そして、そんなchilldspotは今、夜のライブハウスでとんでもなく熱狂的なライブを繰り広げている。
6月16日に渋谷CLUB QUATTROで開催された、chilldspot主催の対バンライブ 「JAM vol.3」の東京公演、Klang Rulerとの2マンを観た。渋谷クアトロに満ちていたのは、とんでもない高揚感と清々しさだった。私がchilldspotのライブを観たのは昨年11月にSpotify O-EASTで開催された「chilldspot 5th one man live tour "mid way"」ツアーの東京公演以来なので、約半年ぶり。半年前のライブも、chilldspotが「ひとつの意志」となって作り上げた傑作アルバム『handmade』の真価を示す素晴らしいライブだった。のだが、この日の2マンでは、約半年の間にもchilldspotのライブはさらにすごいことになっている! ……という現実を、体と心で真っ向から食らわされた。度肝を抜かれた。そのくらいすごかった。
派手な演出があるとか、そういうことではない。むしろ、その逆と言っていい。あまりにも剥き出しなのだ。目に見えるのは無骨と言えるほどにシンプルなchilldspotだ。真ん中に比喩根(Vo・G)がいて、上手に玲山(G)がいて、下手に小﨑(B)がいて、後ろにサポートの嶋英治(Dr)がいる。彼らが次々と演奏する楽曲に、バンドが積み上げてきた技術も、生き様も、エモーションも、すべてが重なっていく、その重み。汗を滴らせながら、今この瞬間を全力で生き抜こうとする、きらめき。その姿が、あまりにも熱狂的なのだ。示し合わせなくても、いつの間にか私たちもchilldspotと一緒に泣いたり笑ったりしている、そんな繋がり。「私たちが今ここにいることに言い訳も、説明も必要ない。私たちの存在は正論じゃなくていい。ただ、輝きたいだけなんだ!」――そんな高らかな「生」の叫びが途絶えることなく響き続ける感覚。頭を空っぽにしたいわけじゃない。自暴自棄じゃない。悲しみも喪失も知っている。そういうものを知ったうえで、私たちを縛り付ける疲弊にも不安にも雁字搦めにされ続けるのは嫌なんだ。だから、奏でる。だから、歌う。だから、友達のバンドとライブをする。そうやって当たり前でシンプルなことに全身全霊でリアルな「生」を重ねる、その姿があまりにも感動的なのだ。
先手としてステージに立った対バン相手であるKlang Rulerのパフォーマンスも素晴らしかった。MCで比喩根も言っていたが、重低音がバッキバキ。5人のアンサンブルは衝動を感じさせるほどにダイナミックで激しい。yonkey(Vo)のプロデューサー・ソングライターとしての明晰さ、さらに5人並んだときのカラフルで華やかな存在感も相まってポップでキャッチーなイメージもあるバンドだが、ライブとなると完全なる接近戦・肉弾戦タイプなのだ。屈強なフィジカルを持ったバンドなのだと改めて認識。そのパワフルな演奏は、時代にフィットすることをヨシとするよりも、「フィットしたうえで、はみ出す!」というパッションを感じさせて頼もしかった。実は、約2年前には、この日と同じく渋谷クアトロで開催されたKlang Rulerの対バン企画で既にchilldspotとの対バンも経験済みなので、関係性も十分だろう(そこには今回の「JAM vol.3」大阪公演でchilldspotと対バンしたmuqueもいた)。やすだちひろ(Vo)がMCでchilldspotへの愛を、そして、ライブで直接コミュニケーションを取ることの喜びを語っていたのも印象的だった。それぞれ屹立した佇まいを持った者同士が、素朴なほどの音楽への愛とリスペクトで繋がる。その関係性がとても尊い。集まった観客たちをまるでアジテートするように盛り上げたKlang Ruler。ステージを去るとき、ちひろはchilldspotのタオルを掲げていた。
