感覚ピエロ、人間臭さ溢れた「幕張ヴァージン」振り返り&バンドのこれからを語る!

撮影=ヤマダマサヒロ

ちょっと消化不良じゃないですけど、もう1回この場所に帰ってきたいなっていう思いのほうが強いかもしれない(横山)


――幕張メッセでのライブ、おつかれさまでした! まずはやり終えての今の気持ちを。

横山直弘(Vo・G) 率直に、わかんないんすよ。正直にあろうと思ったし、その日来てくれたお客さんに対して真摯にライブをしたいと思ってがむしゃらにやったんですけど……自分のなかでまだなんか他人事みたいに思えてて。あと、これはMCでも言ったんですけど、純粋に悔しさもある。1年かけて準備してきた幕張は終わったんだけど、ちょっと消化不良じゃないですけど、もう1回この場所に帰ってきたいなっていう思いのほうが、ひょっとしたら強いかもしれないです。

滝口大樹(B) 僕も似た感じかもしれない。終わった感覚がないんですよね。やり切ったっていうのもないんで。「あ、終わったんか幕張」ぐらいの。やっている最中は楽しかったし、もちろん緊張もしましたけど。

――MCでおっしゃってましたけど、10年ぶりの家族の再会というのもあって。

滝口 そう。よく考えたら20年やったんですけど(笑)。まあ、あのMCしたからかもしれないですけど、オカンもオトンもすっと帰りましたけどね。

横山 そうなんや!(笑)。

――アキレスさんどうですか。

アキレス健太(Dr) まあ、僕はほっとしましたね、終わって。なんか背負ってたのか、重荷が下りた感じがしました。でも当日のことはなんか記憶が飛んでるみたいな、空想のできごとみたいな感じです。

――どうですか、秋月さん。

秋月 なんやろな……余韻ももちろんあるんですが、次に提示しているものもあるんで、その狭間にいるというか。悔しさもあるし、この次、また大きな場所でやるっていうイメージもちょっと見えたし、そこに向けて歩き出したいなって。

――変な言い方ですけど、悔しさが残ったぶんだけ未来につながっているというか。

秋月 そうっすね。それはメンバー全員が感じていると思います。終わったあとの「終わった! 乾杯! うぇーい!」っていうのがなかったんで、そこはある種安心したというか。

――僕の感想を言うと、いつになく愛が溢れているライブだったなと思ったんですね。音楽に対する愛、バンドに対する愛、お客さんに対する愛を隠していなかったですよね。

横山 そうですね。漠然と「幕張メッセでやります」って1年間言い続けて、お客さんが来てくれるんだろうかっていう不安との闘いでもあったんですよね。当日も明言したんですけど、会場の座席配置もああいう形になって……。

――ステージを横向きに設置することで、客席のキャパを狭めるっていう。

横山 うん。その意味ではあのライブは成功だったかというとそうではないけど、それにしたって、ああいうふうに集まってくれたお客さんたちに対しては、僕たちの不安に応えてくれてありがとうっていう気持ちしかなかったし。お客さんも緊張していたと思うんですよ。ただ観るだけじゃなくて、自分のことのように思って来てくれたお客さんをもててることが感覚ピエロらしさで、それに対して感謝を伝えなきゃいけないって思ったんで、ひたすら「ありがとう」って言ってた気がするんですけど。

――MCで「楽屋の空気がヤバかった」みたいなことも言っていましたけど、実際どんな感じだったんですか?

