間にクリスマス・アルバムを挟み、オリジナル・アルバムとしては3年ぶりとなる3作目。もはやライフワークと呼べそうな両者のコラボレーションだが、この3年の間に互いを取り巻く環境も大きく変わった。とくに女優業で多忙を極めるズーイー・デシャネルの人気ぶりはご存知の通り。一方で、デス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバードとの離婚も伝えられた。ただし本作からは、周囲の慌ただしさを離れ、マット・ウォードとふたりで長年温めてきた関係がそのまま音と歌に表れているような、インティメイトな空気を感じることができる。アメリカン・ソング/ポップの伝統を滋養に、饒舌なソングライティングと生楽器(ヴァイオリン、ピアノ、ウクレレetc)もふんだんに取り入れた懐深いアレンジによって磨き上げられた珠玉の14曲。中にはブロンディやエリー・グリニッチらのカヴァーも含まれているが、いずれもニュー・クラシックスと呼びたくなるみずみずしい響きをたたえている。元NRBQのジョーイ・スパンピナートやティリー&ザ・ウォールらゲストも交え、賑々しい演奏にのせてふたりの魅力と才能がスウィングする様子が愉しい。いつかライヴが観たい。(天井潤之介)