Springroove09 @ 幕張メッセ9・10・11ホール
2009.04.04 00:00
日本にフェス文化が広まったことで、「どんなに人前でオシャレをしたいからって、さすがにピンヒール穿いてフェスに行くのは論外。動きやすくて、長時間着てても疲れない服装こそが最高のオシャレ」という暗黙のドレス・コードは今や音楽ファンのデフォルトになっている。が、日本でほぼ唯一それが当てはまらない……というか、今にも折れそうなピンヒール穿いてる子がいたりふわふわブーツの子がいたりミニスカワンピの子がいたりして、ファッション方面で異常な気合いの入り方を示しているフェスがある。それがこの、「R&B/ヒップホップ中心の都市型フェス」として06年に産声を上げ、今年で4回目を迎える「Springroove」だ。集まっているオーディエンスの解釈も、「クラブ/ダンス・フロアの延長線上」「ロック・フェスの延長線上」とぱっきり二分されていることが、個々の観客の服装からだいたい見て取れるのが面白い。SUMMER SONICの仕掛人であるイベンター=クリエイティブマンによる「音楽ジャンル別フェス」の先陣を切る形で生まれたこのフェスも、「パンク・フェス=PUNKSPRINGとセットで土日開催」という形も含めて、すっかり定着した観がある。昨年同様、同じ巨大空間内に設置されたメインの2ステージ=RED STAGE/BLUE STAGEで交互に演奏が行われ、片方のステージのライブ中にもう一方のステージでセット・チェンジを行って時間のロスを防ぐ、という形式。飲食エリアを隔てたところにある第3のライブ空間=GREEN & RAMP DJ STAGEは、DJアクトとライブ・ペインティングのコラボがあったり、ステージ横のハーフパイプでのスケート・ショウとDJのセッションがあったり……と、この日は基本的にはDJアクト中心のラインナップ。あと、オーディエンスの会場入りが超スロースターターなのも、Springrooveならではの特徴だろう。大トリのT-ボズ&チリ from TLCの終演時には満員だったこの日も、13:40に最初のアクト=Shontelleが号砲代わりの音を妖艶かつハード・エッジに鳴らした時には、RED STAGEはやっとフロアの半分ぐらい埋まったぐらいだった。パンク・ファンやメタル・ファンの朝早くからの気合い入り方とはえらい違いだが、R&Bファンは基本的に夜型だから……かどうかは定かではない。その後、序盤戦はBoA/清水翔太/JUJUと邦楽勢が続く。ベスト盤&USデビュー盤の合体アルバム『BEST & USA』をリリースしたばかりのBoAは、「DJ UPPERCUTのバッキバキにハードなトラックに乗せたエモーショナルな歌とダンス」と「美メロ歌謡の極致“メリクリ”」を20分の中に共存させていたし、ミドル・テンポ歌ものR&Bの雄=清水翔太は“HOME”などの名曲でオーディエンスの腕を大きく右に左に波打たせたし、初めて生で聴いたJUJUの“やさしさで溢れるように”には思わず震えが来た。この日のメッセがようやくフェスらしい狂騒感を獲得した瞬間は、その後のT-ペインだった。もはやすっかり彼の持ちネタとなった“Kiss Kiss”などを武器に、時に流麗なピアノ弾き語りも交えつつ、寸劇チックなダンスも盛り込みつつ、とにかく緩急つけて「メイクサムノーイズ!」とアゲ倒す。そして、「身体いっぱい揺らして踊って帰って!」と極太のボーカルを響かせていたジャパニーズ・レゲエ・クイーン=PUSHIM、「(TLCの)チリがハグしてくれて、すっごくアガってます!」と高揚しながら、シリアスなバラードからアグレッシブな曲まで軽やかに歌いこなしていた加藤ミリヤ、と続いた後で……。18:10、いよいよ終盤戦に突入! コーラス3人含む大編成バンドを従え、サングラス以外白ずくめでキメて現れたのは、UKガラージ/2ステップのスーパースター=クレイグ・デイヴィッド! “What’s Your Flava?”のファンキーなライムさばきから、アコギをフィーチャーした“Rise & Fall”のようなメロウな歌モノ、そして人力オート・チューン的な歌い回しや「寿限無、寿限無 五劫の擦り切れ……」的な超速射砲ラップまで、そのキャパの広さを存分に見せつけた。一方、コーラスにブラス・セクションまでフィーチャーしたさらに大編成のバンドを引き連れ、R&B/ソウルはじめブラック・ミュージックの歴史を40分で大総括するようなアクトを披露したのはジョン・レジェンド! ハンド・マイクで激しく煽ったり、生ピアノ弾き語りでじっくり聴かせたり、短い時間ながら変幻自在のステージングを展開していた。そして、いよいよBLUE STAGEのトリ=AKON! それこそロックもR&Bもヒップホップも食いまくったような超雑食型&攻撃型ナンバーでこの日最高潮の高揚感と狂騒感を演出! 最後、“Right Now[Na Na Na]”ではフロアに飛び込んだり、フェンスに昇って手裏剣風アクション(?)で激しく煽りまくったりと大活躍。開演時には白シャツに黒革ジャケットを羽織ってステージに現れたはずの彼は、柵前のトップ・オーディエンスたちと握手しながら消えていった時には汗だくのTシャツ姿だった。そして……20:45、ついにSpringroove09大トリを飾るTLCの2人=T-ボズ&チリが登場! だが、ライブを観ていてすぐに「あれ?」と思った。ステージ上に、2002年に亡くなったはずのもう1人のTLC=レフト・アイの姿があるのだ。いや、正確にはステージの背後に設置されたヴィジョンに、彼女の姿が映っているのだ。そして、映像の中のレフト・アイの歌やダンスは、ステージ上のT-ボズ&チリの歌と、ダンスと完璧にシンクロしているのだ。さすがに「おおー!!」とオーディエンスからも驚きの声が上がる。そうだ、X JAPANだ。昨年のX JAPAN復活公演でも、今は亡きhideをステージ上に蘇らせるため、過去の映像を集めて再構成し、音源からhideの声とギター・サウンドだけを取り出し、他の4人の「現在」の演奏とリンクさせる……ということをやっていたが、それと同じことを、T-ボズ&チリもやっていたのだ。しかも、ご丁寧に過去の映像と同じツナギを着て歌い踊っているものだから、現在の2人の映像と過去の3人の映像を細かくスイッチングしたら、どう見てもレフト・アイがそこにいるようにしか見えない。おまけに、99年のアルバム『ファンメイル』の3人揃ったジャケ写までが映し出されると、興奮するよりも先にハッと戦慄が走る。さすがにX JAPANのように、全編「蘇生」バージョンでやることはなかったが、それでも随所にレフト・アイの姿が登場し、そのたびに驚きが会場を包んだ。思い思いに踊ったり揺れたり……というよりは、誰もが「TLC復活」の瞬間を固唾を呑んで見守っているような不思議なムードの中、Springroove09は終わった。そして明日は「PUNKSPRING」! 引き続きこのコーナーでレポートするので乞うご期待。(高橋智樹)