かなり十二変化なバラード集

ビリー・ジョエル『ビリー・ザ・バラード』
ビリー・ジョエル ビリー・ザ・バラード
貧乏臭い話になって恐縮なのだが、ビリー・ジョエルというと、高校生の頃に居候していた親類の家の部屋でよくビリー・ジョエルを聴きながら夜食に食べていたカップ焼そばをやたらと思い出してしまう。でも、これはビリー・ジョエルが安っぽいとかそういうことを言いたいわけではなくて、実はビリー・ジョエルってあの70年代末という時代におけるやるせなさを歌い上げるブルースだったんだなと今、あの頃の自分の状況と感情を思い出すとそう感じ入ってしまうということだ。特にその様相を示していたのがこのアルバムのタイトル曲“シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン”や“素顔のままで”などの大ブレイク時のバラード曲で、その後、ビリーのバラード曲は作品を経ていくごとに時代的な怨嗟や個人的な思いを越えて、純化されたバラードへと昇華されていったように思う。いろいろ解釈はあると思うが、それがぼくにとってのビリー・ジョエルのバラードの魅力であって、自分の作品体系のなかに聴き手のプライベートな装置を作れてしまえるところが、時代を十二分に表現しきったアーティストならではの懐の深さなのだと思う。(高見展)
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