グルーヴしか信じられなかった頃

ザ・ミュージック『シングルス・アンド・イーピース:2001-2005〈DVD付最強盤〉』
ザ・ミュージック シングルス・アンド・イーピース:2001-2005〈DVD付最強盤〉
そのタイトルの通り、2001年のデビュー・シングル『テイク・ザ・ロング・ロード・アンド・ウォーク・イット』から2005年の『ブレイキン』まで――要は『ザ・ミュージック』『ウェルカム・トゥ・ザ・ノース』からのUKシングル&EPの全収録曲を、“ザ・ピープル”“フリーダム・ファイターズ”のような必殺曲はもちろん、初期ライブでお馴染みのヘヴィ・インスト“ザ・ウォールズ・ゲット・スモーラー”なども含めてCD2枚組で完全パッケージしたのが今作。改めて聴くと、いかにザ・ミュージックの4人がグルーヴ「しかない」という焦燥感から始まっているか、グルーヴ以外のものをどれだけ徹底して信用していなかったかがよくわかる。ソングライティング教室だったら赤点必至のほぼ1ネタ楽曲=“ザ・ピープル”はなぜ2002年を代表するロック・アンセムとなり得たのか? ロブ/スチュ/フィル/アダムという4人の若さと可能性にあふれるビートのダイナミズムに酔い痴れていたからか? 逆だ。荒ぶる衝動とルサンチマンを封じ込めた強烈なビートにしがみつき、ロックのカオスど真ん中へ突っ込んでいくことでしか、己を生かす方法を見つけられなかった――という4人の蒼き覚悟が、ザ・ミュージックという音楽に「世界の混沌を生き抜く鼓動」としてのアート性を与えていたからに他ならない。だからこそ、ここに収められた楽曲群は、「ザ・ミュージックの初期衝動の記録」などという言葉では到底説明のつかない、若きロック・バンドがビートに身を委ねることの爽快さ/恐ろしさ/残酷さ/強さまで網羅した壮絶なドキュメントたり得ているのだ。(高橋智樹)
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