【インタビュー】ファンクもソウルも乗りこなす5人組アイドル「フィロソフィーのダンス」がかけがえない輝きを放つ理由とは? 新体制初のEP『One Summer Dream』に注ぎ込まれた「歌」への愛と情熱を語る

バチバチにかっこいい曲と歌、そしてちょっとヘンテコなダンス(笑)。そこが他のアイドルとは違ういい味だと思っていました(木葭のの)

――ファンク、ソウル、ディスコミュージックを土台としたサウンドは、フィロソフィーのダンスの音楽を特徴づける要素として大きいですよね?

奥津 はい。それはずっとやり続けてきたことですし、どの曲にもそういうエッセンスが入っていると思います。

日向 始動したときはまだコンセプトが決まっていなくて、「いい楽曲をいい歌で届ける」というスタートだったんです。こういうジャンルと出会ったことによってフィロソフィーのダンスのカラーも生まれて、いろんな方々に知っていただけるきっかけになりました。

佐藤 「曲を知らなくてもいいから踊ってください」みたいなことを私たちはよく言うんです。そういう楽しみ方ができるのは、こういうジャンルの音楽の魅力だと思っています。

――昨年加入したおふたりは、フィロソフィーのダンスの音楽のどのようなところに魅力を感じていました?

木葭 バチバチにかっこいい曲と歌、そしてちょっとヘンテコなダンス(笑)。そこが他のアイドルとは違ういい味だと思っていました。加入する前から好きだったんです。

日向 初期の振り付けをお願いしていた方が、「このジャンルをアイドル界に浸透させるには?」と考えたそうなんですけど、「コミカルにしたほうが丁度いいだろうな」という結論に至ったとおっしゃっていました。後になって話していたことなので最初からそう思っていたのかはわからないですけど、きっちりやりすぎると親しみやすさがないから、あえてこういうダンスにしてみたということなんだと思います。

――ユーモラスな要素を入れつつも、「かっこいい」に着地する匙加減になっていますよね。

奥津 はい。「真面目にふざける」みたいな感じです。

香山 私も加入前からフィロソフィーのダンスの曲が大好きで、すごく聴いていたんです。ライブをメンバーも心から楽しんでいるのが伝わってきて、観ながら一緒に楽しんでいました。

奥津 決まったことを決まった通りにやるのも大事なんですけど、その場で感じたことをその場でちゃんと表現するのも大事なんですよね。それはいいライブに繋がる要素だと思っています。

アイドルの音楽はアイドルの売り場に置かれているというだけで、音楽自体はそれほど他と変わらないはずなんです(奥津マリリ)

――マリリさんは、もともとはシンガーソングライターですよね?

奥津 はい。一切踊ったことがなかったので、ダンスのことは何も知らなかったんです。でも、声や表情だけではなくて、全身で表現する楽しさをダンスを通じて知りました。全身全霊で伝えるのもアイドルのよさだと思っています。

――アイドルになる前は、アイドルミュージックに対する偏見はありました?

奥津 ありましたよ。偏見という感じではないんですけど、シンガーソングライターの前はバンドマンだったんです。ギターロックとか尖った音楽が好きだったので、「俺はロックだから、売れるために音楽をやってるんじゃない」みたいな強い思想を持っていた時期があって。間違ったロックの精神というか(笑)。斜に構えていた時代がありました。アイドルの音楽はアイドルの売り場に置かれているというだけで、音楽自体はそれほど他と変わらないはずなんです。音楽が好きなら、「アイドル」「バンド」「シンガーソングライター」というような売り場で判断するのではなく、音楽自体を聴いて向き合ってほしいなと思います。聴いてもらうことによって、アイドルの面白さも伝わるようなグループになりたいです。

――「アイドル」は特定のサウンドスタイルを表す言葉ではないから、自由さもありますよね。

奥津 そうですね。「クリエイターの方々がやりたいことをアイドルが具現化している」みたいな面もあるのかなと思います……そんなグループもいます(笑)。

――ハルさんも、もともとバンドをやっていたとか。

日向 はい。自分がアイドルになるとは思っていなかったですし、もうちょっと若かったらお誘いがあっても断っていたと思います。でも職を手にしたくて、音楽で生きていきたくて、歌う場所が欲しくて、「何かお仕事ください」とプロデューサーの加茂(啓太郎)さんにお話をしたときに、「今アイドルグループを作ろうと思ってるんだけど、オーディションを見にくる?」って言われたんです。

――アイドルになって気づいたことはあります?

