トレントは随所でバック・ヴォーカルをとるものの、デュエットと言えそうなのは“トゥー・レイト・オール・ゴーン”くらい(この曲は音色こそ最新モードに更新されているが、リフの一部や後奏でのデペッシュ・モード風な展開に『ダウンワード・スパイラル』にも通じる要素を感じた)。また、“ハウ・ロング?”では、サントラに提供したブライアン・フェリーのカヴァーと並び、最もポピュラー・ソングに寄った(※NIN前のキャリアを除く)トレントが聴ける。
以前の持ち味は保ちつつ、女性の声を基点に新しい音像を描き出したトレントと、彼の要求に応え、予想以上に深い次元まで歌手としての魅力を引き出されたマリクイーンに、まず感心。憎悪の音楽から愛の音楽へと大転換を果たしながら、芯にあるものは全くブレていない。(鈴木喜之)