PENGUIN RESEARCHは初のアリーナ公演で何を掴み取ったのか?

やってる瞬間から漠然と「今日のステージは俺、自分の力で立ってるわけじゃねえな」って思ってました(堀江)


――初のアリーナ公演「横浜決闘」から5ヶ月以上経った今振り返って、あのライブはみなさんそれぞれにとって、改めてどういう意味を持つものだったと思います? 

新保恵大(Dr) その前にツアー8公演があってからのファイナルで、ツアーも今までで一番本数多かったし。演奏以外の時間もすごく充実していて――いいことも悪いこともいっぱいあったんですけど(笑)、「バンドっていいよね」っていうのを再認識できたツアーで。それを経てのファイナルだったので、想いが込み上げてくる瞬間は今までのライブよりも多かったなあって。照明の演出とか、プロレス入場とか(笑)、アリーナならではの試みも楽しかったですね。

神田ジョン(G) 僕はやっぱりライブハウスで育ってきた人間なんで、楽しさ的に言うとライブハウスの方が大きいと思うんですけど。ああいう場所は……いろんな意味で気持ちいいなあって。PENGUIN RESEARCHって当初は、自分のバンド感からしたらちょっと特殊なバンドで。そういった部分と、バンドとしてやってきたことを、自分の中で照らし合わせながらこの5年ぐらいやってきたんですけど。結局のところ、「バンドというのはこうやるしかないよな」みたいなところに、今わりと来ていて。それが今回のツアーと「横浜決闘」で腑に落ちたという感じでしたね。

生田鷹司(Vo) 僕はそんなにがっつりバンドを通ってきた人間じゃないのでわからなかったんですけど。ツアーでライブをして、みんなで飲んで、っていうのを通じて……自分もそうだし、バンドとしても成長してるっていうのを感じたんですね。だから、いつもだったら「ツアーファイナルはセトリを変えてやりますよ」っていうのがあるんですけど、「いやいや、これは俺たちが『決闘』に向けてやってきたことだから。これをやろう」って。集大成だよね、っていう気持ちで臨みました。

柴﨑洋輔(Key) 僕が「横浜決闘」終わってまず思ったのは……ちゃんと5人でファイナルを迎えられてよかったなって。晶太さんが結構体調を崩してて、リハとかもなかなか参加できないっていう状況もあったりして。僕がシーケンスとか管理してるので、最悪の事態に備えて、初めてベースのステム(パート)を一応用意したりもしてたんで。「終えられてよかった」って。でも、ライブ中はお客さんの表情だったり、その時の僕の感情が曲にリンクしたりして、結構感極まってしまった瞬間もあったりして。

堀江晶太(B・Composer) 実際その時、病気というか――別に感染するようなものではないんですけど、ステージでパフォーマンスすることが難しい状態の自分がいて。リハも結局、一度も全部通して参加できなかったので。でも、それはメンバーもスタッフも察してくれてて、「何かあったら」っていうことを考えてくれてたし。やってる瞬間から漠然と、「今日のステージは俺、自分の力で立ってるわけじゃねえな」って感じてはいて。お客さんの声援も――「ああ、楽しんでくれてる人がいる前ではカッコつけたいな」っていうのがあったからこそ、無事に終えられたライブだなと思うんで。

“それでも闘う者達へ”は、歌う時の心の持って行き方をすごく考えて。煽るのも違うなと思って、ほぼ動かず歌にだけ集中しました(生田)


――僕も実際に当日は会場にいましたけど、客席からは見えない想いがあったんですね。

堀江 俺が頑張ったからいいライブだった、俺の力でここまで来た、っていう充実感は今までで一番なかったんですけど。その反面、「ライブって自分だけが頑張ってもどうしようもないんだな」って。観てる人がいて、一緒に作る人がいて、一緒に演奏する人がいるっていう……そういう人たちがいてようやく成立してるところに、自分は今なんとか立ってるんだって。そういうことを学べたライブでしたね。

――本編ラストの“それでも闘う者達へ”の最後、鷹司さんと晶太さんが《死ぬなよ》のフレーズをハモって歌うところで、晶太さんの声が絶叫みたいになって終わる部分、グッと来ました。

