sumika/新木場STUDIO COAST

sumika/新木場STUDIO COAST - All photo by 後藤壮太郎All photo by 後藤壮太郎
セットリスト
1. Answer
2. Lovers
3. ソーダ
4. カルチャーショッカー
5. グライダースライダー
6. イナヅマ
7. アイデンティティ
8. Summer Vacation
9. ほこり
10. Amber
11. リグレット
12. ここから見える景色
13. チェスターコパーポット
14. マイリッチサマーブルース
15. ふっかつのじゅもん
16. MAGIC
(ENCORE)
EN1. 雨天決行
EN2. 「伝言歌」

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「あなたが忘れない限り一生仲間でいます。だけど、もし忘れちゃったときはいつでも帰ってきてください。ドアは全開にしておきます」。この日も片岡健太(Vo・G)の言葉は熱かった。カラフルなパーティフラッグやシャンデリア、真っ赤な緞帳でステージを飾りつけたスペシャルな雰囲気のなかで繰り広げられたsumikaの企画ライブ「Little crown #4」。ソールドアウトとなった追加公演の新木場スタジオコーストで彼らが見せたものは、誰のために、何のために彼らが音楽を続けるのかというバンドの意思そのものだった。
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オープニングは、7月12日にリリースされたばかりの最新アルバム『Familia』で1曲目に収録されている“Answer”で口火を切った。今回のツアーで初めてサポートに加わったパーカッションNona*(Per・Cho)とのハーモニーが昂揚感を生む80秒ほどの小曲が 「sumikaのライブに来たのだ」という強い実感をもたらす。「限界点なんてとうに突破してるんですよ。もう助走はいらないので、最短距離であなたの心を奪いに来ました!」。片岡のハイテンションな第一声に悲鳴のような歓声が湧くと、黒田隼之介(G・Cho)が繰り出す陽性のギターリフに心踊る“ソーダ”や、荒井智之(Dr・Cho)の軽快なスネアにハンドクラップが重なったダンスナンバー“カルチャーショッカー”へと、底抜けに明るくて賑やかで、ポジティブなエネルギーに溢れたsumikaの音楽が、私たちを非日常へと連れ出してくれた。
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中盤には「Little crown」のスペシャル企画として、事前の人気投票で1位に選ばれたという“イナヅマ”(1stミニアルバム『新世界オリハルコン』収録)が披露された。どちらかと言うと、温かくて多幸感のある楽曲が多いsumikaには珍しく、ソリッドでロックな初期の隠れた人気曲が、ここぞとばかりに選ばれたのもこんな企画ならでは。続けて、「みなさんがいるその場所から一歩あゆみを進めるための曲です」と紹介した“アイデンティティ”へ。そのストレートな応援歌は、誰かの背中を押すのではなく、大きな箱舟に乗せて一緒に未来へと導くような求心力がある。リスナーの「住み処」になるという意味のバンド名。4年前に名づけたその名が意味するとおりの音楽を、いまもsumikaは鳴らし続けていた。
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ぐっとテンポを落としたジャジーな楽曲“Summer Vacation”や、朴訥としたバラード“ほこり”からは前半の狂騒は一転して、静かにその音楽に身を委ねる心地好い空間が新木場コーストに広がっていた。ゆったりとしたアコースティックアレンジで届けた“Amber”から、小川貴之(Key・Cho)の流麗なピアノが鮮やかな景色を描いた“リグレット”や“ここから見える景色”、そして後半戦でホーン隊を加えた9人編成の最強バージョンの“チェスターコパーポット”にいたるまで、それは「音楽を浴びる」という言葉が似合う素敵な時間だった。リリースに紐づくワンマンではなく、サポートメンバーを贅沢に迎えた今回のようなライブこそ、多彩で豊かな音楽性を持つsumikaの本領は最大限に発揮される。だから、片岡は「ご褒美みたいなライブです」と言った。毎回こんなライブができるわけではないと知っているからこそ、この瞬間が愛しい。本当にかけがえのないライブだった。
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最後のMCで片岡は言葉を選びながら丁寧に語りかけた。「幸せです。何だろうな……家のご飯を食べさせたいんですよ。本当は俺ん家に呼んで、自分たちの音楽を感じてほしい。でも、それは無理だから、この新木場コーストには、俺が見せたい景色を全部詰め込んで、お招きしてるつもりです。そこに嘘が生じたら、もう『Little crown』はやらないと思う。今日、『誇らしい王冠ができました』と、みなさんの目を見て胸を張って言えるのは本当に幸せです」と。それは、音楽というものが、それを生むひとの人間性、育んだ家、歩んできた道を強く反映するものであるという片岡の信念も滲み出た言葉だったと思う。そして、ラストはこの場所に結実した素敵な出会いと音楽の魔法がずっと続きますようにと願いを込めた“MAGIC”で、最高にハッピーなムードのなかでライブを締めくくった。
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アンコールで片岡は「ステージで言うべきじゃないかもしれないけど」と前置きをして、先日7月27日に祖父が亡くなったことを明かした。おそらく葬儀には出席することができない、と。10年前に祖母が亡くなったときも同じだったという。「それを後悔していません。それでも続けてきたことが俺を支えています」。そう言った片岡は「あなたが守りたいものを全力で肯定するために音楽をやっているんだと思います。あなたが続けているものを『運命ですから』と肯定できるように、1曲歌って帰ります」と言って、最後にバンドとお客さんをつなぐ大切なナンバー“「伝言歌」”を届けた。この日、フロアには何度も大きなシンガロングが起こったが、いちばん最後はとりわけ大きかった。バンドからの伝えたいという意思、それを確かに受け取っているというフロアから返答。そんな往復書簡の歌は、お客さんを自分の誇りと呼ぶ、sumikaのライブの終わりにあまりも相応しかった。(秦理絵)
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