「昨日はここ（メッセ）で『SATANIC CARNIVAL』、今日はBABYMETALでね。昨日はパンクのTシャツ着た人がいっぱいいて、今日は今日でいろんなものが――他にも家具のバザールとか、同人誌の即売会もやってたりとか。幕張、カオスなんだよね(笑)」と満場のオーディエンスを見回しながら冗談めかして語る川谷絵音（Vo・G）の言葉にも、この日のステージに立つ感慨と充実感が滲んでいる。全国ワンマンツアー「私以外ゲスじゃないの」を6月3日に終えたばかりのゲスの極み乙女。が、下北沢SHELTER（vol.1＆vol.3）・新宿redcloth（vol.2）と過去3回にわたって対バン形式で行ってきた自主企画「ゲス乙女集会」の第4回を、「ゲス乙女集会 vol.4～幕張編～」として幕張メッセ・イベントホールのワンマン2Daysとして開催。その2日目となったこの日のアクトは、アヴァンギャルドな音楽世界を突き詰めれば突き詰めるほどポップ異世界としての輝きを強く放つ、ゲス乙女そのものの名演だった。

　4人の似顔絵がポップアート風にアレンジされたオープニング映像が映し出され、舞台背後からちゃんMARI（Key）、休日課長（B）、ほな・いこか（Dr）、川谷絵音が登場。湧き上がる大歓声を“キラーボール”の熱狂へと直結してみせたところから、全編にわたってダンスとシンガロングの嵐！　曲によってオカシラ／えつこ／やまみのコーラスを加えてそのアンサンブルの彩りを倍増させたり、箱マスクダンサーが登場した“ノーマルアタマ”ではギター×鍵盤の高速ユニゾンと《みんなノーマル》の大合唱が弾けたり、いこかのドラムソロから課長のスラップベースが光る“パラレルスペック（funky ver.）”へつないでみせたり……といった高密度でスリリングな演奏が、観る者すべての快楽中枢を揺さぶっていく。「アリーナ、コポゥ！」「スタンドの人、コポゥ！」「みんなで、コポゥ！」というちゃんMARIのコールも、満場のポーズつきでバッチリ決まる。

　中盤のシングル2連発“猟奇的なキスを私にして”“私以外私じゃないの”での、幾何学模様的フレーズが至上のダンス・ポップへ昇華される展開の悦楽感。川谷のオクターブサウンドのリフとディストーションが吹き荒れた“Ink”……と尖鋭的なポップ感で観客を酔わせていく4人。そこへ、「今の“Ink”で、大半の体力を使い切ったんですけど(笑)。非常に早口なんでね。カラオケで歌ってる人がいたら引くよね？」という前振りから「合コンのカラオケで引かれた話」を延々繰り広げる川谷へ「……ねえ、長過ぎて（会場が）ドン引きしてる！」と突っ込んだいこかに「怒った顔もかわいいよ！」と課長が被せる。2日間で実に1万3000人動員とは思えないそのリラックス感が、続く最新シングル曲“ロマンスがありあまる”のプログレッシヴな音のタペストリーと明快なコントラストを描いていたのも印象的だった。

　「ライヴが終わった後、俺とお茶飲んでくれませんか？」と課長に迫られるいこかを助けにゲスト＝ぱいぱいでか美が登場、ちゃんMARI伴奏で“恋のブッキング”をひとしきり歌ったところで、課長「俺、でか美と“恋のブッキング”したいな」　川谷「これが三角関係だーっ！」とでか美のダンスとともに“ゲスな三角関係”へ。さらに、「餅ガール」ダンサーを迎えてタガの外れた狂騒感を生み出した“餅ガール”、コール＆レスポンスと金テープのキャノン砲が広大な空間を満たした“ドレスを脱げ”……圧倒的な音楽の才気とセンスを、惜しみなく高純度なエンタテインメントへと注ぎ込む4人。その唯一無二の闘志の在り方が、本編ラスト“アソビ”のエッジィな祝祭感からも伝わってきたし、アンコールで披露した新曲の極彩色コーラスの美しさには胸が震えた。最後は“ホワイトワルツ”で「ゲスの4箇条」を掲げてフィナーレ！　9月〜10月にかけてはワンマンツアー「ゲスチック乙女 ～アリーナ編～」も決定しているゲスの極み乙女。。一歩また一歩と進化を遂げるほどに、「ゲスの輪」はなおも大きくなっていく。ますます目が離せない。（高橋智樹）

［SET LIST］

01．キラーボール
02．星降る夜に花束を
03．デジタルモグラ
04．ノーマルアタマ
05．パラレルスペック（funky ver.）
06．ユレルカレル
07．猟奇的なキスを私にして
08．私以外私じゃないの
09．song3
10．jajaumasan
11．Ink
12．ロマンスがありあまる
13．サイデンティティ
14．ルミリー
15．ハツミ
16．ゲスな三角関係
17．餅ガール
18．ドレスを脱げ
19．アソビ

（Encore）
20．新曲
21．ホワイトワルツ