この夏から秋にかけて立て続けにリリースされた“Stand By Me”、“YOUTH OF EDGE”、そして会場限定シングル『SALTY』に収録された“チョコミンツ”は、恋愛にまつわる代表曲が多いヤユヨには少し珍しく、全曲が自分自身を奮い立たせたり、目標に向かって走る人の背中を押すようなメッセージソングとなっている。去年の春に大学を卒業し、より一層音楽に専念しているぶん、自分と向き合う時間が増えたタイミングでこういった楽曲が生まれてくるのは、とても説得力がある。ドラムのすーちゃん脱退という転機を経て、「悲しませてしまったリスナーに新しいヤユヨを見てほしい」というポジティブな意気込みで制作されたこの3曲を軸に、今のバンドの状況を3人それぞれの視点で語ってもらった。
また、ヤユヨのインタビューは10月30日(月)発売の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号にも掲載する。誌面では、楽曲に込めた思いについてより深く語ってもらっているので、あわせてチェックしてほしい。
インタビュー=有本早季
(ライブ中に)期待していた反応がなかったり、これまでほかのバンドがぶつかってきた問題に今ようやくぶつかった(はな)
――5月から7月にかけてのツアーや夏フェス出演など、ようやくコロナを気にせずライブ三昧の日々なのかなと思いますが、ライブの手応えはいかがですか?リコ(Vo・G)「ずっとコロナ禍でしかライブをしたことがなかったので、自分たちがお客さんとしてライブハウスに通ってたときのようなライブができないことに、ちょっとモヤッとする気持ちもあったけど、それはそれですごく楽しくて。声とかリアクションがなくても、身振りとか表情で伝わってくるものもあったし、SNSがあったから、自分たちの音楽に対しての書き込みを見ながら、あー自分たちのライブってこういうふうに見えてるんやっていうリアクションを楽しめていました。でも、コロナ禍の制限がなくなったことで、自分たちがライブハウスで見ていたものが実際に目の前に現れて、テンションがぶっ飛びました。『これこれ! これやりたかったのよ!』みたいな。コールアンドレスポンスの曲を実現させることができたりとか、MCや曲の合間でイエーイ!みたいなリアクションもすごく新鮮だったし。自分たちにとってはすごく新しいライブの形だったんで、声出しができるようになったりとか、お客さんとコミュニケーション取れるようになった状況を使って、 いっぱい人を巻き込んでもっといいライブをできるようになったらいいなって思いました」
――コロナ禍のライブが逆に当たり前だったということですよね。
リコ「(コロナ禍のライブに)慣れてるし、コロナ禍の前から活動してたバンドさんたちよりかは全然、それが普通だったっていう感じなので、逆に今のほうが新しさとか新鮮な感じはあります」
――はなさんはいかがですか?
はな(B・Cho)「コロナ禍で、声が出せないとかのルールが決められている中でのライブだったので、自分たちの全力のパフォーマンスを届けてもリアクションが少ない状況だったんですけど、それが今解禁されてきて、リアルな反応というか、期待していた反応がなかったり、あまり受けがよくない状況だったり、これまでほかのバンドさんがぶつかってきた問題に今ようやくぶつかったのかなって。 ライブで反応ができる状況の中で、どれだけ自分たちがそういうお客さんの反応を引き出せるかっていうところを課題に頑張っていきたいなって思ってます」
――ここで反応来るんだ、みたいな気づきもありそうですね。ぺっぺさんはいかがですか?
