EX THEATER ROPPONGIによる企画ライヴ・シリーズの第2弾であり、6/20、6/24、6/30、7/2、7/3と5日間の日程でさまざまなアーティストが出演する「GO LIVE VOL.2」。その最終日にあたる7/3は、TOTALFAT、N’夙川BOYS、そしてザ・クロマニヨンズの3マンという、ロック・ファン垂涎の組み合わせである。めちゃくちゃロックンロールだし、3組が3組パンク・バンドと呼ぶことも出来るのだけども、実際に鳴っている音は全然違っていて面白い。こういうとき、言葉は本当に不自由で、音楽の方が雄弁だよな、とライターにあるまじき思いが溢れてしまうのだが(でも本音です。ジャンル名を細分化したところで、余計に不自由になってしまうこともあります)、何よりも先に各バンドのロックンロールを楽しみ尽くすべき一夜を、レポートしたい。
■ N'夙川BOYS
「EX THEATER、準備はいいですかーっ!!」と、いきなりマーヤLOVEのほぼ絶叫に近い挨拶でスタートした、トップ・バッターのN'夙川BOYS。ドッタンバッタンとビートを刻みながらリンダdadaが歌い出す、さっそくの“プラネットマジック”、更にハンド・マイクでチャーミングなステップを踏みながら披露される“路地裏BE-BOP”と、煌めくメロディのキラー・チューン連打でオーディエンスの歓声を誘うのだった。その間、シンノスケBoysはキラキラゴールドの衣装でギター・ヒーローよろしくポーズを決めながらプレイしたり、リンダとポジションを入れ替えてドラム・セットに収まったりする。アンバランスでドタメシャなベースレス3ピースの、しかもどんどんパートをスイッチして繰り広げられる夙川のロックンロールは、その中でスリリングに音像を組み上げ、泥の中に埋もれた宝石のようなメロディを見つけるロマンチックな物語だ。
6/4にリリースされたシングル収録曲の“ジーザスフレンド”や“未来はOnly Lonely”は、そのスッカスカなローファイ・サウンドで、驚くほど迫力に満ちたグルーヴを構築してゆく。「平日やのに、こんなに集まってくれてありがとう!(リンダ)」「残り10分って指示が出ました。なので、わりと最後の曲をやっていいですか?(マーヤ)」という言葉に続いては、この2人のハーモニー・ヴォーカルで始まる“物語はちと?不安定”だ。今度はマーヤがドラム・セットに収まってパワフルなビートを叩き、リンダがギターを搔き鳴らし、そしてシンノスケは、ステージ脇の高さ2メートルはあろうかというスピーカーによじ上ってギターを弾き倒す。この辺りから、異様な興奮が場内に渦巻き始めた。マーヤは例によってフロアに突入し、オーディエンスの頭上で「GO!」「LIVE!」のコール&レスポンスを敢行。最後には「これも曲だぞ!」と豪快なロック瞬間芸“フェアリー”も叩き付け、全力のパフォーマンスを締め括るのだった。
■ザ・クロマニヨンズ
さて、2組目に登場したのは、『MONDO ROCCIA』のアートワークのように「C」の字に象った手のシルエットをバックドロップに背負った、ザ・クロマニヨンズである。ベスト盤『13 PEBBLES ~Single Collection~』のリリースもあって、最近のイベント出演では、ズルい、と言いたくなってしまうような“タリホー”からのシングル曲連打でオーディエンスをカチ上げてくれる。今回は、アクセントとして中盤に“とがってる”が配置されていたのが絶妙だった。いつでも瞬く間に絶頂へと到達しそれがひたすら続く、この絶対基準のようなロックンロールはいったい何なのだろう。甲本ヒロト(Vo)は序盤のうちに、「みんなはそれぞれ一人しかいないけん、おれも一人しかいないけん、一か所にしか出現できない。こんなに集まってまた会えるのは、偶然じゃない。みんなのおかげです、ありがとう」と伝えていた。
ヒロトはその後も「あの、僕らは楽器を持ち替えないので、事の運びがスムーズです(笑)。今日は大好きなN'夙川BOYSとやるのを楽しみにしてました。TOTALFATは、たぶん初めてなんだけど、彼らはよく下北沢にいるらしい。あやしい……(笑)。ぜひ、『珉亭』のラーメンも食べて欲しいです」と語っていたが、本当にオーソドックスな4人編成のバンドの、ぎゅっとタイトなロックンロールなのである。そこに、“紙飛行機”の《グルグル回って》の直後のあのリフとか、“ギリギリガガンガン”というタイトルそのものが名フックになってしまうところとか、“オートバイと皮ジャンパーとカレー”や“ナンバーワン野郎!”のオーディエンスの声をがっつりと受け止める掛け合いパートとか、とにかくロックンロールの奥義としか思えない仕掛けが施されている。クロマニヨンズの「絶対基準」は、喩えるなら1年365日の暦とか、緯度経度とか、そういう「当たり前のようにある大発見・大発明」の上に成立しているものなのだと、あらためて思った。
