下積みの魂百まで?

ダニエル・パウター『アンダー・ザ・レーダー』
2008年08月20日発売
ダニエル・パウター アンダー・ザ・レーダー - アンダー・ザ・レーダーアンダー・ザ・レーダー
日本で80万枚を売り上げたデビュー作によって、いや、むしろ“バッド・デイ”ただ1曲の力によって、近年最大のお茶の間的成功を収めてしまった「ガイジン」、ダニエル・パウター。こういうタイプの成功者は概して2ndが鬼門。パウターのように苦節十数年の遅咲きSSWの場合、若いバンドのように糊しろがあるわけでもなく、既に熟しきった表現として固まっているが故に飛距離が演出しづらいのも事実だ。リンダ・ペリーをプロデュースに迎え、その強烈な「個」を抉じ開けようとしたのだろう2ndである。一番の変化はストリングスが効果的に配置されることでスケールが増し、「ピアノ・マン」のモノトーンなイメージを払拭することに成功していることか。しかしパウターという人が底抜けなまでに特殊なのは、音空間が格段に広がり、歌うべきキャンバスは遥かにでかくなったにも拘わらず彼の「個」は閉じたままだという点。巨大&超ゴージャスなベッドの端っこで丸まって寝ているような感覚に陥る音楽。ちなみにシングル“ネクスト・プレイン・ホーム”よりも、アルバム1曲目の“ベスト・オブ・ミー”のほうが断然良曲。(粉川しの)
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