堀江 嬉しいです。“それでも〜”を披露したのはこの時が初めてだったし。コーラス的な感じではなく、しっかり表現するっていう領域で歌うっていうのはなかったんで。自分でもそういう実感がない中で、そう言っていただけると、すごく励みになります。

――最新アルバムの中でも重要な楽曲ですけども。「横浜決闘」の終盤のエモーショナルな流れの中で、ある種荘厳な空気を作ってましたよね。

神田 もともと曲順そこじゃなかったよね? 最初はラストブロックの頭で、リハの2日目ぐらいに変えたんですよ。最初のセトリだったらまた違う、熱量的な、暑苦しい感じになってたと思いますね。

生田 この曲を歌う時の心の持って行き方とか、自分の振る舞いとか、すごくいろいろ考えたんですけど。「この曲は煽るのも違うな」と思って、ありのまま歌おうって。変に動かない、そのまま歌って、そのまま届ける、っていう気持ちだったので。ほぼ動かず歌にだけ集中して、っていう感じでしたね。

――この曲とどう向き合っていくかっていうのは、今後もその時々で変わってきますよね。

神田 まさに。曲の重さと強さが――これを入れるんだったら、こいつがメインとして映えるライブにしなきゃいけないから。めちゃくちゃセトリ考えるの大変でした。結局、12月の対バンツアーでも、この曲はラストの大阪でしかやってないし。

柴﨑 ツアータイトルに入ってるのに、一回しかやらなかった(笑)。

堀江 「この曲はしかるべき理由と条件が揃わないと、やらない方がいいね」っていうのは話してはいて。だから、今後もあんまりやらないとは思うんですけど。逆に、やる時はそれ相応の理由がある時だと思うので。そういう曲ができたなあっていうのは思いますね。


これからの新曲とかライブで僕らが見せるものが「楽しい」「苦しい」のどっちかだけにならないように気をつけたい(堀江)


――このライブはPENGUIN RESEARCHの新しい次元のステージだったと思うし。「横浜決闘」というタイトルですけど、どこかお客さんも含めた決起集会みたいな空気感があったなあと思うし。

新保 ああー、わかる(笑)。

――MCでも言ってましたけど、別にお客さんとPENGUIN RESEARCHが「決闘」する場ではなくて。会場一丸となって価値観を共有し合って、時代とかそれぞれの日常に闘いを挑んでいくっていうか。PENGUIN RESEARCHの音楽の爆発力って、何かをデストロイするためのものではないし。聴いた人が何かに立ち向かっていくためのエネルギーというか熱量というか、そういうものだと思うし。それがちゃんと伝わってるんだなあっていうのが、あの場で改めて確認できた気がしました。

生田 ありがとうございます。

堀江 ちょうどこの日の“ハードロック★パラダイス”がここ(アンコールの最後)に入ってることが印象的で。最近メンバーでも、「いろいろあれど、楽しくなくちゃね」って話したばっかりで。しんどいところ、苦しいところ、逆境っていうところを歌うことが多いですけど。ただ、生身の人間だから、よく漫画で見るような「人生の9割9分が絶望」っていうキャラみたいには、人は生きていけないし。全部つらかったら、生きていく理由がなくなっちゃうから。どんなにつらくても、楽しい瞬間がないと――それがあってようやくエンタメとして成立すると思うし。どんだけしんどくても悲しくても、それがいつかちゃんと楽しいっていうことに結びつく、っていうことが伝わればいいな、っていう話をしていたので。これから新曲を出したりライブがあったりすると思うんですけど。僕らが見せるものって「楽しい」「苦しい」のどっちかだけにならないように気をつけたいなって。

――アリーナ一面のヘドバンとともに轟く《柴﨑 of the 洋輔》の気分はいかがでした?