そして、今回の2マンのホストであるchilldspotが登場。場内が暗転する中、静かにステージに登場した4人。1曲目“Up”からライブはスタートしたのだが、まず、小﨑の奏でる蜷局を巻くようなベースの、その音のデカさに驚かされた。とんでもない迫力! 私も思わず「ベースの音がデカいバンドは最高だ!」と心の中で叫んでしまった。さらに、玲山のリズミカルなギターには鋭さと艶やかさが宿っているし、比喩根の歌声にはやはり一気に惹き込まれる存在感がある。ライブの冒頭から、3人の際立った個性が混然一体となった今のchilldspotの「強さ」を、超強烈なストレートパンチのように食らうと、幻想的なSEが流れ出し、「さっそくだけど、タオル持って!」と、ハンドマイクになった比喩根が観客たちに呼びかける。そして、“フレイドル”へとなだれ込む。疾走感のある地を這うような“Up”から、一気に上空に飛翔するような浮遊感のある“フレイドル”へ。軽快かつ複雑に走るドラムのビート、さらに観客たちが回転させる色鮮やかなタオルが爽快感のある光景を生み出す。そして、メランコリックなメロディが切なくも疾走する“緑のダンス”。目まぐるしく変わっていく景色の中で、確かに熱気は膨れ上がっていく。
3曲目までを終えると、MC。比喩根は「私、Klang Rulerのライブが好きなんです。重低音バキバキで。あの、ゴリゴリにぶちかましてくる感じが『ライブってこうなんだよな!』って熱い気持ちになる」と話すと、さらに「chilldspotはコロナ禍発足なので、あまり横の繋がりがなかったので、仲良くしてくれて嬉しいです」と、Klang Rulerのパフォーマンスを讃え、感謝を伝えた。そして、「リッチな感じの、落ち着く曲」と紹介し、最近リリースされたばかりの新曲“Ladyy”を披露する。音源で聴いてもメロウな魅力を持った曲だが、ライブでは小﨑のベースがさらに深い夜の暗闇と静けさ、その静けさの奥にある焦燥までも運んでくるようで、曲のグルーヴにのめり込んでいく。そして、バンドは「もっともっと深い場所で手を繋ごう」と観客たちを導くように、“夜更かし”を演奏。比喩根の弾き語りに始まり、男性陣3人のグルーヴィな演奏が重なる。アウトロの演奏も本当に素晴らしい。波の上をたゆたうような揺らめきと、生々しくソリッドなグルーヴ感が、不思議な塩梅で混ざり合う。chilldspotにしか生み出し得ない温度感だ。
ライブはその後も熱狂を持続しながら続いていった。“music”とKlang Rulerの“ジェネリックラブ”を繋げる粋な演出では観客たちも大いに盛り上がり、さらに“full count”ではハンドマイクを持った比喩根が観客たちにグングン近寄っていく。「初めての人も一緒に歌える曲だと思う」と紹介され始まった“Groovynight”では、観客たちの声も重なった。さらに鮮やかな比喩根と玲山のギターサウンドが響き、始まった“踊っていたいわ”でも、観客たちのクラップと合唱が楽曲を彩る。もちろん、曲調によっていろいろなノリ方や盛り上がりが生まれているが、しかし根底ではずっと持続して、chilldspotというバンドの体温が、chilldspotの命の熱が、渋谷クアトロの空間を、この場所に集まった人たちを温め続けているようだった。ライブ本編は、小﨑のラップから始まる“Unbound”、そして、“Like?”“BYE BYE”という流れで締め括り。ラストの“BYE BYE”では、歌詞を《私今Klang Rulerを聞いているの》《私今渋谷クアトロで歌っているの》と変えて歌った比喩根。最高の愛と音に満ちたこの夜を祝福しているようだった。
そして、アンコール。披露された“Girl in the mirror”はあまりにも凄まじく、素晴らしかった。鏡に映る自分自身と対峙する人の姿を歌うこの曲を、比喩根は、自分の全存在をかけて歌っているようだった。自分を縛り付けるものに抗うように、目の前を塞ぐ壁をぶち壊そうとするように。小﨑と玲山と嶋の演奏も力強く響く。曲の途中からKlang Rulerのちひろとyonkeyもステージに登場し、ボーカルとして加わる。絶対に忘れたくない景色が目の前に広がる。さあ、汗を滴らせ、体を動かせ、音を鳴らせ、歌を歌え。まとわりつく曖昧な不安を、押し付けられる恐怖をなぎ払いながら、chilldspotは確かにここにいた。(天野史彬)
●セットリスト
chilldspot ”JAM vol.3”
2026.6.16 SHIBUYA CLUB QUATTRO01.Up
02. フレイドル
03. 緑のダンス
04.Ladyy
05. 夜更かし
06.music~ジェネラブ
07.full count
08.Groovynight
09. 踊っていたいわ
10.Unbound
11.like?
12.BYEBYEEncore
13.Girl in the mirror提供:ポニーキャニオン
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部