いろんな情報が入りやすいから正解が同じところにありすぎる。そういう面では恵まれてないのかな(稲村)

暗い方向ではないと思う。いきなり面白えことになる可能性って宇宙の摂理上でもあるわけだから(菅波)

――では、おふたりが同い年っていうこともあるので、今の若い世代のバンドをどう見てるのかというのも訊いてみたいと思っていて。たとえばアルカラは「ネコフェス」を主催して、若手もベテランも出しているし、バックホーンも久々に対バン形式で「KYO-MEI」ツアーをやって、自分より下の世代とも共演していて。

稲村 どのへんが若手になるんかな。僕も一応若手やと思ってるんですけど。

菅波 そう、俺らが若手だからどうなんだろう(笑)。でも若手って言っても幅があるよね。Ykiki Beatとか早いですもんね。SHISHAMOとかMrs. GREEN APPLEとか。でも年齢訊いたら、もうそんな歳?みたいな奴もいる。

稲村 アルカラはそのパターンですよね。若いって言い方が合ってるかわからないですけど、それこそ今ライヴハウス規模でやってるバンドに影響を与えていける存在になっていきたいなっていう気持ちはありますね。ひとつ思うのが、僕らが若い時、楽器を手にした時期っていうのが1995年とか1996年とかで。その世代から考えると、機材面とか楽器が良すぎるというか。前は充実してなかったからこそ、知識がないからこそ独創的で、ちょっといかれてるなあっていう人が多かったと思うんですよ。逆に言うと今はいろんな情報が入りやすいし、ある程度必要な情報はすぐ入ってくるので、そういう意味で言うとすごく利口だし、巧みやし、うまい。でも、正解が同じところにありすぎる。もっと「そんなんなしやん!」っていうことを堂々と提案してくるのが音楽の自由な部分だったりするから。逆に言うとそういう面は恵まれてない部分もあるのかなって思う。

菅波 興味深い話だな。大きく括って今のムーヴメントに感じるバンドのシーンがあるとして、その作詞作曲のテクニカルな部分で言ったら、曲の構造が凝ってるバンドは多いなと思った。よくできてんなっていうか、ちょっとそういうのに感動したりして、話してみたいなっていう人は結構多くて。若手のバンド同士がつながってるかわからないけど、音楽的にしっかりした構造を持った、ムーヴメントに感じるつながりのあるバンドっていうのはほんとに出てきていて、これはたぶん次の段階に行くなっていうザワザワ感がある。ちょうど最近インストアイベントで各地のCD屋さんに行ったんだけど、みんな「若いバンドが面白いんですよ」って言うのが、胡散臭くないっていうか、本気でCD屋の人たちも楽しんでそうで。なんかそのワクワク感っていうのは共有できるものがあるなあと思ってましたけどね。

――そういうザワザワ感みたいなものは、稲村さんも感じますか?

稲村 ありますね。じゃあ自分たちらしくやるっていうことについて考えさせられるっていうか。たとえば「キーボードがいるってことはちょっとポップなんだろうな」とか思ったら全然そんな扱いじゃないキーボードが出てたりとか、今までの概念――そういうものが逆にあふれてるからこそ、じゃあこう応用したらいいやんっていうのができあがっていってる。デジタルな部分もどんどん変化していくと思うし、ライヴの環境もどんどん良くなっていて。そっちが逆に主軸になっていくのであれば自分たちはどんどん時代遅れになっていくのかなっていう中で、だからこそできることがあるのかなと思ったり。より自分たちのやるべきところっていうのを研ぎ澄ましていこうっていう気持ちになりますね。

菅波 あとは、曲ができなくなったらどうしようとか思う時もあるんですけど、とは言え、俺からは出てくるだろうっていう自負はたぶんふたりともあると思うんです。そしたら他のバンドがやらかしてくれることは楽しみでしかないですよね。自分が触発されて、予測不可能な自分になる可能性だってあるじゃないですか。この前ACIDMANと対バンして、並行宇宙っていう話があるとか言って。俺がこのコップを左手で持つ未来と右手で持つ未来、両方が宇宙として続いてく、みたいな話。俺は混乱しながら聞いてて、その日はそのまま寝て、起きた時に思ったの。今回で言うと“シュプレヒコール~”は今までの脈絡ともあんまり関係なくボンって出てきた曲で。そうやってアルバムを作る中でも新しい要素が出てきて、自分が今までの経験を踏まえて予測した未来とまったく関係ない未来に路線が変わることって余裕であるのかなとだんだん思い始めて。そしたらバックホーンの未来は自分がまったく予測してない形なんだろうなと思うと、なんかだんだん気が楽になってきて。そうか、いきなりとんでもなく面白いことになることだってあるな、とか思って(笑)。やっぱりフィーチャーされるのは若手だっていうのはわかってて、だけどもちろんもがいてやってくし。でも、暗い方向ではないのかなって。だっていきなり面白えことになる可能性って宇宙の摂理上でもあるわけだから(笑)。

稲村 さすがやなあー。

菅波 明日いきなり面白えことになることだってある。1曲1曲作った時に、うわ、面白え!って。そんな感じがしてるので、100%楽しめるんですよね。音楽シーンが変わっていくことを。自分が歳をとっていくことを。

――でもそれぞれ今回が11枚目、8枚目のアルバムで、毎回毎回キャラが違うっていう話もありましたけど、いまだに新しいところにたどり着けるっていうところがすごいなあと思っていて。それこそ次の作品がどうなるか本当にわからないし。

菅波 そう、わかんない。わかんないのが希望だっていう(笑)。

稲村 いいこと言うわー。「『わからない』は希望だ」。

菅波 いやいやいやいや(笑)。やめて下さい。

稲村 でもやっぱ作家なんだなって思いましたね。栄純は作家だった。

菅波 我々が、そうじゃないですか。

稲村 すぐ次のアルバムで書くからね、俺。「by栄純」って(笑)。

菅波 律儀だね(笑)。

稲村 「栄純から引用」。会話から生まれたっつって。

菅波 歌詞に入ってるの? すげえなそれ、新しい(笑)。発明的かもしれない。

提供:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント

企画・制作:RO69編集部

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