●セットリスト
1. 暁のザナドゥ
2. YURAMEKI SUMMER
3. Love me
4. セツナユメミシ
5. バミューダアンドロメダ
6. テキーラキラー
7.パラレル
8. MABOROSHI SUMMER
9. zero
10. wasted
11. ミッドナイトハイウェイ
12. ロトカ・ヴォルテラ
13. S.H.S.S.
14. 雨宿り
15. Siesta
16. 黄昏シンフォニー
17. summer tail
18. プルオーバー
19. Cheers!
20. 東京シネマ
21. アオイウタ
22. コースター
23. 桜花爛漫
24. Rainbow road
25. fiction escape
26. Summer Venus
27. MATSURI BAYASHI
(アンコール)
EN1. トラベリング
EN2. Monday Traveller
EN3. MONSTER DANCE
ロックバンドらしいスリリングなサウンドの熱狂と、大規模なエンターテインメントの興奮は、こんなにも見事に両立するものなのだ。KEYTALKにとって初の幕張メッセワンマン「ド真ん中で頑張マッセ〜shall we dance?〜」は、そのタイトルどおり9-11ホールのド真ん中に据えられたセンターステージを、360°のオーディエンス14000人が取り囲むようにして見つめる会場レイアウトで、これまたKEYTALK史上初の試みとなる。
突如の雷鳴と共に場内の照明が落ちると、おどろおどろしいSEの中でモンスターたちがフロア通路を徘徊し、そこかしこから悲鳴が上がる。センターステージに登場するのは、不気味なマントとマスクで身を隠したミステリアスな4人。それぞれがステージから東西南北に伸びる花道に立ち、ざわめくオーディエンスを煽り立てていた。彼らがKEYTALKの4人だろうか。もうもうと立ち込めていたCO2が晴れると“暁のザナドゥ”が鳴り響き、ステージの真ん中にはいつのまにか本物のKEYTALKが姿を現している。驚きが喜びへとすり変わる、イリュージョンのようなオープニングである。
大掛かりな演出もさることながら、初っ端から筋肉質でしなやかなグルーヴが立ち上り、視界一杯のオーディエンスを激しく波打たせるサウンドの手応えにこそ舌を巻く。思えば、7月まで繰り広げられていた「Rainbow road TOUR 2018 〜おれ、熊本で2番目に速いから」でも、華やかな演出とKEYTALK史上最高にロックな演奏の融合は果たされていたわけだが、今回の幕張メッセではそれらすべてがスケールアップしていた。
巨匠・寺中友将(Vo・G)が南・西・北・東と各方向でコールを誘い、序盤は南向きに演奏していた八木優樹(Dr・Cho)は「もうお尻出してます!」とセンターステージを楽しみ尽くしている。お馴染みの「ぺーい!!」コールで、「東南西北(トン・ナン・シャー・ペー)のペーですね!」と告げながら、大きなステージ上を走り回って芯の強いギターの音色を振りまき続けるのは小野武正(G・MC・Cho)。ステージの真上には8面の巨大なLEDスクリーンが設置されており、“セツナユメミシ”では幾何学模様の刺激的なCGアニメーションと4人のライブ映像がリアルタイムで融合される。“バミューダアンドロメダ”も、かつてないほど獰猛なバンドサウンドの中で首藤義勝(Vo・B)と巨匠のスイッチングボーカルがデッドヒートを繰り広げてしまっていた。
4人が4方向の花道に散り散りになり(北側の突端には八木のドラムセット)、まさに身悶えするような距離感を歌う“ロトカ・ヴォルテラ”や“S.H.S.S.”の一幕は、4人のコンビネーションを身上とするKEYTALKだからこそ、見た目以上に難しいパフォーマンスになったはずだ。そして、義勝がハンドマイクで360°の視線を浴びながら気持ち良さそうに歌う、甘く切ない珠玉の名曲“雨宿り”。天井に光の模様が飛び散る演出がまたロマンチックである。4人の音の密度がさらにギュッと高まって届けられる“Siesta”も素晴らしかった。
巨匠が「すみません、一口だけ」と缶ビール1本を一気に飲み干して始まった“summer tail”と“プルオーバー”は、アコギ2本とアコベ、各種パーカッション(カホン、シンバル、タンバリン、ウィンドチャイムなど)を用いたレアなアコースティックセットだ。ターンテーブル状に回転するステージの上で、KEYTALKのプレイアビリティの高さが丸裸になってゆく。オーディエンスを巻き込んで、贅沢に音と戯れる時間帯であった。
そして松岡修造がビデオメッセージで出演し、ミュージックビデオ撮影への協力を呼びかけて始まった“Cheers!”は、無数の黄色いバルーンがフロアに投入されて華やかな光景だ。そのままシングル『Cheers!』のカップリング曲“東京シネマ”へと連なるのだが、これがまたカップリング曲とは思えないダイナミックなロックの響き方をしていて、ライブ後半にドン、と存在感を発揮していたのも素晴らしい。
義勝が東側のエリアに「アズマーっっ!!」と呼びかけ、そこに偶然居合わせたアズマさんを見つけたりしながら、終盤は怒涛のライブアンセム連打である。事前に配布されていた紙製パリピメガネを一斉に装着して「みんな、チャラいね〜!」とパーティ性を加速させる“Summer Venus”、そして武正が映像の中で金色のボディスーツ+頭飾りの新キャラクター「おみこしくん」と化し、「違うんだよ、声にならない声を上げるんだよ!!」とワッショイワッショイの囃子声を誘う“MATSURI BAYASHI”まで、アイデアがてんこ盛りのステージであった。
アンコールで2曲、計29曲を披露した後は、メンバーが挨拶してエンドロールのようにこの日のセットリストが映し出される。演奏されていないはずの「30.」というトラック数が表示されたところで、またもや場内は沸騰、最後の最後にモンスターたちも総出演して踊り狂う“MONSTER DANCE”だ。そうか、《心のどこかに潜んでる化け物》(“暁のザナドゥ”)を解き放って始まり、“MONSTER DANCE”へと辿り着く今回のライブは、つまり14000人のモンスターたちの宴だったというわけだ。あの手この手のアイデアが持ち込まれ、何よりもそれに負けないバンドサウンドがあればこそ成立する、魂の解放のためのロック・エンターテインメントであった。(小池宏和)