死んだ僕の彼女が、結成10周年にしてついにファーストアルバム『hades(the nine stages of change at the deceased remains)』をリリースした。轟音ギターと歪んだノイズ、儚い男女ツインヴォーカルと、ルーツにはシューゲイザーをもつ彼らは、そのバンド名の通り、「死」というものから想起されるイメージを出発点として曲を作ってきた。今作では、石田ショーキチをプロデューサーに迎え、サウンド全体がアップデートされたと同時に、彼ら独自の美しさと普遍的なポップセンスが同居するメロディがより鮮やかに浮かび上がった作品になっている。なぜ、その「死」という重苦しいはずのテーマと、甘美でポップなサウンドが一体となって生まれてくるのか。これまでほとんどメディアに露出することなく、作品について語ることも少なかった彼らの正体に迫るべく、メンバー全員に話を訊いた。

インタヴュー・撮影=若田悠希

ishikawaくんが作った曲を初めて聴いたとき、絵みたいだなと思って。風景がバーッと出てくるような(ideta)

――どういうきっかけで始まったバンドなんですか?

ishikawa(Vo・G) 当時大学生だった僕が、友だちとバンドやりたいねって言っていたんですね。で、メンバーは集まってないけど、バンドをやるんだったら、「死んだ僕の彼女」ってバンド名でやりたいなと。当時、鬱屈とした――溌剌とした大学生ではなかったので(笑)、「死んだ」とかは絶対付けたいよなと。でも「死んだ」だけだとちょっとあれなので、「僕の彼女」と組み合わせて、ハーフハーフでいいかなと思って。英語にしたらmy dead girlfriendで、my bloody valentineみたいだし、シューゲイザーがやりたいから、すごくいいなあと。

――オリジナルメンバーは、ishikawaさんとidetaさんのふたりなんですよね。

ishikawa そうですね。ただ、kinoshitaくんは僕の大学の同級生で、バンドが始まってから3、4ヶ月で入ってくれたので、ほぼオリジナルメンバーみたいな感じで。でも、僕がシューゲイザーっていうものがすごく好きで、バンドでやりたいねって言っていただけで、今のこの5人が、みんなシューゲイザーやりたかった、好きだったっていうわけではないんですよね。ただ、「死んだ僕の彼女」っていうバンド名と、そこから広がるイメージっていうところで、どんどん曲作ってバンドが回っていったっていう感じで。

ideta(Vo・Syn) 私はこのバンドに入って初めて、ishikawaくんと、当時のメンバーからシューゲイザーっていうのを教えてもらったんです。だから最初は全然わからなくて。初めてスタジオ入って、これ歌ってって言われたけど、ギターの音とかがうるさいから、声が聴きとれなくて(笑)。でも、ishikawaくんが作った曲を初めて聴いたとき、絵みたいだなと思って。風景がバーッと出てくるような。

――結成からは10年経つわけですけど、初期の頃からこのバンドのコンセプトみたいなものって、全然ブレてないですよね。

ishikawa そうですね。まあ、他に変わってく余地があったからっていうのは、ひとつありますけどね。演奏技術とか、表現できる世界だとか、そういうテーマ以外のところで掘り下げていく余地っていうのは、いっぱいあったので。

kinoshita(G) 表現するための道具がどんどん増えていくんですよね、やっていくと。昔はできなかったけど、今だったらこういうことをやってみたいな、とか。で、メンバーも何回か入れ替わったりもしているので、kuniiさんとかkawakamiとかが入って、またどんどんバンドができることが変わってきて、更新されていって、なるほど、こういうアプローチもあるのかって気づかされて。今もその真っ只中にいる気がしますね。

フルアルバムっていうものにこだわりがあって。それができるバンドっていうのがひとつの目安かなと。でも手応えは感じましたね。ああ、いけるな、自分たちって(kinoshita)

――今回はファースト・フルアルバムということで。これは、曲が貯まってきて、そこからアルバムにしようっていう流れだったんですか?

ishikawa そうですね。2曲目の“手を振って”と3曲目の“hades in the dead of winter”が自分の中ではアルバムの軸となる曲なんですけど、その2曲が2014年の頭くらいにできて。そのあたりで、この『hades(the nine stages of change at the deceased remains)』っていうアルバムのイメージがバッと湧いてきて、アルバムが作れるなっていう確信を持てたって感じですね。

kinoshita 2012年にミニアルバムを作ったときに、初めて、(石田)ショーキチさんにプロデューサーとして入ってもらって、本格的に共同作業をしたんですよね。それで、バンドで音楽をやるとは、みたいなことをすごく考えさせられて、個人的にはそれが結構へヴィーな経験だったんですよ(笑)。で、それを消化し切るのに時間がかかって、次音源を作るんだったら自分は何をすればいいのかな、みたいなことを考えていた時期があったんですよね。だから、すぐに次の音源の制作に気持ち的に入れなかったなっていうのがあって。でも、ある程度時間を置いてその経験を自分なりに消化できて。で、今回のフルアルバムも、またショーキチさんにプロデューサーとして入ってもらったんですけど、すんなり作業に入れたかなっていう感じがしますね。

ishikawa 前のミニアルバムを経て、ここ2年ぐらいかけて音楽とかバンドに関する姿勢が、ちょっと自分の中では変わっていったっていうのはありますね。そういう意味では、間が開いてしまったっていうのも、バンドとしては悪くなかったのかな。

――初めてフルアルバムを作るっていう作業はどうでした?

kinoshita 僕はフルアルバムっていうものにこだわりがあったんですよね。やっぱり、6曲入りのミニアルバムと、10曲入りのフルアルバムだと、単純に難易度として全然違うと思っていて。それができるバンドっていうのがひとつの目安かなって思っていたので。でも、手応えは感じましたね。ああ、いけるな、自分たちって。

ishikawa 10曲でも、このバンドのコンセプトっていうものを徹底できたのがよかったですね。とりあえずできた曲に4曲足せばいいや、みたいなのは嫌だなと思っていたので。

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