シガー・ロスのゴスペル

シガー・ロス『残響』
2008年07月02日発売
シガー・ロス 残響 - 残響残響
ジーザス! ブッダ! アラー! 誰でもいいけど、このアルバムはそいつらが宿る神聖な領域まで聴いた者を高揚させてくれる。プライマル新作の冒頭トラックのキラキラ感には不意を打たれ思わず笑ってしまったが、本作1曲目の衝撃は比じゃない。まるで和太鼓かのように一定のリズムで打たれる躍動感溢れるドラムにアコギの変拍子ストローク、そして至福の“ラララ”コーラス。おまけに手拍子まで。まさかシガー・ロスを形容するのに“躍動感”なんて言葉を使うとは思ってなかったし、これほどプリミティブでヒューマンな音を聴かせてくれるとも思ってなかった。しかし、地に足(もちろん裸足)をつけて踊れるのはこの曲のみ。ホーン、ストリングスを含むアンサンブルが完璧の2曲目から天国への離昇が始まり、上へ上へとスピリットが浮揚していく。雲が近付くに連れその躍動感は徐々に落ち着き、逆に、目の前に広がっていくのは、あまりにも美しく、あまりにも神秘的な未知なる風景。そしてヨンシー&ピアノのミニマルな調べが次第に壮大なオーケストレーションへと変貌していく9分に及ぶ抒情詩“オール・ボート”でついに神を見る。そのあとは全身全霊でとことん静謐を吸収するのみ。1時間弱で心身は完全に浄化されることだろう。

言うまでもなく、今作でシガー・ロスはこの世にない領域に達してしまった。嬉しいことに、喜びに満ちたその開けたサウンドは、誰をも優しくウェルカムしてくれる。10月に来日するが、これこそまた教会で再現して欲しい。(内田亮)
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