サラウンドDJって何だ!? ロックDJイベント 「渡り鳥」の主催者が語る新たな音楽のあり方

渡り鳥

ジャパニーズロックを主体としたDJイベントであり、生々しい音の動きや立体的な質感を表現する「サラウンドDJ」を体験できる空間にもなっている「渡り鳥」。47都道府県を行脚しながら新鮮な刺激を届けることを目指しているこのイベントの正体とは、どのようなものなのだろうか? プロデューサーであり、サラウンドDJでもあるJimi、制作に携わっているインドウが、「渡り鳥」に託している夢とロマンを熱く語る。音楽を作って奏でるミュージシャンとはまた別の形の「音楽人生」を突き進んでいるふたりの言葉は、とても清々しいエネルギーに満ちていた。

インタビュー=田中大 撮影=齋藤毅

サラウンドシステムはもっと世間的な注目を浴びてもいいと思う

――まず、Jimiさんとインドウさんがやっていらっしゃる「鳥クルッテル.inc」というチームの活動について教えてください。

Jimi 簡単に言うと、イベントの企画とか、サラウンドシステムのワークショップとかをやっているチームです。あと、「音を使って空間を演出する」っていうことにも取り組んでいます。例えば駅の広場のいろんな位置にスピーカーを置いて、映像が見えるかのように音で空間を作ったりとか。

――「音を使って空間を演出する」って面白いですね。プロジェクションマッピングとかライティングで空間を演出するのはよくありますけど、それを音でやっているわけですね?

Jimi そういうことです。本当はもっと世間的な注目を浴びてもいいと思っているんですけど、なかなかそうはならず(笑)。目で見えるものの方が分かりやすいですからね。だから、まだまだこれからの分野です。

――インドウさんは、どういう経緯で一緒にやることになったんですか?

インドウ Jimiは、学生時代からの仲間なんです。僕もずっと音楽の仕事をしてきたので、一緒にやることになりました。サラウンドに関しては、僕も実際に聴いて面白いと思ったんですよ。だから力を貸したいなと。

――みなさんが始めたDJイベントの「渡り鳥」は、サラウンドを体感できるイベントなんですよね?

Jimi はい。サラウンドで音楽を聴ける場所は今までにもあったんですけど、「みんなで盛り上がるDJイベント」というものをやりたくて始めました。

――おふたりの活動は、バンドをやるのとはまた別の音楽表現だと感じるんですけど、どう思います?

Jimi まさにそうなんだと思います。僕らは学生の頃にバンド活動もやっていたんですけど、今はこういうことをやるようになりました。僕、サラウンドをやりたい気持ちはずっとあったんですよ。「サラウンド」って言葉は知らなかったですけど、小っちゃい頃からそういうことを漠然と考えていた気がします。中学くらいから雑音が延々と鳴っている曲とかを聴いていましたし。売れているバンドも聴く傍ら、ノイズバンドも好きだったんですよね。「B’zかっこいいなあ」って思いながら非常階段とかも聴いていました。

――インドウさんは、サラウンドに関心はありました?

インドウ 僕の場合は「サラウンド」というのとはまた別なんですけど、「音楽が鳴ってる場所って楽しいな」というのはずっとありました。だから一時はバンドもやっていたんですけど、周りにすごいやつらがたくさんいたので、「これは俺、食えねえな」と(笑)。そして、縁があってライブハウスのブッキングの仕事をするようになって、インディーズレーベルの仕事やアーティストマネジメントもするようになって、今日に至っています。

――音楽業界って、そういう人々の集まりですよね。「音楽が好き」という気持ちを持ちながらある人はミュージシャンになって、ある人はマネージャーになって、ある人はレコーディングエンジニアになって……って、いろいろな分かれ道を経た人が、この業界を構成しているわけですから。

Jimi ほんとそうですね。僕の周りも音楽が好きで、デザイナーになっている人とかがいますから。僕の場合は、一時は音楽を諦めようと思っていたんですよ。でも、こうしてサラウンドの活動とかを始めて、続けられるようになったんです。

インドウ Jimiは、学生の頃からずっと変わらないですね。とても勉強熱心で、音楽に対する情熱がすごいですから。こうして情熱を注ぐ場ができてよかったなと、友人として思っています(笑)。

Jimi そうなんだ? ありがとう(笑)。

インドウ Jimiは、学生時代から変わったやつでしたよ。Jimiっていうのも、頭が爆発していたからなんです。

――ジミ・ヘンドリックスのJimi?

インドウ そうです。見た目から面白いやつでした。

――ストラトキャスターにジッポーのオイルをかけて火を放ったり?

Jimi そこまではないです(笑)。「天然パーマを伸ばしっ放しにしたらどうなるのかな?」っていうのに挑戦したら、変な髪型になっちゃったんですよね。綺麗に丸い形のアフロヘアになればよかったんですけど、なんかハート型になっちゃって(笑)。

インドウ そんな見た目で、音楽以外のことに全然興味がない学生でした。

――学生時代からの仲間と、こうして活動できているのって、素晴らしいじゃないですか。

Jimi ほんと幸せなことです。一番仲が良かったやつと、こういうことをずっとやれているわけですからね。最早、解散も何もないと思います。お互いのことをよく分かっているので、「こいつ、今、機嫌悪いな」と思ったら話しかけないですし(笑)。

インドウ 間合いは心得ています(笑)。

「渡り鳥」は、好きな曲を聴いて自由に踊れる場所

――「渡り鳥」が始まったのは2016年の9月ですけど、その前からやっていたDJイベントが「ユグドラシル」ですよね?

Jimi はい。日本中のロックDJに東京に来てもらって、僕はサラウンドDJをやるイベントが「ユクドラシル」です。各地のDJと交流が広がっていった中で、「逆に今度はこっちから行こうか」と。それが「渡り鳥」に繋がりました。「あなたの街に会いに行きます」ということですね。

――無料のメールマガジンの登録者が48名に達した都道府県から回ることにしているそうですね。

Jimi そうなんです。DJイベントは、それなりの人が集まらないと楽しくないですから、「48名達成」というミッションをクリアするような形をとっています。あと、自分たちも身ひとつでやっているので、求めてくれる場所を優先して回ろうという考えでもあります。

インドウ メールマガジンに登録してくれた人は、イベントにフリーで入れるんです。こういうのはご縁だと思うので、それを大切にして、いろんなところで面白いことをしたいんですよね。そして、「渡り鳥」に来てくれた人が「また遊びたいね」と思ってくれたことが、また違う地域に波及していったらいいなと思っています。

Jimi 僕らは会場に来た人全員と挨拶をしたいと思っているので、メルマガに登録する時にニックネームを入れてもらっています。今はSNSでも交流はできますけど、直接話すって、やっぱりいいものですね。人間の脳みそって、周りから刺激を受けて初めて何かが閃くようになっているって言うじゃないですか。イベント会場でいろんな人と会うことは、そういう刺激にもなっています。

インドウ 実際、いろんな刺激を受けて「やっちまおう!」ってなったのを積み重ねていったら、様々なことに繋がっていきましたからね。「サラウンドDJ」というようなことを掲げているからには、その時点でハードルは上がっていると思うんです。それを越えて行かないと、イベントとしては成立しないので、僕らはすごく力を注いでやっています。

Jimi 「ロックDJのイベントってどういうものなんだろう?」っていう興味から来てくれるお客さんもたくさんいるんですよ。「渡り鳥」は、好きな曲を聴いて自由に踊れる場所なので、そういう楽しみを求めている人にも、どんどん来て頂きたいと思っています。

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