ぺっぺ(G・Cho)「そうですね、課題が全然違うなっていうのがあって。それこそ、コロナ禍のときはお客さんがいないし、オンラインでライブをするとカメラマンさんとかスタッフの方はいらっしゃるけど、お客さんっていう対象ではなくて。でも、カメラマンさんがお客さんやと思ってパフォーマンスをするし、仮に誰もフロアにいなくても、いると思ってパフォーマンスをしてきたし、見えている前提でやってきたからこそ、自分たちの表現力とかパフォーマンス力のいろんな引き出しが増えたなって思う。一方で、コロナ禍の制限が解除されてお客さんを目の前にすると、それこそはなが言ったみたいなリアルな反応がちゃんとあって、 面白くなかったら笑ってもらえないし、面白かったら笑ってくれたり。MCひとつでもそういうことが起きるし、自分にとってお客さんが目の前にいるっていうのはいちばん嬉しい状態なのは変わりないけど、 最初はリアクションもらえるだけですごく嬉しかったのが、ライブにお客さんがいるのが当たり前になってくると、それはそれで新しく課題が増えてきて。でも、その両方を体験できてるっていうのはバンドにとっていい経験になってるし、何を伝えるかとか、どうやって伝えるかっていうのはもっと考えてやっていきたいです」
(メンバー脱退の)発表によって、応援してくださってる方に悲しい思いをさせてしまって、申し訳ないなっていう気持ちになったので、頑張らなくちゃいけないなって(リコ)
――7月にはドラムのすーちゃんさんの脱退の発表もありました。そこに対しての率直な思いとか、3人体制での活動についてもお伺いできますか?リコ「発表は7月でしたけど、もう決まってたことだったので、ツアーをやりながら少しずつ3人でやっていく心の準備をしていました。うーん、やっぱり、何かが足りないぶん、3人で補っていかなくちゃいけないから、たくさん話す機会だったりとか、それぞれ自分自身と向き合う時間も増えたし。その発表によって、お客さんとか応援してくださってる方に悲しい思いをさせてしまったなっていうのは、 SNSや発表したときの大阪のライブでの反応だったりですごく感じて、申し訳ないなっていう気持ちになったので、悲しい思いをさせないように頑張らなくちゃいけないなってすごく思いました。でも、だからといって、負の感情をずっと引きずってしまうより、新しいタイアップ曲の“Stand By Me”だったり、“YOUTH OF EDGE”だったり、『SALTY』っていう作品を作ることで、自分たちのリスタートというか、前向きな気持ちをもっともっと表現して、3人でも力強く、今までとは形態は違うけれども新しいヤユヨとして頑張っていくよっていう、前を向いている自分たちもちゃんと見せたかったので。うーん、スタートラインに今立ってるっていう感じはします……難しいですね。負の感情で進んでるっていうことではないです。しっかり前を向いて、前に前に進んでいきたいなって気持ちのほうが強いです」
――3人の関係性や役割の変化とかはありますか?
ぺっぺ「役割は変わってないと思いますね。自分の役割は、ドラムのすーちゃんが抜けたこと自体では、正直あんまり変わってないというか。やらないといけないこととか、自分たちがやろうとしてることがそれによって変わるわけではないので。 抜けたからと言って、それこそマイナスに走るとか絶対にあり得ないし、目標が変わるわけでもないから。やってることはすーちゃんがいてもいなくても一緒やし、自分たちがやりたいことは変わってないっていうのが大前提にあるので、 自分たち3人の役割もそこまで何か置き換わってはないし、むしろ3人でよりできることを増やす、もっとできることの幅を広げていくっていう発想が持てたっていうのは1個ありますね」
――はなさんはリズム隊として戸惑いも大きかったのかなと思うのですが。
はな「そうですね。誰かが抜けるっていう状況では、選択肢として、バンドを続けるか、そもそもバンドがなくなるかっていうところだと思うんですけど、バンドを続けることを選ぶことができたので、そこはまず前向きなポイントとして捉えてます。で、続ける中で、 ひとつマイナスな情報を与えてしまったぶん、どんどんリリースしていったり、プラスのことを届けることができて、メンバーや支えてくれる人のおかげで、今頑張って走れてるなって感じてます。やっぱりドラムが辞めてしまうっていうことで、ライブをやるためにはサポートの人の力がどうしても必要になってくるので、そのサポートの人との連携だったりは、同じメンバーではないので、関わり方を気をつけたり、気にすることっていうのは増えたんですけど、ライブができる幸せ、活動ができてることは当たり前じゃないと感じて、バンドをより一層頑張っていきたいと思いました」
バンド始めてから去年一昨年ぐらいまでの作品には恋愛詞が割合的に多かったんですけど、大学を卒業してから書かなくなってきた(ぺっぺ)
――今回の新曲3曲から、その前向きな気持ちはすごく伝わってきました。具体的に曲について訊いていきたいのですが、 ミニアルバム『SPIRAL』からシンセのアレンジにもチャレンジしていて、もうすっかり馴染んできた感じがするんですけれども、ヤユヨのひとつの武器としてバンドに取り入れていってるという感覚ですか?ぺっぺ「『SPIRAL』以降は、誰が聴いてもわかる通りキーボードも増えたし、実際ライブでもキーボードや機材が増えたし。 ずっと、ギター、ベース、ドラムっていうシンプルなバンドスタイルでやってきてはいたけど、それに固執していたわけではなかったので、それは逆にキーボードとかシンセ系を入れ始めてからも、別にシンセに固執してるわけではなくて、あくまで1曲1曲、この歌がいちばん最善の形になる、いちばん自分がいいと思うしっくりくるものにするために、今回はシンセを入れるべきなのか、ギター1本で表現するのかとか、あくまでそこに私は重点を置いているので。これから先もずっとシンセとかを入れ続けるってことではないし、ヤユヨっていうイメージを作り上げるもののひとつとして、もっと自分の技術を磨いていけたらいいなと思っています」
――『SPIRAL』はその変化を新鮮に感じましたが、今作ではあくまで楽器のパートのひとつとして音に溶け込んでいると感じました。“Stand By Me”は社会人になったからこそ生まれた歌詞なのかなと思いましたが、逆に社会人になって書けなくなったテーマはありますか?