日向 マリリの話の続きみたいにはなるんですが、アイドルを始めてから「歌が上手くてアイドルっぽくないね」って言われるようになって、そこに違和感を覚えています。アイドルはレベル分けの言葉でもないから、歌が上手いアイドルも、ダンスが上手いアイドルもたくさんいるんです。でも、「ちょっと技術が足りていないのがアイドル」みたいなイメージが世間にはあるみたいで、それが悔しいです。楽曲がすごく面白いグループもたくさんいるし、歌える人もたくさんいるから、そういう存在が日の目を見るきっかけにもなりたくて。「アイドルも上手いんだよ。それが当たり前なんだよ」になればいいなと思っていて、そのためにもアイドルの看板を背負ったままいろんな場に出て行きたいというのが、私がアイドルを続けている理由のひとつです。

奥津マリリ
佐藤まりあ
日向ハル
木葭のの
香山ななこ

「一人ひとりの声をどれだけ聴き分けられるか?」ということに、前の体制のときから力を入れています(日向ハル)

――今回のEPの1曲目“キュリアス・イン・ザ・モーニング”は、2020年からあった曲らしいですね。

日向 デモ曲が当時から存在していました。「そういえばあの曲、どうなりました? 耳から離れないんですよね」っていう話は今までも何回かしていて、「みんながそんなに忘れられないんだったら、出すのは今なんじゃないか?」ということになったんです。

――5人の歌声のコンビネーションが、とても気持ちいいです。

日向 歌にも5人それぞれのキャラクターがあるので。

――みなさん各々は、歌のどのような部分を担っていると思っていますか?

奥津 私だったら「セクシー」ですかね。

日向 私は「ゴリゴリのゴリ担当」と申しております(笑)。

佐藤 「どんな楽曲でも、かわいらしく歌うには?」をいつも研究しています。かっこいい楽曲でも自分のパートではキュートな部分が垣間見えるように歌いたいんです。

奥津 キュートな歌を歌うコツを教えてくださいよ、まりあさん。

佐藤 なんでしょう? まずは口角を上げて……かわいい表情で歌うことですかね? 「もうちょっと明るめに歌ってください」とレコーディングで言われるときって、大体口角が下がっていたりしますから。

木葭 私は曲によって変えています。かわいい曲はかわいらしく、大人っぽい曲は大人っぽくセクシーに。その中でも基本的にはかっこいい感じの声で歌うことが多いです。かっこいい歌声の人がもともと好きで、自分にもそういうのが合っているのかなと周りの反応からも感じます。

――ななこさんは、どうですか?

香山 かわいらしさとフレッシュさなのかなと思います。

佐藤 作り上げた私の「かわいい」に対して、正真正銘の「かわいい」ですね。「あどけなさ」は、私には無理があります。キャリアがもう10年以上なので(笑)。

――メンバー各々の多彩な歌声によって曲を表現できるのは、こういう編成の強みだと思います。たとえば“サンバーント・ロマンス”もまさに、そういう仕上がりですよね。

日向 ひとりで歌うのとは違う、いろんな声が出る楽しさがあると私も思っていて。フィロソフィーのダンスは「一人ひとりの声をどれだけ聴き分けられるか?」ということに、前の体制のときから力を入れているんです。全体の中での自分の立ち位置を考えるようにしているので、歌のパートリレーを楽しんでいただけたら嬉しいです。

奥津 レコーディングはメンバーそれぞれが順番にやっていくので、ディレクターさんともお話をしつつやっています。先に録ったメンバーの歌も聴きつつ、「こう来たから私はこうしよう」みたいに考えるリレーをしていますね。

