(岡田将生)と、何をするにもワンテンポ遅いレイカ(清原果耶)のタイムラグラブストーリーとなっている。作品のリズム感は主題歌でも表現されており、ゆったりした曲調、ほのぼのとした歌声ではじまるものの、中盤でエモーショナルにスピーディーに畳みかけるフレーズが、一瞬の疾風のように訪れるのだ。このアレンジは、『1秒先の彼』だけに留まらず、「恋」そのものの表現として秀逸だと思う。さらに歌詞が《P.S. 本当はずっと......》と言いかけて終わるところも文学的。彼女が歌声のスペシャリストのみならず、表現者として大きな一歩を踏み出した楽曲だと思う。(高橋美穂)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)


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