──制作で苦戦したポイントはありましたか?思ったよりも早くみんなに名前を知ってもらえたのもあって、未完成の状態で聴かれてるような、そこに実力が追いついてない感じがすごく引っかかってた(ハヤト)
柳澤 歌詞は結構難しかったかな。最初に書いたフレーズも残ってるんですけど、ほとんど全部を書き直してて。もともとは登場人物がひとりだったんですよ。そのひとりが卒業するときの寂しさ、孤独感を書いてたんですけど、ふたりにしたほうがいいなと思い、そこに移行させるのが難しかったですね。
ハヤト 最初はフワッとしてて。誰でも当てはまりそうな、それはそれで味のある歌詞だったんですけど、もうちょっと特定の誰かが浮かぶ歌詞のほうがいいんじゃないか、という話をして。聴いてる人が同じエピソードを経験してなくても、律希が誰かを思い浮かべて書いたらちゃんと伝わるだろうし。
──Bメロの《輝けなくても/僕等の青春のすべて》というフレーズ、曖昧で答えの出せない胸の内は輝いてないように感じるかもしれないけど、歳を重ねた立場からすればそれはそれで眩しい青春だなと思ったりもするんです。柳澤さんも成人してそう思えるようになった、みたいなところがあります?
柳澤 あぁ……どうだろう?
ハヤト 俺からすると、ケプラの曲って、そういうちょっと完璧じゃない部分があるのが良さなのかなと。だから、そこはずっと昔から変わらずにあるところだと思います。
柳澤 うん、そうですね。傍からはすごく青春をしてるように見えるのかもしれないですけど、100%満足できてない、みたいなところを歌で昇華したい自分がずっといるのかもしれないし。
──僕はこのフレーズのアレンジがいちばん好きなんですよ。抜き方も落とし方も絶妙だから、そのあとのサビがグワッと入ってくるし。
ハヤト ありがとうございます。ここ、急にできたんですよ。何時間も律希と会議室にこもってて、もう1回止めて帰るか、みたくなったんですけど(笑)、ラスト30分でやってみたらできたっていう。
柳澤 そこをアレンジャーさんも汲み取ってくれて、変えずにいてくれましたね。
ハヤト ここで(曲の雰囲気が)だいぶ変わりそうでしたし。
──この抑揚がドラマチックさを生みますし、それもまたスケール感につながってますよ。
ハヤト このときもスケール感はめっちゃ大事にしてました。
──バンドとしてスケールアップしていきたい、というのは大事なテーマですか?
柳澤 そうですね。
ハヤト ケプラはそこをちゃんと目指してたんだな、っていうのをわかってもらえたらいいなと思ってますね。俺ら、思ったよりも早くみんなに名前を知ってもらえたのもあって、未完成の状態で聴かれてるような、そこに実力が追いついてない感じがすごく引っかかってたんです。今までが間違ってたとは言わないですけど、メジャーデビューをきっかけに新しいスタートだと思って聴いてくれたらいいな、と思いつつ最近はやってますね。
──そうなると、“ずっと前から君に恋してる”と“抱きしめて!青春”は、軸となるようなサウンドが固まってきた2曲というか。今、やりたいことが全部できてきてて、「こういう方向性が合ってるな」というのが形になってきてる。ケプラがどういうものなのか、ようやくちゃんと世間に届くんじゃないかなって(柳澤)
柳澤 ずっとやりたかったことができた感じがありますね。それこそ、何年か前に“剣”を出したときも「もっと音を増やしたい」みたいな気持ちがありつつ、それを実現できなかった部分もあって。結果的にバンドサウンドでいい曲になったんですけど、そういうやってみたかったことを1曲1曲に対して試せるようになりました。
ハヤト ただ、普通にはなりたくないから。その塩梅を狙いつつ、探り探りではあるけど、土台となるような音楽を作ってる気がしてます。
──キャッチーなポップチューンをやりたくなくなったわけではないんですよね。
柳澤 そうですね。もっと幅広く、視野を広げてやれるな、っていう感じです。
──振り返ってみれば、“これからのこと”がSNSを中心に広がって、ああいう抜けのいいポップチューンのイメージが世間的には強いのかもしれないですけど、これまでに発表した曲はかなり幅広くやってますしね。
ハヤト ずっと変わってないですからね、やりたかったことは。
──いい意味でサウンドに一貫性がないし。
ハヤト いろいろ手を出す、っていうところでは一貫性がありますね(笑)。
一同 はははは。
──そして、バンドとして過去最大規模のツアーが始まります。
けんた 今回からひとつのツアーを通してのテーマがまとまったな、と思ってて。世界観にこだわったツアーになると思います。
ハヤト 今、ライブ本数を減らしてツアーに集中させてもらってるんですけど、それも自分たちの世界観や音楽を伝えるのにちゃんと時間を使いたいよね、っていうことだったりもして。断片的に届けたくないし、気持ち的にもまた違った挑み方をするから、全部の世界観が統一されるんじゃないかな。
──これからライブが始まります、1曲目です、という切り替えの感じではなく、ワクワクしてたら1曲目が自然に入ってきて、その世界に没頭できて、心が温かい感じで会場をあとにできる、みたいな流れを作るような。
ハヤト そうです、まさに。
柳澤 だから、登場SEも自分たちで制作したんですよ。
ハヤト ひとつのショーとして、イベントとして、完成度の高いものになったらいいよね、って。
けんた そこで「また来たいな」って思ってほしいですよね。あと、「楽しかった」や「ケプラが演奏してる姿が観れた」だけで終わるんじゃなく、お客さんも一緒に作るようなライブにしたいな、とも考えてます。
かず 今まで来てくれてた人にも新鮮味を感じてほしいです。作り込みとかにも気づいてくれたら嬉しいし。
──2025年のケプラはいろいろと進化もしそうですけど、1年後にこうなっていたい、という予想図はありますか?
柳澤 今、やりたいことが全部できてきてて、「こういう方向性が合ってるな」というのが形になってきてる段階なんです。これがすべてハマったら、ケプラがどういうものなのか、ようやくちゃんと世間に届くんじゃないかなって。1曲1曲でしかケプラに出会ってなかった人たちにも、ちゃんとケプラの全体像がようやく見えるようになってると思ってます。
ハヤト 次の動きに注目してもらえる状態にしたいです。曲をちゃんと聴いてもらって、それがだんだんと浸透していって、「次のケプラ、何をするんだろうね?」みたいな話題が生まれ始めたら、1年後めちゃくちゃいい流れだなと思います。