ROCK IN DISNEY

RIJF出演アーティストがディズニー名曲を歌ったら?夢の連動アルバム『ROCK IN DISNEY』全曲レビュー

これまでに様々な名カヴァーを生み出してきたディズニーのコンピレーションCDシリーズと、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015がオフィシャル連動し、夢のような1枚がリリースされる。シーンの最前線で活躍し、かつROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015への出演が決まっている11組の11曲がシリーズからコンパイルされた『ROCK IN DISNEY』。それはまるで、あなたの音楽プレイヤーが、ディズニーソングという切り口で仮想ロックフェスを始めてしまうような、楽しくタイムレスな1枚である。このテキストでは、収録曲それぞれの魅力について、探ってみたい。

テキスト=小池宏和

01.Part of Your World[The Little Mermaid]

赤い公園

アルバムのオープニングを飾るのは、映画『リトル・マーメイド』より“Part of Your World”をカヴァーした赤い公園である。彼女たちのギターロックサウンドによるディープな音響美は、うっすらと光の揺らめく海中の情景を浮かび上がらせ、佐藤千明(Vo)が台詞を差し込みながら届ける歌は、まさに人魚姫アリエルの姿が重なるようだ。普段ならスリリングな情念のロックソングを叩き付けることも多い赤い公園だが、ロマンチックな物語の美しさをまっすぐに引き受ける彼女たちの姿にはぜひ注目してもらいたい。ちなみにこの音源の初出は、女性アーティストたちが参加したコンピレーションCD『ディズニー・ロックス!!! ガールズ・パワー!』である。

02.Can’t Help Fallin’ In Love[Lilo & Stitch]

ACIDMAN

エルヴィス・プレスリーがヒットさせた名スタンダード“Can’t Help Fallin’ In Love”は、スウェーデンのダンスポップグループA★TEENSによるヴァージョンが映画『リロ&スティッチ』で使用された。そしてACIDMANはコンピレーションCD『ロック・スティッチ』でこの曲を孫カヴァー。原曲本来の普遍的なメロディを大切に残しつつ、慈しむような歌声で歌い上げる大木伸夫(Vo・G)である。本当に3人だけで演奏しているのか、と思ってしまうようなACIDMANらしい豊かなアンサンブルもしっかりと音源に刻み付けられており、とりわけブリッジ部分で披露される3人のスリリングなコンビネーションは息を呑むほどだ。意気込みの強さが伺える。

03.Mickey Mouse March[The Mickey Mouse Club]

avengers in sci-fi

何しろディズニー縁の名曲ばかりが並ぶコンピレーションなので、そこに収められたメロディの普遍性は疑いようもない。ただし、なかには冒険的なアレンジを施すことで、まったく新しい視界を導き出そうとする参加アーティストもいる。avengers in sci-fiによる“Mickey Mouse March”は、元がディズニー世界を代表するようなナンバーであるだけに、なおさら驚きと興奮を禁じ得ない大胆な内容に仕上げられている。宇宙服を着たミッキーが、あのエフェクターの要塞の如きアヴェンズのステージから飛び立ち、我々の水先案内人として銀河を飛び回るような、素晴らしい“Mickey Mouse March”である。『ディズニー・ロックス 〜!&!! コンプリート〜』より。

04.WONDER Volt[Frankenweenie]

木村カエラ

本作には、参加アーティストによるオリジナルソングも収められている。“WONDER Volt”は木村カエラのアルバム『Sync』収録の楽曲で、ティム・バートン監督によるリメイク版『フランケンウィニー』公開時に、もともとバートンファンのカエラがインスパイアソングとして提供し、映画CMで使用された。交通事故で命を失いながら電気実験により蘇ったフラン犬=スパーキーの、哀しくも愛嬌溢れる姿が見事、歌詞とメロディに浮かび上がっている。作詞は木村カエラ、作曲は渡邊忍によるものだ。こういったチャーミングでファンタジックな楽曲もまた、彼女の大切な魅力である。インスパイアアルバム『フランケンウィニー・アンリーシュド!』にも収録された。

05.Belle[Beauty and the Beast]

tricot

いつでも少し風変わりなベルは空想ばかりしている女の子だけれど、本当に大切なものをしっかりと見定めていてそれを守ることができるのは、実はベルのような人なのかもしれない。『美女と野獣』のヒロインのテーマ曲をカヴァーしたのは、今や海の向こうでも話題を集めるバンド=tricotだ。穏やかな夜明けを歌いながら始まるこのパフォーマンスは、tricotらしい劇的な展開を経て、さながら小さな組曲かミュージカルのように進んでゆく。徹頭徹尾、オルタナティヴな価値観だけを提示しながらtricotはベルの物語を紡いでゆく。赤い公園と並んで『ディズニー・ロックス!!! ガールズ・パワー!』から収録されたナンバーだ。

06.A Little Less Conversation[Lilo & Stitch]

The Mirraz

The Mirrazは、『ロック・スティッチ』より“A Little Less Conversation”で参加。オリジナルは本来、こちらもエルヴィス・プレスリーによる楽曲だが、映像ソフト作品『リロ&スティッチ2』のサントラではオランダのブレイクビーツアクト=ジャンキーXLによるファンキーなリミックスヴァージョンが採用されている。そちらに触発されたのか、ミイラズ版もソリッドなバンドグルーヴが火を吹くエキサイティングなパフォーマンスに。《お喋りにはもう疲れたぜ、頼むよほんと》といったエルヴィスの苛立ちに、ミイラズの前のめりでやさぐれたロックンロールがぴったりフィットするところが最高だ。楽曲セレクトにも唸らされてしまう1曲。

07.南風と太陽[Stitch!]