柴﨑 いやあ、うちのおかんがびっくりしてました(笑)。音源聴いた時もそうだったけど、ライブで観るとまた「何事だ?」と(笑)。

自分が一番元気ない日も、イントロが始まると「曲に相応しい自分」に勝手になる。ペンギンをやってるとそれをすごく感じる(堀江)


――そして、4月4日のLINE CUBE SHIBUYA公演「FIVE STARS JOURNEY」に続けて、全17公演のワンマンツアー「FIVE STARS JOURNEY TOUR」が始まるわけですが。

生田 そうなんです。ヤバいです(笑)。学生の頃とか、自分の好きなバンドが「全国回ります!」とか言ってるのを見て、「すげえなあ。でもバンドってそれが普通なんだろうなあ」ぐらいに思ってたんです。でも、いざ自分がバンドで歌い始めて――去年の8公演でも、わりと肉体的にも精神的にもクることがあって。「2ケタ行くのってすげえんだな」って思ってたら、今年もう17じゃないですか(笑)。僕が夢見てた、全然関係ないと思ってた人たちの領域に、ちょっと一歩足を踏み入れた感じもあって。あと、今回は「みんなの地元に行く」ツアーでもあって。僕は高知なんですけど、四国にライブに行くってなってもだいたい香川とか松山なんで、「やっと高知行けるか! 四国初やで!」っていうのもあるし……地元でライブをやるっていうことに対して、変なドキドキがあるんですよね(笑)。

新保 8公演でこうだったのが、今回倍以上だから。よくなるのか、悪くなるのか――いろいろあると思うんですけど(笑)、楽しみです。

神田 僕はもう、土俵ですよ。帰ってきた感がありますね(笑)。ずっとハイエースで箱根の峠越えてたから、下道で(笑)。

柴﨑 地方によってキャパも違うし、やってみてどうなるかは楽しみではありますね。よりバンドとして、ライブに向けて一致団結して、弾丸のようになって頑張りたいと思いますね。

堀江 「横浜決闘」でも思ったんですけど――ライブの後半とかに「頑張れ」っていうような曲があるとして、あんまり自分自身はステージに上がる寸前までとか、その曲をやる寸前まで頑張る気はなかったような気もするんですよ。「元気出せよ」っていう曲を歌いに行くのに、自分が一番元気ないっていう日もあるんですけど。でも、その曲をやるってなった時には、イントロが始まると「その曲をやるに相応しい自分」に勝手になるところがあって。それをペンギンをやってるとすごく感じるんですよね。音楽がまずあって、そこにいろんな気持ちが混ざっていくというか、そこから気持ちが生まれていくようなというか……本来、音楽のあるべき形のひとつだと思うので。そういう瞬間がたくさんあるツアーになればいいなと思いますね。

“ゴールド・フィラメント” Live Movie @横浜文化体育館

LIVE Blu-ray/DVD「Penguin Go a Road 2019 FINAL 横浜決闘」 発売中

完全生産限定盤:Blu-ray+2枚組CD+フォトブック(三方背) ¥8,250(税込)
通常盤:Blu-ray ¥6,050(税込) DVD ¥4,950(税込)

<Blu-ray/DVD収録内容> 全18曲(完全生産限定盤・通常盤)
1 決闘
2 逆襲
3 嘘まみれの街で
4 WILD BLUE
5 雷鳴
6 ボタン
7 世界最後の日に
8 冀望
9 ひとこと
10 スポットライト
11 ゴールドフィラメント
12 敗者復活戦自由形
13 シニバショダンス
14 近日公開第二章
15 それでも闘う者達へ
16 boyhood
17 BYEBYE RESEARCH
18 ハードロック★パラダイス
*共通特典として、メンバーオーディオコメンタリー

<CD収録内容>(完全生産限定盤)
*映像と同内容

ライブ情報

「FIVE STARS JOURNEY」
4月4日(土)LINE CUBE SHIBUYA

「FIVE STARS JOURNEY TOUR」
4月29日(水)大阪・BIG CAT
5月1日(金)広島・SECOND CRUTCH
5月3日(日)岐阜・CLUB ROOTS
5月4日(月)静岡・UMBER
5月9日(土)埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
5月10日(日)千葉・柏PALOOZA
5月17日(日)群馬・高崎clubFLEEZ
5月23日(土)北海道・cube garden
5月30日(土)宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
6月5日(金)福岡・DRUM Be-1
6月6日(土)熊本・B.9 V2
6月11日(木)愛知・E.L.L.
6月13日(土)石川・vanvanV4
6月14日(日)新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE
6月17日(水)京都・KYOTO MUSE
6月18日(木)兵庫・神戸VARIT.
6月20日(土)高知・X-pt.

提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部