バックホーンは曲をみんなで制作してるし、栄純さんの中でも先発投手的な曲と抑えの曲と、みたいな感じもある(稲村)

音楽的な要素がめちゃめちゃ組み合わさってるけど音と音のつながりがめっちゃ滑らかに磨いてある(菅波)

――うん、似てると思いますね。稲村さんはそう言われてどうですか?

稲村 冷静っていうのはその通りだなって。特に短いステージ、たとえばフェスとかになってくるといっぱいバンドがいるんで、自分たちだけで起承転結できないから、今日は賑やかしなライヴしようとか考えるんです。だから長尺で見てもらったことによってわかるっておっしゃってたのはその通りというか。長くやるといろんな側面を見せられて、ようやく本質を見せれるっていうのはすごい思いますね。たとえば松坂のように150キロの真っ直ぐが投げれたら世界に通用するんですけど、ストレートだけではやっぱりやっていけなくて、変化球も覚えなあかん。真っ直ぐを見せるためにどんだけの変化球を用意しとくかっていうのはすごいあって。

菅波 それはあるかも。

稲村 僕は結構うらやましいんですよね、バックホーンは。栄純さんがやっぱ多いけど、曲をみんなで制作してるし、栄純さんの中でも先発投手的な曲と抑えの曲と、みたいな感じもあるんで。アルバムがすっごい楽しいんですね。

菅波 うれしいなあ。

稲村 次はどんな球用意してきてんねやろって。いきなりドーンと歌で聴かせる曲も来たら、なかなか歌が始まらなくて焦らす感じとか、そのへんのバランスはすごく聴き応えがあって。僕らは全員で作るというよりは、僕が歌詞を書くんで、その辺のバランスが取りづらくなる時もあるんですよね。

――菅波さんはアルカラのアルバムはもう聴きましたか?

菅波 はい。今回のアルバムの、今ネットに上がってるインタヴューも読んで。タイトルの『ちぎれろ』は「ぶっちぎる」っていう意味があるみたいな。自分はバランスを取っちゃうタイプだから、今回はそういうのをぶっちぎった衝動が出た仕上がりにしたいと思ったっていう話で。実はバックホーンとしても結構そういうところがあって。自分たちの「らしさ」ってずっと追求してきたし、今回もいろいろ考えたんだけど結局わかんなくて、だけどどこかぶっちぎった、少しはみ出した、ライヴで言ったら全員が思いがけずグシャッていった瞬間みたいなものを音源にも楽曲にも刻みたいって制作中にふと思って。なんかちょっと似てるのかなと思った。だから、表からはどう思われてるかはわからないけど、本質的には結構真面目っていうか(笑)。

稲村 うんうん。

菅波 ロックバンドをやってるっていうことは、心のどっかで破綻したり、すべてを投げ出してテンションの赴くままにドカーンとかそういうのもいいと思うんだけど、本質的にはすごくバランスを気にするタイプなのかなって。俺もそうで、小学生の頃の話で、今は別に気にならないんですけど、昔は結構潔癖っていうか。服にタグってついてるじゃないですか。

――プラスチックのタグですよね?

菅波 あれが本気で許せなくて。布っていうオーガニックなものにまったく違う素材感のものがくっついてるっていう、そのセンスが納得いかなくて(笑)。

稲村 ははははは。

菅波 稲村さんも本質的にはつっこんで生きてるのかなと思って。それも違うしそれも違うしって、アルカラの今回の歌詞って自分に対するつっこみもあるし、世の中のなんとなくふわっと許されちゃってるとこにつっこんでるとこもあるし、そういう視点って俺も結構あって、なんかわかるなって。だからどうしても破綻しきらない、それが良さで。ギリギリのところで戻ってくるから。俺、“さよならハッタリくん”がすごく好きなんですけど、音楽的な要素もめちゃめちゃ組み合わさってて、だけど破綻してない感じってほんとはなかなか難しくて。普通だったらつぎはぎが見えちゃうけど、めっちゃ滑らかに磨いてあって。音と音のつながる感じ。

稲村 それはいいとこ突かれてしまったかもね(笑)。

菅波 その熱心さに、似たものをちょっと感じるな。

稲村 逆にリボンつけて返すと、“悪人”って曲はAメロのあとにBメロが来ないよね。違うメロで入って、サビが来て、そのあとどうすんのかなと思ったらまた違うメロディが来て。ああ、これで戻るんやろなと思ったら戻らんとまた違うのが最終的に来て。もうEメロなのか何メロなのか(笑)。それを4分くらいの中に収めてて。よくよく聴けばプログレなんですよ。

菅波 ははははは。

稲村 やけど、普通にシングルでドーンと、顔として出してくるっていうのがある意味「悪人」やなあと。タイトルからで申し訳ないですけど(笑)。

菅波 いや、うれしいよ(笑)。

稲村 あと、“シュプレヒコールの片隅で”がめっちゃ好きで。みんなで「行けー行けー、お国のためにやろう!」みたいなことをやっている後ろでこういうドラマが実はあった、みたいな。もうひとつのサブストーリーみたいな。ゲームとかでも1回ストーリーが終わると、サブキャラの奴のボーナスステージとか出てきて、あれが面白かったりするんですよ。

菅波 俺、サブストーリーすげえ好きだもん。マンガとかでも、バトルものとかシリアスなマンガで、時々「この日は戦いが休みでした」みたいな日常編があるじゃないですか。あれが結局すげえ好きなんですよね。あそこを見たくて、ずっとバトルシーンを我慢して俺は読んでるようなもんだから。

稲村 はははは。

――もうそっちがメインなんですね。

菅波 サブストーリーあっての本編なんじゃないかと俺は思う。アルバムだとサブストーリーを入れていけるっていうか。

稲村 なるほど。アルバムをどう捉えてるかっていうことですよね。ただ単純に曲を並べて聴きやすいようにするんじゃなくて、物語として、アルバムとしての面白みを詰めようとしている。そういう考え方であるべきやなって僕も思いますし。やっぱりここまで枚数を重ねてもう11枚まで来て、12枚、13枚とかなっていったら1個1個のキャラクターがはっきりしてこないと。そういう考え方でアルバムを作ってはるんだなっていう。今回は特に思いましたね。

菅波 でもアルカラもそうだよね。1枚1枚カラーがある。

――そこは共通してますよね。どちらのバンドも作品ごとのカラーがはっきり違うと思います。

菅波 うん、共通してる気がする。俺らの場合はみんなで書いちゃうから、最後の仕上がりの全体感みたいなものを作るのは結構大変なんだよね。でも、それをまとめ上げるのも結構好きで。この曲とこの曲は違う奴から出てきたし、全然違う話のつもりで書いてるけど、サブストーリーとしては同じ人物が出てきてる気がするとか、そういうのを見つけてなんとなくここに文脈を作ってくのが好きなの。でも、俺の場合はバックホーンの4人の中でいうと、立場的には一番下っ端だからね(笑)。

稲村 なんで?(笑)。

菅波 兄弟的には末っ子みたいな扱い。ライヴ終わりで一番怒られるのは俺だし。

稲村 ははははは! 曲も生み出すし、バックホーンの母なんだけど、母兼末っ子なのか(笑)。

菅波 そう(笑)。

↑TOPに戻る

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする