来る2月28日、lukiと日食なつこ、ビッケブランカのソロミュージシャン3名がイベントを開催する。映像的な歌詞と作品ごとにジャストなサウンドアプローチにより、聴き手を表現世界の深淵へと誘うluki、ジャジーに跳ねるピアノの旋律に、力強くしなやかな歌声を乗せて世界を切り取る日食なつこ、透明なファルセットボイスとピアノを操り、鮮やかなポップミュージックを奏でるビッケブランカ。お互いに共演経験のない三者だが、それぞれの持つ世界観が色濃く混ざり合い、化学反応を起こすステージになるだろう。今回は、3人が集う一夜に向けて、lukiと日食なつこ、ふたりの女性シンガーソングライターによる対談をお届けする。事前に答えてもらったアンケートに沿って初対面のふたりが語り合ううち、それぞれの表現者としての信念が浮き彫りとなった。
また、最後に同じく出演者のビッケブランカから、イベントへ向けての動画コメントも届いているので、こちらもチェックしてほしい。

司会・撮影=塚原彩弓

・ミュージシャンとして一番大切にしていること
 luki 「変化」を恐れないこと
 日食なつこ 「外れ」「例外」を恐れないこと

──おふたりは今日が初対面なんですよね?

luki そうです、そうです。会ったばかり。

日食 数分前です(笑)。

──お互いに楽曲を聴いて、「こんな人なのかな」とか想像されてるんだろうなとは思うんですけど、今回は事前にアンケートを書いていただきました。これに沿って進めていきたいなと思ってます。いちばんわかりやすいおふたりの共通点はやっぱり、ソロミュージシャンっていうところなので、まずはオーソドックスな質問から。「ミュージシャンとしていちばん大切にしていることを一言で表すと?」。まずlukiさんが「変化を怖れないこと」。具体的にはどういうことでしょう?

luki まあ、私は変化し続けているので。変化というか、変わらざるを得ないというか。そのままでは駄目だぞみたいなところが常にあるので。

──なるほど。日食なつこさんのほうが「外れ、例外を怖れないこと」。

日食 そうですね。「怖れない」っていう点で一緒だなと思って。でもやっぱ表現者として怖がるっていうのがいちばんあれだと思うんですよね。

luki そうですね。

日食 よくある話だと、「花がきれい」っていうことがあったとして、「いや、きれいじゃない花もあるでしょ」っていうふうに横槍を入れてくる人に対して、ああそうだよねって言っちゃわないっていう。それを怖れてそういうところまで拾い始めたらもう表現ってキリがつかなくなっちゃうと思うんで。これだって思ったら、一般常識でいやいやって人がいても、それをはね除ける力というか、そういうのが大事かなと。

──なるほど。自分がこれが正解だって思った表現を外に出した時に、隣の人からそれって違うんじゃない?って言われる、周りの人から見て自分が外れとか例外になるっていうことを怖れない、ということですか?

日食 そうです、そうです。

luki 深い。

日食 ありがとうございます(笑)。

・曲作りの過程で、自分が女だなあと感じる瞬間
 luki 男への憎悪が原動力になるとき
 日食なつこ あまりありません

──次は、おふたりの「女性ミュージシャン」という共通点、それからふたりとも自分で曲を書くということなので、「曲づくりの過程で自分が女だなって感じる瞬間はありますか」という質問です。lukiさんが「男への憎悪が原動力になる時」。

luki はい。まさに(笑)。憎悪じゃないものは普通にいつもあるんですけど。愛ですとか憧憬だったり。でも憎悪に結びつくと異様に強い何かが生まれてくるような気がします。

