ウルフ・アリス @ 渋谷WWW X

ウルフ・アリス @ 渋谷WWW X - Photo by Takayuki OkadaPhoto by Takayuki Okada

目の覚めるようなギター・ロックが鳴っていた。ロック・バンドによる最高のライブだった。そう断言できる機会は近年めっきり減っている。「ギター・ロック」であるためには、「ロック・バンド」であるためには、いくつものエクスキューズやギミックが必要で、そうでなければロックはポップ・ミュージックに対抗できないーーという言説が主流になって久しいからだ。だからこそ、昨夜のウルフ・アリスのライブは一周二周回って猛烈に新鮮な体験だったと言っていい。

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オープナーの“Heavenward”がもろシューゲイザーでアンビエントな轟音チューンであり、そこから一転してゴリゴリとリフが刻まれるグランジ・チューンの“You're A Germ”へ、そして間髪入れずにスクリーモばりのハード・コア・チューン“Yuk Foo”へと転がり込んでいく、そんな冒頭の3曲だけでも彼女たちのギター・ロックの含有成分が実に多岐にわたることが確認できる。

実際、ウルフ・アリスの2枚のアルバム(『マイ・ラヴ・イズ・クール』、『ヴィジョン・オブ・ア・ライフ』)はグランジやシューゲイザー、アンビエントにポスト・パンク、そしてドリーム・ポップと実に様々なジャンルがごちゃ混ぜに詰まった作品だったわけで、この日のライブも基本的にそんな彼女たちのサウンドのバラエティを次々に明らかにしていく流れであった。

しかもそのバラエティをただ片っ端から並べていくのではなく、意識的にコントラストを効かせたセットリストであり、演奏だったのが昨日の特徴で、2年前と比較しての彼女たちのライブ・バンドとしての急成長を最もヴィヴィットに感じたのもこの点だった。

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リズミカルに弾むリフとエリーの男前なシャウトがとことん鋭角だった“Beautifully Unconventional”から、淡い色合いのレイヤー・ギターとエリーのファルセットがとことんマイルドでスウィートだった“Don't Delete The Kisses”への急転換はまさにその最良の例だったと思うし、コントラストという意味ではモノトーンでファニーなAメロから一気にノイズが炸裂する構成がブリーダーズの“Cannonball”を彷彿させる“Formidable Cool”のように、1曲の中での緩急も今回は見事だった。通常マイクとエフェクトマイクを使い分け、まるでふたつの人格を行き来するようなエリーのボーカリゼーションも、新作『ヴィジョン・オブ・ア・ライフ』でぐっと奥行きを増したウルフ・アリスのサウンドの緩急に必須の要素となっていた。

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デビュー・アルバム『マイ・ラヴ・イズ・クール』のナンバーは、“Bros”やアンコールの“Giant Peach”を筆頭にもはや往年のオルタナ・クラシックの風格だ。そう、ウルフ・アリスのロック・バンドとしての説得力、その大きな部分を、デビュー・アルバムの段階ではグランジを筆頭とする「クラシックなオルタナティブ」へのオマージュが担っていた。しかし“Bros”同様にキャッチーなメロディック・アンセムである新曲の“Space & Time”の、圧倒的な求心力で前へ前へと突き進むパフォーマンスを目の当たりにして思ったのは、彼女たちがすでにクラシックなオルタナティヴから自由であるということだった。

ウルフ・アリスのノイズ・ギター、ヘヴィ・ギターはグランジ的であってもグランジのような自傷的ニヒリズムはないし、シューゲイザー的であってもシューゲイザーのように轟音に耽溺するニヒリズムもない。そういうジャンルの歴史的背景、ムードとは無関係に、グランジやシューゲイザーから自分たちが本能で欲したエレメンツをズバズバ切り取っていく、その自由で透徹したクールネスこそが、ウルフ・アリスが新作で獲得した最大の成果なのだと思う。

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エリーのシャウトもどこかノーブルで伸びやか。グランジだから、パンクだからと敢えて破滅的に箍を外す「フリ」を彼女はけっしてしないのだ。ちなみにエリー・ロウゼルという人は非常にフォトジェニックな美形なのだが、そのアウトフィットは素っ気ないにも程があるタンクトップにデニムだし、ヘアスタイルもトップで雑にまとめてあるだけだ。彼女はギター・バンドのフロント・ウーマンとしての記号性をはなから担うつもりがない、そんな細部にまでウルフ・アリスの新しさは宿っている。途中で客席から「エリー!エリー!」コールが起こると、その素っ気ないクール・フェイスが崩れて照れくさそうに笑っていたのはツンデレ気味で萌えましたが!

この日の最大の収穫は、新作中でも最も複雑で長大、そして彼女たちが考える最高のロック・エレメンツが全部盛りされた“Visions Of A Life”が、野太い歓声とどよめきに包まれてクライマックスになったことだろう。ギター・ロック、ロック・バンドの完全勝利!そう快哉を上げたくなるような数分間だったのだ。(粉川しの)

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〈SET LIST〉
1. Heavenward
2. You're A Germ
3. Yuk Foo
4. Your Loves Whore
5. Lisbon
6. St. Purple & Green
7. Beautifully Unconventional
8. Don't Delete The Kisses
9. Formidable Cool
10. Planet Hunter
11. Bros
12. Space & Time
13. Sadboy
14. Moaning Lisa Smile
15. Visions Of A Life
16. Fluffy
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17. Blush
18. Giant Peach

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