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ヤユヨの音楽は聴くほどに味わいを増す。特に奇をてらった構成や音作りをしているわけでもないし、派手なフレージングで瞬間的に心を掴むようなギミックも、あえて避けているフシさえある。しかしその等身大で紡ぎ出す音に不思議に耳が惹かれてしまって、気づけばああやはりいいと噛みしめている。ヤユヨの音楽はあとからあとから効いてくるのだ。そういう長く引き摺る「良さ」を体現できるバンドって、今の時代、意外に少ない気がする。それをあらためて確信させてくれたのがこのシングル。リード曲“チョコミンツ”。そのタイトルや歌詞に出てくる《ファイヤーキング》《12インチ》というモチーフ、そしてサビの《ロッカバイマイブルー》という語感に、そこはかとなく古き良き時代への憧憬が滲み、ミドルテンポのギターロックサウンドが、夏から秋へ、つまり少女から大人へと移り行く季節を映し出すように凛と響く。そう、この何気なく胸に沁みるメロディライン。この押しつけがましくない青春感こそヤユヨの「良さ」だ。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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