レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。

レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - Kevin Mazur/Getty Images for Roc NationKevin Mazur/Getty Images for Roc Nation

去年はケンドリック・ラマーのパフォーマンスが史上最高の視聴数を記録した、スーパーボウルのハーフタイムショー。

今年、その世界最高峰とも言えるステージに立ったのは、サンフランシスコ、サンタクララのリーバイス・スタジアムに登場したバッド・バニーだった。先週、スペイン語アルバムとして史上初のグラミー賞〈最優秀アルバム〉を受賞したばかりの彼は、スペイン語のみのパフォーマンスでハーフタイムショーを行うという、連続する快挙を成し遂げた。

米大統領は彼を「最悪の選択」と評したが、バッド・バニーはプエルトリコの豊かなカルチャーと誇りをスタジアム全体に提示。ライブの終盤には、巨大スクリーンに〈憎しみよりも強いもの、それは愛〉というメッセージを掲げ、「アメリカに祝福あれ」と語りかける。さらに、「僕らは全員アメリカ人なんだ」と書かれたアメリカンフットボールをタッチダウンしてショーを締めくくった。その内容は、文字通り愛と団結を訴えるものだった。

移民政策をめぐりICEによる強硬な執行が続き、国内が緊張に包まれるこの時代にあって、それは分断とは正反対の、きわめて明確なメッセージを投げかける瞬間でもあった。
「コミュニティ、文化、そして共有される体験を、世界規模で祝福する稀有な瞬間となった」。

ライブ映像はこちら。

セットリストはこちら。
レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。

また、60回記念となる試合の幕開けをしたのはカリフォルニア出身のグリーン・デイだった。彼らのパワフルなパフォーマンスも公開されている。

セットリストは
1.Good Riddance (Time of Your Life)
2.Holiday
3.Boulevard of Broken Dreams
4.American Idiot

グリーン・デイは、この日60回を記念してこれまでの歴代のMVPを讃える場面で登場したため、明かな政治的メッセージを掲げることはなかった。しかし、同じ週に行われたスーパーボウルの前夜祭では、大統領の名前などを出して、明確にICEなども批判していた。

チャーリー・プースの国歌斉唱は、ドリーミーかつソウルフル。

ブランディ・カーライルの“America the Beautiful”

ココ・ジョーンズによる“Lift Every Voice and Sing”

今回のハーフタイムショーが、いつも以上の意味を帯びたのは、バッド・バニーがすべてスペイン語でライブを行うアーティストであるという点にある。さらに彼は、先週のグラミー賞で「ICE OUT」と発言したことでも話題となったが、現在のアメリカの移民政策に明確に反対の立場を示しており、自身の観客がICEに拘束されることを恐れて、アメリカ本土ではツアーを行わないと語ってきた。

加えて、日頃から米大統領を批判してきたグリーン・デイが、ハーフタイムショーの幕開けでパフォーマンスを行うと発表されたこともあり、米大統領はバッド・バニーとグリーン・デイをまとめて「最悪の選択」と評していた。

これに反発する形で、キッド・ロックは同時間帯に『All American HalfTime Show』と名付けたイベントを開催すると発表。その理由として挙げたのが、バッド・バニーは「アメリカ的ではない」というものだった。

しかし、この主張に対しては多くの反論が寄せられた。バッド・バニーはアメリカ自治領であるプエルトリコ出身で、れっきとしたアメリカ人である。さらに言えば、これまでのハーフタイムショーには、ローリング・ストーンズ、U2、コールドプレイなど、アメリカ国籍を持たないアーティストが数え切れないほど出演してきた。

つまり、バッド・バニーへの反発は、単なる音楽的嗜好の問題ではなく、現在のアメリカの移民政策とも地続きの、人種差別的な感情の象徴ではないか──そう指摘する声が広がったのだ。

レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - Kevin Mazur/Getty Images for Roc NationKevin Mazur/Getty Images for Roc Nation
こうした反発について、NFLのコミッショナーであるロジャー・グッデルは、「グラミー賞の結果を見ても分かるように、彼は世界でも屈指のアーティストのひとりだ」とコメントしている。

