フューチャー・ソウル/ファンクの旗手として人気を誇るハイエイタス・カイヨーテだが、個人的にGREENROOMでようやく目の当たりにすることができた彼女たちのパフォーマンスは、ポスト・ヒップホップ/ネオ・ソウル時代の先鋭的なジャズ、という印象であった。GREENROOMでは、屋外の開放的な空気も手伝ってか、伸び伸びと陽気に繰り広げられるライヴだったのだが、ブルーノートでは文字通りに高いテンションをキープし続け、彼らのスリリングなコンビネーションが濃い熱狂を育んでいた。
フルハウスの会場で喝采を浴びる、ネイ・パーム(Vo・G・Key)、サイモン・マーヴィン(Key)、ポール・ベンダー(B)、ペリン・モス(Dr)の4人。「コンニチハ」と挨拶する紅一点ネイは、その一言だけでキュートな美声の持ち主であることが分かる。最新アルバムの導入部と同様に、ポールが驚異的なベース奏者でありながらサンプラーのベース音を繰り出すイントロ“Choose Your Weapon”、そして強烈なスウィング感に可変拍子を加えながら歌声をヒートアップさせてゆく“Shaolin Monk Motherfunk”と、楽曲を放ってゆく。宮崎駿の映画監督引退に捧げられた“Laputa”では、グイグイとうねるシンセ音の波形を見事に操り、グルーヴを生み出すサイモンのプレイも素晴らしい。
つまり、4人が4人とも怪物的なプレイヤーなのだけれども、複雑なコンビネーションを恐るべき精度で共有することにより、とても開かれた、キャッチーなポップ・ミュージックとなっているわけだ。先鋭的なDJ/ビート・プロデューサーたちが感性とテクノロジーを注ぎ込んで生み出してきたグルーヴが、バンド演奏の在り方を次の次元に推し進めていることが分かる。そしてやはり、ネイ・パームの麗しくチャーミングな佇まいである。力強くソウルフルな歌声とギター・プレイでファンキーなアンサンブルをリードしてしまう“Molasses”は、彼女が新時代のアイコンであることを証明する一幕に思えた。
さらに、満場のアンコールの催促に応えると、今回のステージで最もアタック感の強いヘヴィなサウンドで、“Swamp Thing”を叩きつける。問答無用と言わんばかりのプレイとは裏腹に、ネイは楽しそうに笑顔を浮かべ、お辞儀して去っていった。ハイエイタス・カイヨーテは今夏のサマーソニック2016(8/20・東京)への出演を予定しているが、翌8/21には早々にブルーノート東京へと帰還するらしい。ぜひ、進化し続ける4人の姿を多くの人に観て欲しいと思う。(小池宏和)
〈SETLIST〉
01. Choose Your Weapon
02. Shaolin Monk Motherfunk
03. Laputa
04. Boom Child
05. Breathing Underwater
06. Chivalry Is Not Dead
07. Cinnamon Temple
08. All The Words We Don't Say
09. Molasses
10. Jekylle
11. Nakamarra
12. By Fire
En1. Swamp Thing