ライブでは音源を超えてくるというか。その時の感情が歌に乗っているのが、フロアにいるお客さんにも伝わっていると思います(佐藤まりあ)

――“作り笑いをさせないで”は、胸に深く迫るものがあるバラードです。

奥津 今までずっと歌ってきたことで生まれた日向ハルの歌声の奥深さが、バラード曲としてすごく出ていると思います。今までもバラード曲はありますけど、より人間味が増しているというか。「この8年間ちゃんと歌を頑張ってきた人の歌だ」みたいなことを私は感じています。

――歌い上げることに酔いしれていないと言いますか。豊かな感情表現に歌唱力がきちんと繋がっているのがハルさんの「歌の上手さ」だと僕も思っています。

木葭 ハルちゃんの感情の込め方が私も好きなんです。一緒に歌っているとき、同じ演者だけど「ううっ……」ってなることがよくあって(笑)。おっしゃる通り、気持ちがこもった歌ですよね。私はかっこいい歌が好きだから………………ハルちゃん好き。

日向 ありがとう(笑)。“作り笑いをさせないで”は、フィロソフィーのダンスだからこそ歌える曲でもあったのかなと思います。今回のEPの幅も広げてくれました。いしわたり淳治さんが書いてくださった歌詞にも背中を押されて、感情移入して歌えたレコーディングでした。

奥津 ハルちゃんの歌は圧巻で、どなたが聴いても感動する大黒柱です。「続いて奥津も行かせていただきます!」という感じです(笑)。フィロソフィーのダンスは歌の選手層が厚いというか、聴いていただけたらどんな人も「このメンバーの声、好きだなあ」っていう好みのタイプが見つかるんじゃないかなと。

佐藤 しかも、ライブでは音源を超えてくるというか。その時の感情が歌に乗っているのが、フロアにいるお客さんにも伝わっているんじゃないかなと思います。

――今作にはORANGE RANGEのカバーの“上海ハニー”も収録されていますね。

日向 今年の夏フェスでたくさんやったんですけど、みなさんが手を振って踊ってくださったんです。新しい場でのライブで、とても心強い曲になっています。

――3月にリリースした曲のリミックス“熱風は流転する(WONK Remix)”に関しては、どのような印象を抱いてますか?

奥津 リミックスは曲の聞こえ方が変わりますね。味変して新たに楽しめる形にしていただけました。

――僕、この曲の途中でななこさんが言う《もう…油断してたでしょ?》が好きなんです。

香山 あそこは技のキメポイントなので(笑)。ライブでは、その土地の方言に変えたりもしています。

佐藤 私たちのライブの魅力は「決められたことがそのまま行われないこと」なので、もうすぐ始まるツアーでも「何が起こるかわからない」というサプライズを各地で起こしていきたいですね。

奥津 今回のツアーは、ライブに行くこと自体が初めての方でも気軽に楽しめるというのがコンセプトです。「初めての人、チャンスですよ!」と、この場を借りて言わせてください(笑)。

――(笑)。音楽を全力で表現する喜びを感じながら活動できていますよね?

日向 本当にそうですね。私もこのジャンルに出会って、自分が変わることができてよかったと感じているんです。もっと多くのみなさんに知っていただくべきグループだなと自信を持ちながら活動しているので、さらに届けていきたいです。

奥津 音楽が好きで、歌うことが好きで活動している5人なので、一度聴いていただけたら楽曲と歌への愛が伝わるじゃないかなと思っています。最近、アイドル畑以外のフェスとかにも呼んでいただける機会があって、初めてアイドルのライブを観る方々も最後のほうでは一緒に踊ってくださったんです。まだまだお会いできていないみなさんがたくさんいらっしゃることを知りました。アイドルだからって閉じこもるのではなく、いろんな場所に出て行きながらみなさんに愛を届けていきたいですね。

“上海ハニー/ORANGE RANGE” coverd by フィロソフィーのダンス Image Video in Okinawa


“キュリアス・イン・ザ・モーニング” MV


●リリース情報

2nd EP『One Summer Dream』

初回生産限定盤
通常盤
発売中

●ツアー情報

「Greatest 5 Party 2023」


提供:株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部