
バンドじゃないもん! その不可思議な正体を解き明かす!
シングル『ツナガル!カナデル!MUSIC』インタヴュー
バンドじゃないもん!というグループ名を聞いて、多くの人は、「じゃあ一体何なんだ?」と思うだろう。神聖かまってちゃんのドラマー・みさこが結成したツインドラムユニット、という認識で止まっている人もいるかもしれない。彼女たちは今、6人組のアイドルとして活動している。みさこを筆頭に、秋葉原ディアステージのキャスト、『テラスハウス』出演者、「踊ってみた」の踊り手、ミスiD 2015ファイナリスト――と、メンバーは個性豊か。ライヴでは、かわいらしく歌い踊ったかと思えば、ヘドバンもするし、ドラムをはじめ全員が担当楽器を持ち要所要所で演奏、とパフォーマンスは「自由」そのもの。しかも、振り付けから曲のイメージ、歌詞と細部に至るまで、活動の方向性をメンバーで話し合っているという。まさにグループ名のとおり、バンド、アイドルといったジャンルを超える、ある種不可思議な存在だ。リーダーのみさこは「この6人に対しては絶対的な自信がある」と語るが、2011年の結成から、この6人が揃う今年4月までには、幾度ものメンバー加入・脱退などの歴史があった。今回、6人体制での初シングルとなる『ツナガル!カナデル!MUSIC』リリースまでの道のりから、彼女たちの正体を解き明かす全員インタヴューを行った。
ガールズバンドでも、アイドルのバンド形態でもない表現の仕方があるんだなって、それがすごくおもしろいなと思って。ほんとに「バンドじゃないもん!」って名前に全部込められてて
────まずは結成から現在に至るまでの歴史からお聞きしたいと思います。
鈴姫みさこ(Dr) 最初、(神聖)かまってちゃんではできないことを女の子と一緒に作り上げたいなと、女の子同士が協力して生まれるおっきなエネルギーみたいなものを表現できないかなあと思って、ギャルバンを組もうとしたんです。やるとしたら「ドラマーよりフロントマンのほうがいい」という助言をもらったんですけど、私がひとりでフロントマンをやるのは全然想像できなくて。だったらツインドラムにして、ふたりがメインのバンドにしようかなと。最初はサポートで男性メンバーもいて――かまってちゃんのマネージャーの劔樹人さんと、今も曲を作ってくれてるミナミトモヤさんが、「アイドル、女の子をプロデュースしたい」っていうことで、サポート兼、ユニットをどうするかも取り仕切ってたんです。ただ、だんだんとそのふたりは天の声ぐらいの感じになっていって(笑)。そして、メジャーデビューのタイミングで、「きっぱりここでアイドルって名乗ってしまおう」と、かっちゃん(金子沙織)とふたりで「ツインドラムアイドル」になったんです。それでしばらく活動していたんですけど、ある時Ustreamの放送中に、当時メジャー契約をしてくれていたワーナーミュージックさんのほうからドッキリという形でしおりんとぐみちゃんが入ってきまして。
七星ぐみ(Shaker) どのグループに入るか知らなくて。
恋汐りんご(Castanet) 蓋を開けてみたら、バンドじゃないもん!だったんです。
ぐ み ふたりともドラムだから「バンドをするのかな」と思って、「楽器できないからどうしよう」って(笑)。
りんご でも「アイドルをやる」って聞いてたから。自分としてはずっとアイドルになりたくてやってきて、「ちゃんとユニットに入れる」ってなって、「これからいろんなワクワクが待ってるんだなあ」って、期待に満ち溢れて加入しました。
みさこ ふたりと一緒に、今は卒業してしまった水玉らむねちゃんが入ってきて5人でしばらく活動してたんですけど、ここでかっちゃんが卒業という形になりました。
──最初「ツインドラム」っていうところから入ったのに、その形がなくなってしまうわけですよね。
りんご すごく悩んだよね。「どうしよう」って。
ぐ み 「もうひとりドラムが入るのかな」とか。
──でも結果的にはそうしなかった。
みさこ 「メンバーをもうひとり増やそう」っていうことは決定したんだけど、かっちゃんの代わりに見てほしくないなと思って、ツインドラムって形態はなくして。その時に作ったものはきちんとCDという形で残っていたので、まったく別の感じに突き進んでいこうということになりました。
──なるほど。ここでみゆさんが加入ですね。
望月みゆ(B) かまってちゃんのことは知ってたんですけど、みさこが別のグループをやってるってこと自体知らなくて。巡り合わせでスタッフさんとお話しすることになって、ライヴを観に行ったら、「よくあるアイドルとは違うな」っていう印象を受けて。おもしろいなって思いました。客観的に見て。
──入ってみてどうでした?
