マルーン5の最終形態

マルーン5『オーヴァーエクスポーズド』
2012年06月20日発売
ALBUM
マルーン5 オーヴァーエクスポーズド
マルーン5が自分達のやるべきことを見極め、腹を括ったアルバムである。彼らのやるべきこととはつまり、「なんでもやる」し「なんでもできる」と証明することだ。事実、本作はマルーン5史上最もエクレクティックな一枚になっている。レゲエ、エレクトロ、ジャズ、そしてロックを平等に並べて競わせ、ポップ・ソングとして優れたエッセンスのみをシビアに抽出する本作には、どんなにバカ売れしようとギター・ロックの体裁は保ってきた前作までとは比べものにならない大胆な文脈の放棄が行われている。外部ライターも積極的に招聘して曲を作り、ロック・バンドの自作自演の前提よりも自分達の可能性とチャンネルを広げる実質を取った彼らのアプローチは、優れたR&Bのアーティストのそれに近いものがある。そして実際、どう考えてもこれが彼らの正解なのである。ジャンルに囚われない良質なポップ・ソングをいくらでも作れる人達が、たまたまギター・バンドのフォーマットを借りてやっていた、その偶然を正して必然に置き直した一作。「露出しすぎ(overexposed)」なるタイトルの突き放した自虐にももはや自信と余裕しか感じない。(粉川しの)
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