これは抵抗の歌だ。
私たちの目や口を塞いでくるものへの、私たちの言葉を遮り、なかったことにするものへの、私たちの存在を無視するものへの、抵抗の歌だ。
これは肯定の歌だ。
恥をかき、汗をかき、打ちのめされて、ボロボロになって、それでも何度でも砂を掴んで立ち上がっていく私たちの営みへの肯定の歌だ。
愚かな鳥は、自分の愚かさを知りながら、それでも何度でも飛び立とうとするだろう。
なんて獰猛な生命力を感じさせる1曲だろう。
7月13日に配信リリースされた米津玄師の新曲“夜鷹”。「2026 NHKサッカー」のテーマソングだった“烏”から1ヶ月足らずで早くもリリースされた楽曲であり、映画『キングダム 魂の決戦』の主題歌となっている楽曲である。春秋戦国時代の中国を舞台にした大河物語である『キングダム』の世界観に呼応するような、典雅な響きと壮大なスケール感を持つ1曲だが、“烏”がそうであったように、“夜鷹”もまた、どんな巨大な渦の中にも確かに存在する「個人」を置き去りにすることをしない。サッカーというスポーツやワールドカップという祝祭に寄り添いながら徹底的に「たったひとりの人」に向き合っていた“烏”と同じように、“夜鷹”もまた、砂が吹き荒れる広大な大地を駆け抜ける戦国スペクタクルの中を生きる、一人ひとりの人間の息吹にフォーカスを当てている。それは『キングダム』の世界の中で紀元前の中国を駆け抜ける戦士たちだけでなく、この2026年を生きる私たち一人ひとりの生活者に向けられた眼差しのようにも感じられる。(以下、本誌記事に続く)文=天野史彬
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年9月号より抜粋)
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