秋月 全員が全員ソワソワしていて。で、なんか「おーい、緊張してんのかよ」とか言って、全員で空回りしだすっていう(笑)。リハーサルのときはスタッフも含めてキャッキャキャッキャしてたんですけど、衣装に着替えたぐらいから全員緊張しだして、スタッフにもそれがうつるみたいな。ちょっと変な空気でしたね、やっぱ。ステージに出てからも最初はフワッフワしてましたね。「本当にこれ、届いてんのかな?」みたいな。距離があるし、失礼ながら客席の上のほうは見えないんですよ、逆光で。表情も見えないので心配になるじゃないけど、そういう感じはありましたね。

――客席の空気はすごくよかった。最初から最後まで。

横山 ああ、そうなんですね。

――それこそ、一緒に緊張して、一緒に興奮して、一緒に感動するみたいな。そういう空気がずっとあって。1個の物語を一緒に作ってるんだなっていう感覚はすごくありましたね。

秋月 僕もあとで映像を見返したときに思ったより近く感じられて。それはよかったなあと思いましたけどね。

肩の荷は下りましたけど、そのぶん違うものが載ってきたなっていうのもある。あっこで終わりじゃないので(秋月)


――ライブ中、何か印象に残っているシーンはありますか?

横山 僕はタッキー(滝口)さんのMCかなあ(笑)。

――タッキーさん、ちょっと涙ぐんでましたよね?

滝口 って言われるんですけど、俺的には……。

横山 ちょっと涙ぐんてたでしょ?

滝口 ファンの子からも「あの瞬間ウルウルしてるのが心に刺さりました!」って言われて「ウルウル……?」って。

――照明のせいかな?

秋月 いい演出でしたね(笑)。

滝口 じゃあ、泣いてたことにしといてください(笑)。

秋月 こっちもまさかそんなエピソードが出てくると思って振ってないので。なんか「……えっ?」みたいな(笑)。

滝口 直前に決まったんですよ、来るのが。父親からは初めて行くよって言われてたんですけど、オカンは「遠いし今回やめとくわ」って言ってたんですけど、1週間前ぐらいに来れることになって。

秋月 嬉しいねえ。なんか、曲よりもMCのほうが覚えとるかもね。曲は、初めてああいう広いステージで、終始自分のことで精一杯だったので。

――健太さんはどんなシーンが印象に残ってますか?

アキレス なんやろ……ほんまに覚えてないな。

全員 はははははは!

アキレス いちばん緊張してたんじゃない? 俺。めっちゃ緊張しいなんですよ。ほんまに自分じゃないみたいやったしな。

――だから、最後に脱いだときに「解放されたんだな」って思った。

アキレス ああ、そうっすね。あっこはほんまに解放されてました。

秋月 ほんと僕ら、自分らで言うのもなんですけど、根っこがクソ真面目すぎて。めちゃめちゃ小心者ですし。バンドマンにも「パリピっぽい」とか「イケイケっぽい」とかよう言われますけど、ほんとそうじゃないので。緻密に姑息にやっとるバンドなんで。

――しかも、いろいろ積み上げてきた結果としてのあの1日だからね。背負ってるものもあるし。

秋月 不安と期待と、「やったろう」感もあれば「やらないと」感もあって。だから、さっき健ちゃんが言っていたとおり肩の荷は下りました……けど、やっぱりそのぶん違うものが載ってきたなっていうのもあって。あっこで終わりじゃないので。それは来てくれた人全員に言いたい。

撮影=ヤマダマサヒロ

6年間やって出来上がってきたものは、Twitterの140字では絶対伝えきれないなと思った(秋月)


――うん。そういう意味ではあの場で新曲もやったし、新しい発表もありましたよね。まずはファンクラブを作りましたっていう。

秋月 はい。これは僕のなかで、SNSって難しいなって最近思っていて。感覚ピエロってSNSとかYouTubeとかを駆使しながらやってたんですけど、今じゃそれは当たり前すぎるし、6年間やって出来上がってきたものもあるので、Twitterの140字では絶対伝えきれないなと思ったんですよね。僕らもファンのことをもっと知りたいし、ファンにも知ってほしいし、僕らがもっとオープンに出せる場所がほしいなって思ったのが大きくて。幕張が終わって、これから感覚ピエロの第2章が始まるっていうときに、僕らのヒストリーも6年ぶん溜まっているので、そこをその「R-KANERO」っていうところに落とし込みながら、僕ら4 人のことも――「横山さんってこんな人なんだ」とか「滝口さんって普段喋らないけどこんなこと考えてるんだ」みたいな、それぞれの思想が表せたらいいなって思って。

