「エモーショナル」とはこういうこと

ircle『さよならリリー』
発売中
ALBUM
ircle さよならリリー
演奏の正確さというのは、丁寧な言葉遣いによく似ていて、そもそも他者とのコミュニケーションの中で思いをクリアに伝えるために求められるものだ。ただ、正確さ/丁寧さだけが感情表現を強くするのかというとそんなことはなくて、喉も張り裂けよとばかりに響く歌声が、或いはノイズにまみれたサウンドが伝えてくれるものもある。タワーレコード限定だったシングル『夜明けのテーマ』に続いてリリースされるircle(アークル)のミニ・アルバムは、その事実を完璧な形で教えてくれる作品となった。

ロマンに手を伸ばすほどに河内健悟(Vo・G)の歌声は焦げ付き、高度なアンサンブルを奏でていたかと思えば突然、前のめりに全速力で転げてみたりもする。《「完成は興味ないよ」》というフレーズがオープニング曲“after school planet”の中では宣言のように置かれ、飛べない焦燥感を抱えるからこそ走り、後悔の念が“嘘つき少年より”の胸の内から絞り出されるような告白に宿る。circle(円)からの欠落を示すバンド名からして象徴的なのだが、破綻をデザインする知性にこそ唸らされる作品だ。(小池宏和)
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