ぺっぺ「私的には恋愛詞っていうモードでは今ないかもしれないです。バンド始めてから去年一昨年ぐらいまでの作品には恋愛詞が割合的に多かったんですけど。でも、大学を卒業してから書かなくなってきました」
――社会人ならではの経験を書きたい思いが強くなったのか、それとも恋愛をモチーフにすることと距離ができたのでしょうか?
ぺっぺ「距離ができたっていうのが近いかなと思ってて。学生時代って、嫌でも人と会うことが多かったし、友達とそこまで仲良くなくても世間話したりして、大体そういう話題って恋愛やったり、バイト先でもそういう話とか普通にあったし、耳にする機会が多かった。私は恋愛詞を書くときは想像で書くタイプだったんで、そういう話を基に書いたりしてたんですけど。社会人になると、私友達いないんで(笑)、人とあまり会わないんですよね。恋愛の話を耳にすることがまずなくなったっていうのも大きいし、音楽1本になったので、音楽をしている自分と向き合う時間が増えましたね」
――リコさんは歌詞を書くうえで変化はありましたか?
リコ「私は恋愛詞も全然書き続けていたなとは思うんですけど、一方的な自分の思いっていうよりかは、もうちょっとスケールを大きく、視野を広く見たいなって思っていて。自分の一方通行な思いや、ただ恋っていうだけじゃなくって、もうちょっとスケールの大きい愛っていう部分に着目したいって気持ちになっています。恋っていうのはよく知ってるんですけど、愛ってなんなんだろうみたいな、おまえは一体なんなんだってぐるぐる考えていた時期もありました。でも今年に入ってからは、やっぱり自分たちの音楽をやる環境が変わったし、メンバーの脱退もあったりして、そこで何か曲を作ろうって思ったときに、恋愛の歌を書こうっていう気持ちには正直ならなかったので、“チョコミンツ”に関しては、恋愛のモードっていうよりかは、今の自分自身を見つめ直して、今の自分で音楽とどう向き合っていくかというか、『自分対何か』っていうテーマになりました」
ほかの人の自分は持ってないところを見て、すごくいいなって思ったときに、自分に取り入れようっていうよりかは、そういう相手と一緒にいたいなって思う(リコ)
――これまでのお話を聞くと、“Stand By Me”や、“YOUTH OF EDGE”のような応援歌が生まれたのは自然な流れだったのだなと思います。“YOUTH OF EDGE”のようなメッセージソングを歌うときと、恋愛ソングを歌うときで、意図的に変えている部分や意識していることはありますか?リコ「恋愛ソングと応援歌っていうよりかは、その曲ごとに変えるように心がけてはいて。“YOUTH OF EDGE”のレコーディングのときは、青春のはつらつとした明るい感じと壮大なイメージだったり、ロックな感じもあるけど王道なJ-POP感もある曲だったので、どうしたらいいんだろうって考えてて。こういう楽曲で思い出されるアーティストさんって、いきものがかりさんとか、緑黄色社会さんだったりとかかなと思って、お二方みたいな、上手で、芯があって、抑揚もあって、きれいに歌い上げるみたいな感じで最初は歌っていたんですけど。ぺっぺと話し合う中で、そういうイメージっていうよりかは、『YOUTH』ってタイトルがついてるし、この曲自体が高校生のダンスの大会の応援曲でもあったし、若者目線の楽曲だからもっと若さっていうのを出していってもいいんじゃないかって。若者が持っている無敵感みたいなものをイメージしながら歌おうっていうことになって。ちょっとアイドルっぽいというか、それくらい大袈裟に今までの歌い方とガラッと変えて、若者感を出すことをすごく意識しながら歌いましたね。だから、レコーディングし終わったあとの音源を聴いたときに、自分の声じゃないみたいというか。自分の声ではあるけど、 語尾のはめ方だったりとか、抑揚のつけ方とかがやっぱいつもとは違うなって思いました。でも、曲の壮大さとのギャップが逆にいいなと思って、いい挑戦ができたなっていう感触はありました」
――この曲に限らずですが、ヤユヨからは「自分と他人は比べない」というような芯の強さを感じていて。特にリコさんのフロントマンとしての立ち振る舞いからかっこいい女性像みたいなものを個人的に感じてるんですけど、元からそういうタイプの人なんですか?
