レディオヘッド、NIN、スマパン、パール・ジャム、ウィルコ、R.E.M.、ビースティ・ボーイズなど、ある世代の人にとってはたまらないサントラの超高評価TVシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』。シーズン3が日本でも明日配信開始。

レディオヘッド、NIN、スマパン、パール・ジャム、ウィルコ、R.E.M.、ビースティ・ボーイズなど、ある世代の人にとってはたまらないサントラの超高評価TVシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』。シーズン3が日本でも明日配信開始。

『一流シェフのファミリーレストラン』(原題:The Bear )、観てますか?

日本でもシーズン3の配信が、明日7月17日からディズニープラスで開始。

シーズン1は、すでにエミー賞でその年最多の10部門受賞。17日に発表される今年のエミー賞ノミネーションでもシーズン2がシーズン1の記録を更新すると期待されている。超高評価のシリーズだ。

物語は、主人公の超一流シェフが、精神的な挫折を味わい、地元のシカゴに戻って家族経営していたサンドイッチ屋さんを立て直す。その過程で壊れた自分の心と対峙するというもの。

設定から何から、個人的にもツボだらけなのだけど、そのうちのひとつが、シリーズで使われる音楽だ。何しろシカゴが舞台なので、ウィルコから、スマッシング・パンプキンズメイヴィス・ステイプルズなどが使われているし、さらには、90年代音楽が中心なのだ。パール・ジャムに、ナイン・インチ・ネイルズに、ウィーザー

中でも、最もハマっていて超話題となったのは、R.E.M.の”Strange Currencies”で、シーズン2のエピソード2で初めて使われて以来、番組の半テーマ曲のように何回も使われている。しかも、1994年のオリジナルバージョンから、2019年リミックス、さらに、なんとこの番組で初披露されたデモ版などまで流れる。番組の思いとバンドへの敬愛の念が重なるのだ。

なので、選曲した人のインタビューをしたいと思ったほどだけど、調べてみたらなんと番組のクリエイターのクリスファー・ストーラーが自ら曲を選んでいた。プレイリストは先に作ってあったそうで、インタビューによると、共同エグゼクティブプロデューサーのジョッシュ・シーニアも長年のR.E.M.ファンであると語っていたので、やはり、という感じ。
https://uproxx.com/indie/the-bear-season-two-soundtrack-christopher-storer-josh-senior-interview/

R.E.M.はこれを受けて、番組の場面を挿入したMVを発表。

さらに3バージョンをシングルとして発表した。
https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_l_DicjGc6UxZ3kn-DUIDqOi-I3niZHReg&si=qsbsHy0bzfctcQn_

マイケル・スタイプもシーズン2が放送される前に、番組についてコメントしている。

「『一流シェフ〜』は、文句なしに僕が去年一番好きだった番組だ(シーズン1について語ってる)。だからシーズン2を見るのが待ちきれない。しかも、R.E.M.の曲があの世界観の中で使われるなんて、そんな素敵なこともない」

クリエイターはR.E.M.の選曲について上の記事で、この曲が番組のテーマ曲的役割を果たしたと語っている。

「テーマとしては、この曲がぴったりだったんだ。この番組の全てのキャラクターを象徴していると思ったから。カーミー(ジェレミー・ホワイト/主人公のシェフ)とクレア(モリー・ゴードン/カーミーの幼なじみで恋人?!)の関係を見ても、シドニー(アイオウ・エディバリー)と父親の関係を見ても、リッチーとティファニー、ティナと友達の関係を見ても、すべてに当てはまる」

また、ジョッシュは、

「シーズン2のために2人でプレイリストを作ったんだ。今回は、ラブストーリーがあると思った時に、僕もクリストファーも、R.E.M.が大大大大好きで、しかも2人ともとりわけ”Strange Currencies”が大好きだったからこの曲はプレイリストの筆頭にあったんだよね。

この曲は、少なくとも僕にとっては、なんだって可能に思えて、でも同時に何もか不可能に思えた16歳の自分を思い出す。というのも、この曲の歌詞は、失敗し、そしてもう一度挑戦することについてだから。もちろん聴いた人によってその解釈は違うと思うけど。でも何かが上手くいかない可能性を感じる曲だと思うんだ。

それにスコット・リットによるリミックスが、スタイプのボーカルをさらに際立たせてくれたと思うんだ」

クリストファーは、

「実は僕は、いわゆるR.E.M.の頂点である『オートマティック・フォー・ザ・ピープル』でライブを観るにはまだ若すぎたんだ(10歳くらい)。だから、最初に『Up』が大好きになって、それから『New Adventures in Hi-Fi』、『Monster』が好きで、それで遡って言ったら、『マジかよ! どんどん最高じゃないか』って気付いて、『Monster』の”Crush with Eyeliner”も大好きだったんだ。でも、”Strange Currencies”は僕の心の永遠に刻まれている。この曲には上手く指摘できないけど、どこか傷心だからね」

