今年5月に晴れて20歳となったシンガーソングライター、Karin.。アルバム『solitude ability』とミニアルバム『solitude minority』という2作で10代を終え、新たなフェーズに足を踏み入れた彼女の第一歩が、10月27日に配信リリースされた『二人なら - ep』だ。リード曲の“二人なら”をはじめ収録曲4曲すべて、「純猥談」に寄せられたエピソードをもとに書き下ろした新曲。これまではずっと自分自身の世界で曲を作ってきた彼女が、初めて「誰か」の目を通して曲を作ったわけだ。そこには当然苦労もあったようだが、できあがった4曲には当然ちゃんとKarin.がいる。そしてそのKarin.は明らかに、これまでとは違う。20歳になって飲み始めたお酒もどうやらイケるクチらしい(本人談)彼女に聞いた。――今回のEPは全曲「純猥談」のエピソードをもとにした初の書き下ろしということで。これまでとはまったく違う曲作りでしたよね。
インタビュー=小川智宏
「はい。本をすべて読ませていただいて書いたんですけど――“二人なら”のもとになっているエピソードを読んだ時に、内容が内容というか、私が経験したことのないようなエピソードで(笑)。『いや、無理だわ』って最初は思いました。全然気持ちがわからなかったので。でも『書いてみてください』って言われたので、まず書いたのが“717”だったんです」
――ああ、“二人なら”と“717”はつながってるんだ。
「そう。“717”って曲名はエンジェルナンバーなんですけど、あなたはいい道に進んでいて、自分を信じ続ければきっと幸せになれるっていうことを投稿者さんに言いたいと思って書いたんです。でもそのあとチームの方から、『エピソードを投稿した彼女は、もうそのできごとを忘れるくらい幸せらしいですよ』って聞いて。それで『ああ、もう幸せなんだ』と思って、またもう一回違うところから考えて、“二人なら”を作りました」
――これ、要するに人の話じゃないですか。今までKarin.は基本的には自分の物語を歌にしてきたわけで、そこは全然違う。
「うん、苦労しました。何度わかりあおうと思ってもわからない(笑)。寄り添って書いていくんですよ。でも最後のほうで無理!ってなっちゃったりとか。これを書くには、まず自分を他人の目で見るっていうことをしないといけないなと思ったので、それから周りをよく見る生活を心がけました。街中でいろんな人を見てどういう人なのか想像してみたりして。だから“二人なら”はすごく、自分じゃないような曲なんです。今までの私だったらたぶん書けない。『この曲、自分の曲じゃないな』って思いながら作りました」
――こうして新しい形で曲を書くことができたということが、Karin.というアーティストのマインドの変化を物語っている気がする。
「『solitude ability』の“過去と未来の間”のあとに作った曲が“曖昧なままでもいいよ”なんですけど、そこから気持ちは全然違います。悪く言ったら空っぽだけど、すごく透明になったことによって、その空洞に自分はどの色を入れたいかなっていうことをいろいろ模索するようになりました。“曖昧なままでもいいよ”もとても明るい、聴いてて楽しいと感じるサウンドになっていたりしますし、“717”もそう。サウンドが少しだけ明るくなったかもしれないですね。今回はバンドメンバーもアレンジャーさんも変えて、環境を新しくしたので、もう物理的にも違う私なのかもしれない」
――それは自分でそうしたいと思ったの?
「今までの自分だったら考えられないですよね、居場所があるのに自分から抜け出すっていうのは(笑)。でもそこに甘えている自分がいたので……一緒にやってきたメンバー全員、ちょっと年が離れてるので、お父さんなんですよ、みんな(笑)。優しいお父さんが増えすぎちゃって、箱入り娘みたいになってたところもあるなと思うんです。周りからも『もっといろんな人と出会ったほうがいい』と言われていたので、今がそのタイミングなんじゃないかなって。だから、留学みたいな気持ちですね」
――今も曲は書いているんですか?
「はい、ずーっと書いてます。思いついたらすぐ書きたくなっちゃうので、レコーディング中でも別の曲を書き始めたりしちゃうんです。みんなに『今はレコーディングだからちょっと待って!』って言われたりしています(笑)」