「それが、彼を選んだ理由のひとつだった。もうひとつの理由は、彼が自分の立っている“プラットフォーム”を理解していたことだ。このプラットフォームは、人々を分断するのではなく、結びつけるためのものだということ。そして、創造性や才能を通じて人々をひとつにし、この瞬間をそのために使うことができると理解していた」

また、昨年のケンドリック・ラマーによるハーフタイムショーが史上最高の視聴者数を記録したことを踏まえれば、世界最大級のストリーミング数を誇るバッド・バニーを起用するのは自然な流れでもある。さらに言えば、NFLは、今後アメリカ国内の視聴者のマジョリティがヒスパニック系の若者へと移行していくという現実と、その先の未来を見据えた判断だった、という見方もある。

バッド・バニーは、ハーフタイムショー直前の記者会見で、「言葉が分からなくても、踊り方が分かってくれればいい」と語り、言語を超えて音楽で人々を結びつける意思を明確にしていた。

このハーフタイムショーは、彼の言葉通り、純粋に音楽としても楽しめる内容だった。しかし、その意味を読み解こうとすると、そこには多くのメッセージが託されている。

すべてを書き切ることはできないが、その一部を挙げると――

⚫︎スクリーンに最初に映し出された背番号「64」と「OCASIO」の意味(※当初の解釈が間違っていて、本人がコメントを発表したので訂正)
「1964年は、叔父のクティートが生まれた年です。彼は母の兄でした。僕がNFLについて知っているわずかな知識は、すべて彼のおかげです。彼は17歳で働くためにアメリカへ渡り、プエルトリコに住むことは二度とありませんでしたが、毎年1月下旬から2月初めにかけて必ず帰ってきて、僕たちの家に滞在していました。それはちょうどNFLのポストシーズンの真っただ中で、僕はいつも彼と一緒に試合を観ていました。彼はサンフランシスコ・49ersの熱烈なファンでした。そのチームの本拠地スタジアムこそ、僕がパフォーマンスを行ったスーパーボウル60の開催地です。
叔父は2年前、2024年のスーパーボウルで49ersがカンザスシティに敗れた直後に亡くなりました。僕はいつか叔父をスーパーボウルに連れて行くことをずっと夢見ていましたが、それは叶いませんでした。彼は何の前触れもなく、突然この世を去ってしまったのです。

だから僕は、スーパーボウルのハーフタイムショーで、彼をシャツの上に刻むことにしました。母と同じ、そして叔父の姓でもある『OCASIO』、そして彼の生まれ年である『64』を。パフォーマンスが始まる前に、僕はそれを叔父に捧げました。彼はきっと見ていて、そこにいて、甥である私を誇りに思ってくれたと信じています。

あとは、49ersが再びスーパーボウルを制する日を待つだけです」

レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - pic by Eric Rojas pic by Eric Rojas
●サトウキビ畑
フィールド全体は、プエルトリコの田園風景に着想を得た没入型の空間として構築された。

“Titi Me Preguntó”のパフォーマンスについて、プレスリリースは次のように説明している。
「ラテン系労働、受け継がれてきた文化、そして彼以前に土台を築いてきた世代へのオマージュ。ショーが進むにつれ、フィールドにはラテン系コミュニティの日常風景が次々と立ち上がっていく。ネイルサロン、タコス屋、理髪店、オールド・サンフアンを想起させるピラグア(かき氷)の屋台、さらにはボクサーのザンダー・ザヤスとエミリアーノ・バルガスがトレーニングする姿も描かれる。実際に人々が生きる環境を通して、小さな商いと労働の世界が浮かび上がり、壮大なスペクタクルは現実の体験と結びついていった」

レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - Kevin Mazur/Getty Images for Roc NationKevin Mazur/Getty Images for Roc Nation
●ラ・カシータ
これは、プエルトリコで行われたレジデンシーライブでも登場した、典型的なプエルトリコの家を象徴するセットだ。とりわけ、ガレージや玄関先で開かれるホームパーティの伝統である〈パルティ・デ・マルケシーナ〉を体現している。

この空間には、アリックス・アール、カーディ・B、デイヴ・グラットマン、KAROL G、ジェシカ・アルバ、ペドロ・パスカル、ロナルド・アクーニャ・ジュニア、ヤング・ミコらが姿を見せた。