み ゆ やっぱりタイミングがタイミングで、オリジナルメンバーだったかっちゃんが抜けたあとひとりポッて入ったから、みんなはそんなつもりじゃなくても、「穴を埋めなきゃ」みたいな気持ちがすごくて、ひとりでプレッシャーを自分にかけて悩んでましたね。
りんご でも思ったより周りはみゆちぃの加入をすんなり――。
ぐ み 受け入れてた。
み ゆ そう、温かかったです。
みさこ 3人が入ったタイミングが一番ネガティヴな反応が多かったんですけど、そういう人たちがどんどんコロッと笑顔になってくれたのがすごい嬉しかったです。
ぐ み でも、ふたりのバンもん!を好きだった人が「ヤダな」って言うのは仕方ないと思う。自分もずっと好きだったものがいきなり変わったらすぐに受け入れられないから。
りんご そうだね。ふたりのバンドじゃないもん!は伝説級というか、また第二のバンもん!が始まったっていうイメージなのかなって。
ぐ み ふたりのバンもん!は、ずっと大事にしたい。
──そして、らむねさんの脱退と同時に、オーディションで、桃子さん、ゆずさんのおふたりが同時に加入。オーディションということは、「このグループに入りたい」っていう気持ちが明確にあったんですよね。
天照大桃子(Tingsha) 自分がDJをやってた時に共演したイベントがあったんです。そこで観て、ガールズバンドでも、アイドルのバンド形態でもない表現の仕方があるんだなって、それがすごくおもしろいなと思って。ほんとに「バンドじゃないもん!」って名前に全部込められてて、素晴らしいなと。その時、私は『テラスハウス』っていう番組を卒業したあとで、「ちゃんもも◎」としてソロでやってたんですけど、オーディションがあるって聞いて。自分も1回アイドルをやっていて売れなくて今の形に辿り着いて、だけど、もしもう一度チャンスがあるなら「おもしろいものがやりたい」、誰かにプロデュースされるよりも、自己表現のできる場でやりたいという思いで、僭越ながらオーディションを受けさせていただきました(笑)。
甘夏ゆず(Syn) 私も入る前に一度ライヴを観たことはあったんですけど、入る前からバンドじゃないもん!自体がとても好きで。ライヴを観に行くとお客さんもすごい笑顔で帰っていくし、メンバーもみんな笑顔で、すごい幸せな空間だなって思ったんです。それで「自分もちょっとでも人にパワーを与えられる人になったら素敵なことだな」って思ってオーディションを受けました。
──メンバーの皆さんも審査に加わっていたんですよね。

ぐ み 全員の書類を見ました。
みさこ どういう子がいいかすごい話して。直接面接はしなかったんですけど、もちろん歌って踊るスキルがあったり、あと音楽は要にはしたいので、そういうセンスがある子がいいなと。もともとふたりの時から一貫してバンもん!がやりたいことっていうのは、「形に捉われないで、どんな形であっても素晴らしいステージが作れるんだよ。だからみんなももっともっと頭を柔軟にしてボーダーレスに――関係ないものであってもみんな楽しんで生きようよ」っていうことだったので、ほんとベストなメンバーに入ってもらって、今突き進んでる感じがすごくあります。
りんご 「この6人が最後のメンバーだね」って。
み ゆ それが最大の条件っていうか、一番オーディションで気にしたところで。「このメンバーで終わる」っていう。
りんご でも結果、ふたりが入って6人になって楽しい。同じ方向をみんなが向いてる感じがします。
上からみんなに「こうしなさい、ああしなさい」っていうプロデュースは絶対したくないけど、うまいこと私がつなぎになれるようなリーダーになれたらいいなと思いました。
──6人でのライヴ、アーティスト写真を見ても思うんですけど、揃ってる感じがするんですよ。バランスもそうですけど、無敵感というか。
み ゆ そう、無敵になりたくて。
──それぞれいろんな形で集まったけど、今の6人が揃ってることは必然なのかなと思います。さっき桃子さんもおっしゃってた「バンドじゃないもん!」っていう名前に全部集約されてるって話ですけど、バンドもアイドルも関係なくいろんなジャンルを軽く超えられるところがやっぱりおもしろい。名前は公募で決まったんですよね?
