とはいえ新機軸はむしろ多く、ギターウルフ史上もっとも楽曲のバラエティに富んだアルバムでもある。ブルースとかロカビリーとかサイケとか、そのいずれもが一筋縄ではいかない、ヒネリを利かせたアプローチで、定型的な様式美をぐちゃぐちゃに破壊するような、なんともパンクな楽曲ばかりで痛快。もちろん定番ロックンロール曲はいつも以上にテンションが高く、高三マインド爆発の「ファイヤーエイティーン」の「あーーー!!!」という絶叫に大爆笑。そう、笑えるポイントが多いのも今作のいいところだ。真にデキる男は笑えるのである。
セイジのブログを読むと、考えなしに勢いだけでやっているようなパブリック・イメージが間違いであることがわかる。時間をかけ、綿密に練りこまれたブログの文章は、おそらくウルフの音作りにも通じるものがあるはず。文章同様、額に入れて飾りたいような名曲・名フレーズ続出の大傑作だ。（小野島大）
