米国のケーブルＴＶ番組シリーズのパッケージ化で、アリシアが昨年11月に出演したときの模様。日本盤ではDVDとCDがセットになっている。演奏される1曲1曲を解説しながら繰り広げられるアリシアのトークが余りに軽妙で、かつその内容は濃密。演奏に負けず劣らずがっちりと見入ってしまうほどだ。カニエと共作した〝ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム〞は、ジョン・レジェンドもその場にいたというレコーディング風景を再現しながら披露されてしまうし、〝エンパイア・ステイト・オブ・マインド（パート2）ブロークン・ダウン〞では、ジェイ・Ｚから歌い直しを求められて「むかついた」と冗談めかしている。面白い。

〝ニュー・デイ〞を披露する前に彼女は、「時として私たちは、自分の一部分しか生きていないわ」と語っている（本編では別の箇所にも挿入されている）が、この言葉に触れて、単純に画一的なブラック・ミュージックとは割り切れない、よりパーソナルな立ち位置から高度な普遍性を摑み取ってゆくアリシアの本質が見えた気がする。というか、R&Bの普遍性とは、そもそもそういうものなのではないだろうか。（小池宏和）