MONGOL800

MONGOL800もオリジナルソングでの参加であり、こちらはTVシリーズ『スティッチ!〜いたずらエイリアンの大冒険〜』主題歌として書き下ろされた“南風と太陽”だ。ゴリゴリとしたリフの乱舞から始まり、ほぼ2分ジャストという収録曲随一のファストチューンだが、アニメソングということもあってか、モンパチの豊かな陽性メロディックパンクが全開になっている。躍起になって競い合う北風と太陽ではなく、《太陽と南風と/おでかけですか?》と歌われるハートウォーミングな遊び心もさすがといったところ。サントラや『ロック・スティッチ』、モンパチの『etc works 2』に収録されたほか、着うたヴァージョンはスティッチの掛け声入りであった。

08.Chim Chim Cher-ee[Mary Poppins]

Plastic Tree

Plastic Treeは、ディズニー映画版『メリー・ポピンズ』でアカデミー歌曲賞を受賞した名曲“Chim Chim Cher-ee”を披露している。この余りにも物悲しくミステリアスなヴァイブは、嵌りすぎでヤバいだろう。有村竜太朗(Vo)は近年の日本語詞ヴァージョンをカヴァーして歌っているのだが、ズブズブと引き込まれてしまうような中毒性に満ち満ちている。印象深いメロディをハーモニーで引き立てながら、最終的に重厚なバンドアレンジで締め括るという構成も秀逸だ。古くから知られている楽曲なのは間違いないのに、完璧にPlastic Treeの曲でもある。抜け出せずについ何度もリピート再生してしまいそうで、取扱注意である。初出は『V-ROCK Disney』だ。

09.Heigh-Ho[Snow White and the Seven Dwarfs]

the telephones

前述のPlastic Treeとは真逆の方向で嵌りすぎているのが、ディズニー初のカラー長編アニメとして製作された『白雪姫』より、挿入歌の“Heigh-Ho”をカヴァーしたthe telephonesである。どうでしょうか。そんなの、楽しいに決まっているだろう。ずるいぞテレフォンズ、と難癖のひとつも付けたくなるような最高の1曲である。極彩色のサウンドが7人の小人をDISCOの向こう側で踊り狂わせ、何なら夜のパレードさえ先頭切っておっ始めそうなテレフォンズが、ここにはいる。活動休止前の最後のアルバム『Bye Bye Hello』も発表されたが、彼らは感傷など置き去りにするこんな曲も残してくれたのだ。小人たちに負けじと声を上げ、踊りまくって頂きたい。

10.Lahaina[Lilo & Stitch]

真空ホロウ

今後は、松本明人(Vo・G)のソロプロジェクトへと移行することがアナウンスされている真空ホロウ。『ロック・スティッチ』より、“Lahaina”で参加である。この曲はもともと米国のデュオ、ロギンス&メッシーナ1973年のアルバム『フル・セイル』に収録されたハワイアン風のポップソングで、『リロ&スティッチ』ではザ・ヴォルケイノズというバンドが同曲をカヴァーした。真空ホロウがハワイアン?と思われるかもしれないが、彼らは見事、この曲を美しくエモーショナルなロックソングへと生まれ変わらせている。じっくりと押し寄せるディストーションギターやハーモニーに、潮騒の音がオーヴァーラップするアイデアも巧みで素晴らしい。

11. Supercalifragilisticexpialidocious[Mary Poppins]

でんぱ組.inc

というわけで、錚々たる顔ぶれによる名曲名演の全11トラックを締め括るのは、狂気に触れんばかりの賑々しさを持ち込むキュートな6人=でんぱ組.incである。『ディズニー・ロックス!!! ガールズ・パワー!』で初めて触れた時にも、そりゃあぶっ飛ばされた。ただでさえ、前山田健一(ヒャダイン)によるビットチューン風の超アッパーなエレクトロポップにアレンジされている上、息つく暇もない怒濤のヴォーカルリレーが全速力で駆け抜けてゆく。後半に差し掛かると、「逆さまにも言えるわよー!」だの「もっと速くしてみようよー!」だのとハードルを上げまくり、完璧にフィニッシュしてみせるのである。これには、メリー・ポピンズもびっくりだろう。

提供:エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ

企画・制作:RO69編集部

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