喪失感と焦燥感、夢と期待が混然一体となった美しき産声。最高だ! ドレスコーズは本作をもってデビューする。《さあBlue 何かを失った気分はどうだい?/さあBlue 撃ちそこねるなよ、この胸を》と歌う“Trash” は、志磨遼平自身の物語であると同時に、映画主題歌に起用される『苦役列車』の主人公・貫太の心象風景と呼応し、またすべてのリスナーに捧げられた普遍的な1曲だ。メロディと歌の雰囲気は、毛皮のマリーズ時代から抜本的に変わったというよりも、とても志磨らしいと感じられる新たな王道感がある。そしてメンバーがしのぎを削る個性豊かな演奏は、まだ鞣されていないゴロゴロザラザラした始まりの衝動と熱気を沸き立たせている。《さあ、好きにやれ ロマンチスト!》なんて、これ以上無いほどかっこいい開始宣言だ。 メンバーの多彩なバックボーンが反映されたカップリング2曲も、揺ぎ無い挑戦心と大きな可能性を湛えている。もうバンドの1stシングルとして、あまりに完璧。そしてそれは、不安定な私たちの夢と希望を託すロックンロールとして、あまりに完璧ということだ。(福島夏子)