正に。この番組の魅力と言ったら本当に数えきれないほどあって、例えば、舞台がシカゴであること、シカゴのレストランであること、また主人公がジェームズ・ビアード賞を受賞していること、レストラン業界のセレブシェフが次々に登場することなど、普段から自分が興味大なことが凝縮されているのだけど、何が最大の魅力かと言ったら、レストラン業界の内側が見られるということではなくて、キャラクター全員の心がどこか壊れているということ。そこに思い切り惹かれてしまうのだ。

パール・ジャムも、エディ・ヴェダーのソロ曲も使われているけど、エディがかつて「心が壊れた人は、それを治せばいい。俺は、心が壊れていない人の方が心配だ」と言っていて名言だと思ったけど、心が壊れている人たちがそれをなんとか治そうと葛藤する物語には、なぜか90年代音楽がしっくりくる。だから、この番組には、90年代音楽が自然と多く使われているのだと思う。巷では、「オヤジロック」呼ばわりもされても関係ない(笑)。

すでに、シーズン2まで観ている人は、シーズン3の初回のNINの”Together”の使い方がまず最高。

そして、エピソード2のレディオヘッド”(Nice Dream)”

さらにエピソード6のビースティ・ボーイズ”Sabotage”

そして”オヤジ”だらけにならないように、テイラー・スウィフトの”Long Live (Taylor’s Version)”をさらっと入れる、その入れ方も意味が成立していてうまいのだ。

シーズン3をスマパンの”Disarm”で締めくくるのも良い。

シーズン3のプレイリストはこちら。


シーズン3で使われている曲のリストは以下の通り。
https://deadline.com/feature/the-bear-season-3-soundtrack-1235985590/

■Episode 1 – “Tomorrow”
“Together” by Nine Inch Nails
Score by Trent Reznor and Atticus Ross

■Episode 2 – “Next”
“Save It for Later” by Eddie Vedder
“(Nice Dream)” by Radiohead

■Episode 3 – “Doors
(None)

■Episode 4 – “Violet”
“Pearly-Dewdrops’ Drops” by Cocteau Twins
‘Spinning Away’ by Brian Eno & John Cale
“Long Live’ by Taylor Swift
“Getchoo” by Weezer

■Episode 5 – “Children”
“Dream Little One, Dream” by Walter Schumann & Charles Laughton
“Purple Heather (Live at the Troubadour)”by Van Morrison
“Mixed Emotions” by The Rolling Stones

■Episode 6 – “Napkins”
“Get Down On It” by Kool and the Gang
“The Start of Things” by Trent Reznor & Atticus Ross
“The Morning Fog” by Kate Bush
“Let Whip It” by Dazz Band
“Sabotage” by Beastie Boys
“Got This Happy Feeling” by Ghetto Brothers

■Episode 7 – “Legacy”
“No Machine” by Adrianne Lenker
“Save It For Later” by The (English) Beat
“Fight For Your Right” by The Beastie Boys
“Stephanie” by Lindsey Buckingham
“Up on the Roof” by Carole King

■Episode 8 – “Ice Chips”
“New Noise” by Refused
“13 Ghosts II” by Nine Inch Nails
“Baby I Love You” by The Ronettes

■Episode 9 – “Apologies
“Are You Looking Up” by Mk.gee
“Secret Love” by Stevie Nicks
“Blowing Kisses” by Jennifer Castle
“A Murder of One” by Counting Crows

■Episode 10 – “Forever”
“Together” by Nine Inch Nails
“In the Garage” by Weezer
“The Big Country” by Talking Heads
“Joy” by The Sundays
“Within’ Your Reach” by The Replacements
“Can You Hear Me” by David Bowie
“Diamond Diary” by Tangerine Dream
“Just One More Day” by Otis Redding
“Big White Cloud” by John Cale
“Laid” by James
“Disarm” by Smashing Pumpkins

ちなみに、RottenTomatoesによるシーズン1の評価は100%、シーズン2は99%、シーズン3は88%と。最初の2つのシーズンに比べたら評価は少し下がるけど、それでも高評価のまま。

ただし、ここだけの話。個人的には、シーズン3は、実際初めてちょっと苛立つような内容だった。というのも、脚本に意味不明な箇所が多くて、物語が前に進んでいかない気がしたから。番組の好きだった部分が空回りしているように思えたのだ。観る人によってそれぞれだとは思うけど。そんな中で、唯一音楽だけはブレてなくて、引き続き高レベルなままだと思った。

主人公のジェレミー・アレン・ホワイトはこの番組のおかげで現在最も人気のある俳優の1人。なんとロザリアと付き合ってる。また、ブルース・スプリングスティーンの伝記映画が作られるのだけど、ブルースを彼が演じることになっている。自分で歌も歌うと言っている。ディランは、ティモシー・シャラメで、ボスは、ジェレミー。2人とも、今最も旬な俳優を選んでるところも、さすがだ。

明日発表されるエミー賞も要注目だ。



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