それは単なるゲスト出演ではなく、都市や国境を越えて、アーティスト、アスリート、文化的アイコンたちを迎え入れる〈集いの場〉としての家――コミュニティの中心を象徴する演出だった。

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●レディー・ガガがサプライズで登場
なんと、“Die With A Smile”をレディー・ガガがパフォーマンス。ファンの間では、カーディ・Bと“I Like It”をコラボするのでは、という予想が強かっただけに、しかも彼女もステージ上にいたのに、この展開には誰もが驚かされた。

個人的には、なぜガガだったのかは、正直なところ腑に落ちない部分もある。彼女はすでにハーフタイムショーへの出演経験があり、サプライズとしての特別感はやや薄い。これまでコラボしたことがなく、かつプエルトリコ系ではないアーティストをあえて起用することで、「団結」というテーマをより強調しようとしたのだろうか――そんな見方も浮かぶが、意図は読み切れないままだ。
レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - pic by Edwin Rodriguez pic by Edwin Rodriguez
ちなみにここで行われた結婚式は本物だったそう。
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●“NUEVAYo”でトニータがゲスト出演
“NUEVAYo”では、トニータがゲストとして登場した。トニータは、ブルックリンにあるCaribbean Social Clubの女性オーナーとして知られる存在。同店は1970年にオープンし、ブルックリンにおけるプエルトリコカルチャーの重要な拠点のひとつとされてきた。なお、トニータの名前は楽曲中のリリックにも登場する。

●子供の登場
5歳の子供にグラミー賞を手渡すシーンも印象的だった。この子供は、先日バッド・バニーがグラミー賞を受賞する瞬間をテレビで目撃していたとされる。ショーの中では、夢や可能性を象徴する存在として位置づけられていた。

●“Lo Que Le Pasó A Hawaii”
この楽曲では、リッキー・マーティンがパフォーマンスを披露した。
レディー・ガガもサプライズで登場。バッド・バニーが「憎しみより愛」を掲げたスーパーボウルのハーフタイムショー、映像公開。米大統領には「最悪の選択」と言われたグリーン・デイや、チャーリー・プースなどの映像も。 - pic by Edwin Rodriguezpic by Edwin Rodriguez
彼が腰掛けていた椅子は、アルバムのジャケットをモチーフにしたもので、ラテン系コミュニティの間で広く共有されてきたそのイメージは、「存在」「記憶」「つながり」を象徴。
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●“El Apagón”における電柱と停電
“El Apagón”(“エル・アパゴン”)とは、スペイン語で「停電」を意味する言葉だ。バッド・バニーはこの楽曲で、プエルトリコで現実に繰り返されてきた電力インフラの崩壊を出発点に、それを比喩として用いながら、植民地主義的な構造の中で放置され、声や存在を不可視化されてきた人々の現実を描き出している。

また、この曲のミュージックビデオでは、米国資本によるジェントリフィケーションが、島の土地や生活、文化を侵食していく状況が明確に告発されている。

つまり“El Apagón”とは、単なるインフラの停止を指す言葉ではない。奪われてきた尊厳、そしてそれに抗う怒りと抵抗――その両方を指し示す言葉なのだ。

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●“DtMF”
バッド・バニーの近年の作品に繰り返し登場するカエルは、サポ・コンチョ(プエルトリコヒキガエル)と呼ばれる、プエルトリコ固有の絶滅危惧種だ。バッド・バニーはこの存在を、文化的レジリエンス(回復力)や環境意識、そしてプエルトリコのアイデンティティを象徴するモチーフとして用いている。

彼のビジュアルやプロジェクトに現れる、このアニメーション化されたキャラクターは、ジェントリフィケーションによって変質していく島の現実や、生態系を守る必要性に光を当てる存在でもある。愛らしい造形とは裏腹に、そこには失われつつあるものへの警鐘と、文化と土地を守ろうとする意志が刻まれている。
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またこの日のバッド・バニーの衣装は全てスペインのアパレルメーカーZaraがデザイン。
スニーカーはアディダス。

ガガのドレスは、ブルックリンのドミニカ系アメリカ人によるブランドLuarがデザイン。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
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