リコ「えー、比べてるのかな? いや、比べてないかもしれないです。ほかの人の自分は持ってないところを見て、すごくいいなって思ったときに、自分に取り入れようっていうよりかは、そういう相手と一緒にいたいなって思う。そういう自分になろうっていうよりかは、そういう相手をすごいなって思いながら、一緒にいさせてもらいたいって気持ちで過ごしてきたかもしれないですね。友達とか恋愛とかでも、そこで自分を変えようとか、比べようっていうよりかは、それはそれ、これはこれみたいなのが意識として結構強いかもしれないです。でもやっぱ社会人になって、それじゃいけないときもあるなって。それはそれ、これはこれで行くっていうよりかは、自分に足りないものを相手から盗むことで、より自分をよくしていくことも大切なんだなって思ったので、そこはもうちょっと頑張らないとなって思いますね」
――めちゃめちゃいいマインドだと思います。人のいいところを素直に捉えているのが素敵だなと。最後に、会場限定盤の『SALTY』についても訊きたいのですが、なぜ会場限定盤を出そうと思ったのでしょうか?
リコ「やったことないことをしてみようっていうのもひとつありますけど、コロナ禍が明けて、ライブの大切さや、自分たちのライブに来てくれるお客さんに対するありがたみが、ライブをやるごとに増してきて。だから、自分たちのツアーに来てくれるお客さんに対する特別感じゃないですけど、そういうのを感じてもらいたいなって思いました。あと今の時代、サブスクとかSNSで音楽を取り入れる方が多いと思うんですけど、そこをあえてCDっていう形で、手に取って聴いていただくのも面白いんじゃないかなっていうのもあります。でもやっぱりいちばんは、ライブに来てくれたお客さんへの感謝だったりとか、特別感っていうのを持って帰ってもらいたいなっていう思いです。新曲をその場で披露して販売させてもらっている感じです」
――ライブでの限定販売だと、確かに特別感がありますね。『SALTY』というタイトルにはどういった意味が込められているんですか?
リコ「夏の終わりにリリースするので、『夏の終わり』っていうテーマからいろいろなアイデアを出していて、ふと、ぺっぺが『SALTY』はどう?って言ってくれたときに、夏ってすごい汗かいたりとかするじゃないですか? しょっぱい涙とか汗って、経験だったりとか、頑張ったり我慢したからこそ出てくるものだから、そういう時間があったからこそ今の自分があるっていうのが、今の自分たちの状況ともリンクするし、“Stand By Me”で歌ってるような、自分の毎日に対して、平凡だなとか、こういうふうにやっとけばよかったな、というような気持ちで生きている人たちが、共感できるような作品になればいいなっていう思いで決定しました」
――“チョコミンツ”の歌詞は、細野晴臣さんを意識していますよね?
リコ「あー! そういうのもあります。さっきも言った『夏の終わり』っていうのをひとつのテーマとして自分の中においていて。で、自分の過ごしてきた環境と、今暮らしている都会の東京っていうのを比べたときに、細野さんだったりとか、はっぴいえんどの曲が頭に思い浮かんできて、それがちょっと出てるかもしれないですね。この曲作ってるときにマネージャーさんから電話がかかってきて、いろいろこの曲について話したんですけど、『私は今はっぴいえんどモードです!』って言いました(笑)」
――「夏の終わり」っていうテーマから細野さんに派生していったんですね。
リコ「そうですね。東京ってちょっとネオなイメージがあるかもしれないんですけど、私は逆に、東京の中にも絶対懐かしさがある風景はあると感じてて。都心だけじゃなくって、東京のいろんな場所に行ってみると、あ、意外と別にネオでもないんだっていう。自分たちが住んできた街と変わらないような場所もたくさんあるんだなって思うと、すごく親しみやすい街にも感じてきて。ちょっと東京に対して、緊張感だったりとか、人が多くて苦手だなとか思ってた自分がいなくなった感じがして。それでそういう音楽を聴きたくなったのかもしれないです」
10月30日(月)発売の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号にもヤユヨのインタビューを掲載!
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“YOUTH OF EDGE”MV
“Stand By Me”MV
●リリース情報
会場限定盤『SALTY』
販売価格:¥1,000
収録曲
01. チョコミンツ
02. Stand By Me
Digital Single『YOUTH OF EDGE』
●ツアー情報
「赤い愛でスタンドバイユー!ツアー」
9/30(土)宮城 enn2nd w/なきごと
10/14(土)広島 広島4.14 w/bokula.
10/15(日)福岡 LIVE HOUSE OP's w/Conton Candy
10/26(木)香川 TOONICE w/ブランデー戦記
10/27(金)大阪 心斎橋 Music Club JANUS (ワンマン公演)
11/3(金・祝)愛知 池下CLUB UPSET (ワンマン公演)
11/4(土)東京 WWWX (ワンマン公演)
提供:株式会社エッグマン
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部