「貴方に会いたい！」という恋する者の切なる願いは、古今東西歌い尽くされてきたスタンダードなテーマ。それでも、この曲がオリジナリティを放ち、有無を言わさず聴き手を引き込むのは、その表現への真剣さと圧倒的なリアリティゆえ。つまり、「only you」じゃなくて《オンリ、ユ。》だし、「孤独」じゃなくて『ロンリー』なのだ。それは表現がカジュアルだということではなく、今の時代に生きる女の子の感覚として圧倒的にリアルだということ。そして満たされない孤独感を、堂々とキャッチーなサウンドへと昇華してこの世界に打ち鳴らす、力強さと誠実さが素晴らしい。人を愛おしく思うことの痛みを、その痛みを味わえることの幸福を、阿部真央は全力をかけて思い出させてくれる。ごくパーソナルな表現を突き詰めてこそ、絶対的な普遍性を帯びるという、ポップ・ミュージックの魔法。彼女はそれを今、最も見事に体現できるアーティストの一人だ。（福島夏子）