みさこ 劔さんのUstream放送中に、視聴者と目の前のお客さんからの意見で「いいものが出てきたのでそれにしよう」ってなったんです。
──お客さんからつけてもらった名前とはいえ、ジャンルレスなイメージがある名前のおかげで、なんでもやりたいことをやれるっていう面もありますよね。
みさこ 「女の子が好きにやりたいことをやりまくってる」っていうふうにしたいんですよね。夢いっぱい、好きに生きてる様を見せられたらなあと。
桃 子 「自由」もね。バンドじゃないけど、そういうスピリットとしてはロックではありたいっていうのがある気がする。「アイドルだからこうしなきゃ」とかそういう壁を壊したいよね。
みさこ それでもやっぱり「アイドル」って名乗るのは――「何がアイドルだ?」ってすごく考えたことがあるんですけど、誰かにちょっとでも夢を見させたらそれはアイドルだと思うんで、私はそういう意味で、ずっとアイドルでいたいなって。
──今はいろんなアイドルがいろんなことをしてますけど、自由に好き放題できるっていうのは最大の武器だと思います。歌詞も、最初はみさこさんがよく書かれていて、最新のシングルでは桃子さん、みゆさんも書かれていて。
みさこ “プリズム☆リズム”は、形にするのは3人だったけど、どういう歌詞がいいかは全員から意見をもらいながら作りました。昔のバンもん!しか知らないもんスターにも、今応援してくれるもんスターにも、これからもっともっと増えてくれるもんスターにも「私たちの思いを届けたい!」っていう感じの歌詞になってます。
──決意表明のシングルだなと、すごく感じました。本当に、みなさん自身が「こういうアイドル像を目指したい」みたいなところがあって、それを目指して動いてるんですね。
みさこ 特殊な形態なので、もちろん「やりたいこといっぱいあるけどできない」っていう時もあるけど、そのなかでどうやって人を楽しませるかみたいなものは常にみんな考えてます。
──みさこさんがリーダーに就任したのは、桃子さんとゆずさんが加入されたタイミングとかなり最近ですね。これまでずっとリーダーという形をとらなかったのはなぜですか?

みさこ 単純に人をまとめるのに向いてないと思ったし、自分から「引っ張るぞ」っていうようなことはできないんじゃないかって思ってずっと逃げていたんですよね。でもせっかくこのふたりが入ってきて「この6人凄まじいぞ」と。で、「この6人をどうやって料理するか」って考えた時に「シェフがいないな」って思ったんですよね。みんなが個性を放ったまんま料理できたらいいなと思って。上からみんなに「こうしなさい、ああしなさい」っていうプロデュースは絶対したくないけど、うまいこと私がつなぎになれるようなリーダーになれたらいいなと思いました。大変な時もありますけど、自由度が高まった部分もいっぱいあるので楽しいです。ほんとへっぽこだけど、でもいざやってみたら結構腹が据わった感じがします。