「世界の真ん中」はここにあった

100s『モノアイ/空い赤』
2009年05月27日発売
SINGLE
《君がいた場所を見よう、見よう。/夜の商店街、眺め。》――前作シングル曲“そりゃそうだ”に続く、「中村一義の地元・『フラワーロード商店街』発、世界行き」的な楽曲である“モノアイ”。自らの部屋を後にして、世界のど真ん中を目掛けて音楽の旅を続けてきた中村一義が、膨大な思索の果てに、「今、ここ」こそが基点でありバックボーンであり、同時に歌うべき核心であることを認識したような、静かな決意が滲み出る名曲。そして、夕暮れ空に自らの存在意義を問いかけるような、狂おしいほどのセンチメンタリズムに満ちた“空い赤”……どちらも熱く疾走したりポップの限りを尽くしたりというナンバーではないが、コーラス・ワークやアナログ・シンセ風サウンドのウォームで幻想的な響きの1つ1つが、バンド・サウンドの肉体美とも言うべき強度とエッジ感を追求していた頃の100sとはまったく別種のマジックを実現している。覚悟を籠めたメロディの力によって、目の前の扉が開く……10年以上前に僕らを驚愕させた初期・中村一義の、あまりに素朴で強烈な魔術を、今の100sが改めて体現している。(高橋智樹)