日食 ああ、でもちょっとわかります、それ。

luki 百鬼が出てくるような。

日食 わかる。その憎悪ってすごい突き詰めると最終的にポジティヴな感情に辿り着いたりとか。

luki そうですね。

日食 それの裏返しっていうか。それが歌になるっていうの、すごいわかる。

──対して日食なつこさんは「あまりありません」。

日食 「あまりありません」って書いちゃったんですけど(笑)。いろいろ自分で表現する時のルールを決めていて。そのなかのひとつで、限定しないっていうか、あえて抽象的にボヤンとぼやかすっていうのを決めていて。なので、「男の歌」とか「女の歌」とかっていうのも、あまりしないようにしとこうかなっていうのはあるんですよね。

luki 確かにフラットな感じがしますね、日食さんの歌を聞いてると。性を超えてるような。

日食 それは意識してやってる感じではありますね。

──そうですよね。一人称も結構ばらばらというか。

日食 ばらばらです。「俺」とかもあるし、「私」もあるし。

──じゃあ、今lukiさんから「憎悪が原動力になる」っていう答えが出てたんですけど、日食さんが曲をつくる時の原動力ってなんですか? どんな時に曲を書きたくなるとか。

日食 うーん、私も憎悪がちょっとあるかもしれないですね(笑)。

luki 何に対する憎悪でしょう?

日食 なんでしょうねえ。憎悪というよりかは、すごい反抗したい気持ちとか。ちょっとそれ違うんじゃないのって。

luki 世の中に対する憤りだったりとか。

日食 ですね。とか、あとほんと個人的にちょっとおまえそれ違うでしょっていう、そういう憎悪だったりとか。でもその憎悪のなかには、突き詰めると、私はこうだと思うっていうポジティヴな主張力があるっていうか。だから、憎悪の曲を書いてるつもりでも最終的に曲が完成してみると最後に光が見えてるとかってなってたりしますね。

──lukiさんの曲も、最終的には希望に向かっているという印象があります。

luki そうですねえ。憎悪で止まってしまったら音楽にする意味がないような気もするし。

日食 ああ、確かに。そこで止まったら他人に聞かせる理由がって感じですもんね。わかる、それは。

luki 自分も気分が悪いし(笑)。なんのために歌ってるんだみたいな感じになるし。

・ふたりでデュエットするとしたら?
 luki スリーコードで適当にセッション
 日食なつこ 海外の映画で使われている主題歌や挿入歌をやりたいです

──次の質問は、「ふたりでデュエットするとしたらどんな曲をカヴァーしたいですか(人の曲で)?」日食さんのほうから行くと「海外の映画で使われている主題歌や挿入歌をやりたいです」と。

日食 やってみたいですね。イメージ的に、ふたりで全部英語の歌詞でやって、ストーリーの裏でフワーッと流れて映画全体を包み込むような曲をやってみたらおもしろそうだな。

luki ああ、おもしろいですね。

日食 lukiさんの声質もすごい素敵だったので、そういうのに合いそうだなって勝手に思ってました。

luki ありがとうございます。

──具体的に、たとえばこんな映画のこんな曲みたいなイメージってありますか?

日食 言っといてなんですけど映画詳しくないんですよ、ほんとに。なんだろうな、すごいストーリーがガンガン進んでく話じゃなくて、抑揚もなく滔々と始まって日常を描いてそのまま終わってくみたいな。そういう映画のバックで。

luki なんだろう、小津安二郎かな。淡々と行くといえば。海外か……

──lukiさんは映画に造詣が深いですけど、たとえばこのふたりで歌うとすれば?

luki 映画のテーマですか。何がいいんだろう。日食さんのピアノを活かしたいので、ピアノが合うほうがいいですよね。あんまりストーリーがないやつ。難しいな。ちょっと考えます。

──対してlukiさんは「スリーコードで適当にセッション」という。

日食 あー、おもしろそう。

luki やはりすごくミュージシャンとしての力が強い方なので、むしろ決めないでその場でアドリブでやるとおもしろいんじゃないかなみたいな。

日食 ヴォーカルも投げ合う感じで。

luki スキャットでやっちゃうみたいな。

日食 おもしろそう! やってみたい。

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