記号性を恐れないアート

グラッサー『リング』
2011年01月26日発売
ALBUM
「ひとりダープロ」という異名もとるグラッサーの1stフル・アルバム。もともとは『ガレージバンド』のチープなサウンドにボーカルを載せていただけのひとりユニットだったが、フィーヴァー・レイなどを手がけたヴァン・リヴァース・アンド・ザ・サブリミナル・キッドをプロデューサーに迎え、スピリチュアルで儚げなキャメロンのボーカル・パワーが最大限に引き出されたつくりが大正解だ。どこか牧歌的でスピリチュアルで、それでいて醒めている彼女のソングライティングは変わらぬユニークさをキープしている。トロピカル・ポップ、エレクトロニック・ビート、トライバルなリズムetcといったエレメンツがばらばらポップアップする様は極めて10年代的といえるが、名前やタイトルはもちろん、シンプルを通り越してカット&ペーストのシンボル性を皮肉るかのような楽曲のタイトルや歌詞まで、すべてをミニマムに徹底させたアート/ファッションとしてあっけらかんとやってのける。そういう意味においては、昨今の宅録女子勢が束になっても追いつかないくらいの完成度の高さを誇っている。やはりカリフォルニア。(羽鳥麻美)