Mrs. GREEN APPLEによるドームツアーのタイトルは「"BABEL no TOH"」。少し不穏である。「バベルの塔」といえば、天上へ近づくほど高い塔を築かんとする民に怒りし神が、その塔の建設を止めさせた(あるいは崩壊させた)という寓話を思い起こさせるからだ。しかし結論から言えば、今回のツアーでミセスが描いた物語はとてもポジティブなものだった。いや、とんでもなく心をかき乱される場面もあったが、このツアーは「塔」を築く人、築けずにいる人、そのすべての人の人生が報われますようにという願いに溢れていた。ミセスは「バベルの塔」の寓話をモチーフにしながらも、その悲劇的な結末を自らの音楽の力でポジティブに変換するという、ごく純粋で創作的な試みに挑んだのだと思う。
筆者はこのツアーの、京セラドーム大阪公演2日目を観ることができたのだが、とにかくものすごいものを観たという感覚がしばらく体から抜けなかった。過去のいわゆる「ストーリーライン」と呼ばれるライブや、昨今の「The White Lounge」「Harmony」さらには「FJORD」など、それこそどのライブも破格のスケールで見事な世界観を見せてきたミセスだが、それらのスケールをさらに更新するような、圧倒的な世界がそこに表現されていた。 (以下、本誌記事に続く)
文=杉浦美恵 撮影=田中聖太郎、河村美貴(田中聖太郎写真事務所)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年2月号より抜粋)
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