■TOTALFAT
そして、登場するなり「まさか、クロマニヨンズの後にやるとは思いませんでしたー!」と放たれるShun(Vo・B)の第一声(元々TOTALFATと夙川の出演が決まっていたところに、クロマニヨンズの参戦が追加決定した)で幕を開けた、この夜のアンカー=TOTALFATのステージである。彼らが背負った責任感を観る側にもひしひしと受け止めさせる、凄まじい煽りっぷりであった。Jose(Vo・G)がステージ上一杯を動き回るダンス・パンク“PARTY PARTY”に始まり、こちらも昨年末のベスト盤に収められた楽曲群をガンガン投入してゆくセット・リストだ。「さっきヒロトさんが俺たちの名前を呼んで、嬉しくてキンタマが爆発しそうでした! 今日TOTALFATを初めて観る人もいると思うんですけど、皆さんが思っている以上に、俺たちの曲は分かりやすいんで! サビメロが終わったら、2Aから分かってるフリで来てくれればと思います!」とShun。ギャグでも卑屈でもなく、プロのミュージシャンが自信満々に「俺たちの曲はわかりやすい」と言い切る根性と覚悟って、半端では無いと思う。
その直後に披露された、7/30リリース予定のニュー・シングル曲“夏のトカゲ”が素晴らしかった。日本語詞で夏の猥雑な高揚感を伝え、Bunta(Dr・Cho)のビートが祭太鼓風に切り替わった瞬間、ShunとKuboty(G・Cho)がハッピを羽織ってすぐさま演奏に戻るという、観るのも聴くのも楽しい和風メロディック・パンクの名演なのである。この一曲でまたヴォルテージを高め、シンガロングを誘いながらステージを進めると、Shunは「『GO LIVE』というのは、ライヴ・ハウスに行こう、という意味だと解釈しました」と語り出し、EX THEATERという新たな遊び場が出来て嬉しいこと、かつての自分にとってのライヴ・ハウスが、自分らしくいられるための大切な場所であったこと、ライヴ・ハウスという大切な遊び場を守るためにこれからも全力を尽くすことを切々と伝え、その思いを込めた“Just Say Your Word”からの熱い本編クライマックスへと向かって行った。アンコールに応えると、「ギロッポンに似つかわしくないさあ、Tシャツと短パンで、汗だくで帰るんだろ? どや顔で帰れよ。最近、このへん雰囲気変わったなあって、思わせてやろうぜ」と告げ、最大級のシンガロングを求めながら“Good Fight & Promise You”で大団円を描き出す。
やはり音楽は三者三様、しかし間違いなく、想像を遥かに越えた熱さのロックンロール・ナイトだった。なお、この日の模様は映像収録がされており(クロマニヨンズ終演後のヒロトはまんまと尻を出していたが)、今秋、CS放送・テレ朝チャンネル1『EXシアターTV』で放送予定。ぜひ忘れず、引き続きの詳細続報をチェックして頂きたい。(小池宏和)
■セットリスト
<N’夙川BOYS>
01.プラネットマジック
02.路地裏BE-BOP
03.ジーザスフレンド
04.未来はOnly Lonely
05.Candy People
06.物語はちと?不安定
07.フェアリー
<ザ・クロマニヨンズ>
01.タリホー
02.紙飛行機
03.ギリギリガガンガン
04.炎
05.エイトビート
06.とがってる
07.グリセリン・クイーン
08.スピードとナイフ
09.雷雨決行
10.オートバイと皮ジャンパーとカレー
11.突撃ロック
12.ナンバーワン野郎!
13.クロマニヨン・ストンプ
<TOTALFAT>
01.PARTY PARTY
02.Highway Mark4
03.Summer Frequence
04.夏のトカゲ
05.Room45
06.Good Bye, Good Luck
07.Just Say Your Word
08.Place to Try
(encore)
09.Good Fight & Promise You
TOTALFAT×ザ・クロマニヨンズ×N'夙川BOYS@EX THEATER ROPPONGI
2014.07.03