なにか過激で斬新な音楽性を打ち出しているわけでもないし、飛び抜けた歌唱力や楽曲の完成度を打ち出しているわけでもないし、先鋭的な演出を見せられたわけでもないし、壮大な物語性が展開したわけでもない。
ただただLANAの存在感、ファンとの向き合い方、そして友達や兄弟でもあるゲスト・アーティストたちとの関係性、そして何よりも楽曲と歌の体温とリアリティー、それらすべてが完璧に新しかった。爆音ではなく少し音量を抑えた洗練されたサウンドも、一対一で言葉少なく静かに語り合うようなMCも、新鮮だった。
LANAも集まったファンも肩の力を抜いて、でもすべてが伝わっているような次の時代のポップ感覚───なにひとつ無理せずに、でも全身全霊で楽曲に自分の力をすべて解き放つその姿勢は素晴らしいものだった。(山崎洋一郎)