伝説から現実へ

ザ・ヴァセリンズ『セックス・ウィズ・アン・エックス』
2010年09月02日発売
ALBUM
ザ・ヴァセリンズ セックス・ウィズ・アン・エックス
ユージン・ケリーとフランシス・マッキーが揃ったからこそ生まれるマジックがあることをみごとに証明してくれた。いや、そんなに勢い込んだもんではない、といった本人たちの声も聞こえそうだが、まだいまほどグラスゴーが注目されていなかった時代にパンクの心を持ったギターに技巧無しのボーカル、シンプルなハーモニーでどこにもない音を醸し出していた世界は20年の時間が空いても変わりない。

もちろんプロデューサーも以前と同じジェイミー・ワトソンであったり、スウィートなメロディなのにけっこう皮肉や毒が効いてたりといったヴァセリンズならではの部分を強調した自己演出はバッチリなのだが、それでもあざとくならないのはこのコンビだからだろう。逆にパートナーであった時代を客観視して笑える余裕がアルバム・タイトル曲などからも感じられるし、バックを付けたグラスゴーの仲間たちのサポートも過不足無く絶妙だ。ヴァセリンズの名前を世界に広めたのはカート・コバーンだったが、彼にも聴かせたい一枚だろう。ユージンはこれで終わりなんて言ってるが、まだまだこの音を聴きたい。(大鷹俊一)
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