── 最後の1曲 “ケセラセラ” を前に語った大森元貴(Vo・G)のMCを聞いて、私は思ったのだった。ああ、Mrs. GREEN APPLEは、この10年いつだって、変わらない距離でそこにいてくれたのだと。ただ、私は気づいていなかったのだ。彼らの音楽は私たちの「目の前にいる」のではなく、上下左右を取り囲むように、抱きしめるように、大気のようにとてつもなく大きな存在として、ずっとそこにいたということに。遠くに行ったわけではない。変わっちゃったわけではない。最初から大きかったのだ。10年かけて、あるべきサイズでその音楽が鳴らされたというだけなのだ。ゼンジン、丸10年経ったということで。早いですね。なんか……変な話じゃなくてね、最近、すごくないですか?ミセス。俗に言う国民的バンドみたいな働き方をしてるじゃないですか。でも、違うんだぞっていう話なんですよ。我々は決して遠い存在になったわけじゃなくて。むしろ僕らは、たくさんの人に、「あなた」に届ける機会が増えて、めちゃめちゃありがてえと思ってるわけですよ。(中略)「ミセス変わっちゃったな、遠くに行っちゃったな」って思ってる人がもしいたら、「うるせぇよ、愛してっぞ」っていう思いを込めて、最後の曲、歌いたいと思います(大森)
だから今回のライブでは、初期の曲も最新曲も、同じように壮大なスケール感を持ってスタジアムに鳴り響いていた。ミセスの最新形でありながら、不変の証明でもある。そして、過去最大規模で「あなた」とミセスが心を交わし合い、愛を叫び合う場所。「ゼンジン未到とヴェルトラウム〜銘銘編〜」は、そんなライブだった。
(以下、本誌記事に続く)
文=安田季那子 撮影=田中聖太郎
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年9月号より抜粋)
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