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『NOW』というストレートなタイトルの通り、阿部真央の等身大の今を映し出した11枚目のアルバムとなる今作。デビュー15周年を迎え、独立や自主レーベル設立など、変化し続ける「今」がこの10曲に詰まっている。リード曲である“Somebody Else Now”では、《悲しい時こそ悲しい歌を書くの》《止まらず私は進んだだけ》と歌い、進むことへの気持ちが決して100%前向きな感情だけではないことが伝わる。MVで涙を流すシーンがあることも印象的だが、この曲で歌っている「進む」は自ら離れる決断をしたことを意味しており、7曲目の“進むために”でも《求めてた美しい「終わり」へ やっと行ける》と、自ら「終わり」という道を選ぶことで前へ進もうとしているのだ。彼女はどんな感情もポジティブに変えてくれるが、無理やり手を引いて明るいほうへ導くのではなく、長年の友人のように同じ歩幅で歩んでくれる。多くの変化を乗り越えた今の阿部真央が歌うからこそ、新たに始めるための一歩として、終わりを選ぶ勇気がもらえるような一作である。(伊五澤紗花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)
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