横山 僕はSNSをやめたんですけど、それは何かを発信するときに、フォローしてくれている人たちだけじゃない人の目にも止まることを考えながら言葉を紡がなきゃいけないというのがあって。どこかでよくわからない人たちの目を怖れちゃって、言いたいことって何も言えないなっていうのが本心なんです。それがファンクラブになれば、正直なことを伝えられるような気がしていますね。

これからなおさら人間臭いバンドであり続けたいなって思います(横山)


――なるほど。そして2月からのツアー。これは初期の手売りの4枚からの曲だけでやるというコンセプトで。発表のときは「原点回帰」という言葉も使っていましたけど。

秋月 ほんと、原点回帰というのは僕らのなかであって。幕張をやって残った悔しいという思いをステップアップにつなげるために、もう一度、僕らを育ててくれた会場だったり曲だったりでやりたいなって。最近は嬉しいことにフェスだったり、大きなところでやらせてもらえることも増えてはいるんですけど、どうしてもセットリストって難しくて。昔の曲も感覚ピエロなので、それをやれる場がほしいなと思ったんです。それも6年間やって、これだけCDを出さないとできないことなので。ようやくツアーの意味合いにそういう新しい要素を加えられるようになったのかなと。

――全然やってない曲も結構あるでしょ?

横山 ありますよ。

秋月 だから「やるよ」って言ったけど、ちょっとやりたくない(笑)。

横山 でもワクワクしますよね。そういうコンセプトだから、そのツアーだからこそ言いたくなることってたくさんあるような気がしていて。『全裸』というベストアルバムを出したことにも通じるんですけど、ようやく自分たちが自分たちを丸裸にできるようになったからこそできるツアーだなと思うから。幕張の「ありがとう」とは違う、もうちょっとディープな話になりそうだなって。

――ファンクラブもそうだし、幕張のライブもそうだったんだけど、今感覚ピエロってすごく本音でコミュニケーションをしようとしている気がするんですよね。このツアーもまさにそういうものだという感じがする。

横山 なんか、ロックバンドのよさっていうのを考えたときに、それって人間4人がやっているってことだと思うんですよ。やっぱりどうしてもパッケージしてしまうけど、僕らのいいところっていうのは、思ってないことは一切言わなくていいですよってことのはずだって気づいたんです。思ってることを正直に伝える、オブラートに包まずに言う。自分たちの仲が悪い時は仲の悪さがステージの上に出てしまうけど、こんなふうにいいムードのときは、すごくいいものをお客さんに提示できる。そういう人間臭いバンドでいいんじゃないかなって。そういうスタイルの出発点が幕張メッセだったような気もするし。これからなおさら人間臭いバンドであり続けたいなって思います。それでお客さんと一緒に成長していきたいですね。

“Sing along tonight”

2019年11月5日より感覚ピエロのファンクラブ「R-KANERO」がオープン!!
2020ツアーの最速先行チケットはFCだけ。くわしくはサイトにて。
https://r-kanero.com/

ライブ情報

コンセプトワンマンツアー2020「感エロフェチズム vol.1」

2020年2月5日(水)大阪・北堀江club vijon
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月6日(木)大阪・北堀江club vijon
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月12日(水)福岡・Queblick
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月15日(土)北海道・札幌SPiCE
 開場 17:30/開演 18:00
2020年2月19日(水)愛知・名古屋R.A.D
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月20日(木)愛知・名古屋R.A.D
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月24日(月・祝)宮城・仙台enn 2nd
 開場 17:30/開演 18:00
2020年2月26日(水)東京・渋谷チェルシーホテル
 開場 18:30/開演 19:00
2020年2月27日(木)東京・渋谷チェルシーホテル
 開場 18:30/開演 19:00

詳細はこちら
http://kankakupiero.jp/pg206.html

提供:JIJI INC.
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部