「踊りたいやつはどこにいる? 騒ぎたいやつはどこにいる?」とアジテーター=社長が煽れば、雄叫びとも怒号ともつかない大歓声が湧き上がる。その熱風のような声を全身に受けて、さらに社長。「そうだ! その声が、この夜の至福を作る!」……『SOIL&“PIMP”SESSIONS TOUR 2009〜WORLD TOUR KICK OFF PARTY〜三点天国攻め』と銘打ってあることからもわかる通り、爆音デス・ジャズ・バンド=SOIL&“PIMP”SESSIONSの東名阪ツアー初日の会場である赤坂BLITZには、「7月からのヨーロッパ・ツアーを目前に控えたSOILを祝い倒す渾身の壮行会」とでも言うような、なんだか観ているこっちまでどこか大きな場所へ船出していくような晴れやかな空気が満ちていた。
そして、そんなピースフルな空気とは裏腹に、バンドの演奏はかつてないほどにヤバいテンションを孕んだものだった。6人一丸となってぶつかってくる、という意味での緊迫感というよりは、インプロビゼーション的な要素がさらに増していて、楽曲という名のハイウェイからいつハミ出して事故って弾け飛んで全身バラバラになってもおかしくない、という意味でのスリルに近い感覚。“Suffocation”など、これまで何度聴いたかわからない曲をやっていても、まったく新しい場所へ連れていかれるようなワクワク感がある。そもそもメッセージやスタイル、ファッションではなく、音そのものでパンクの切れ味を獲得しているのがSOILなのだが、この日のピアノ=丈青のアクロバティックな即興フレージングや、ドラム=みどりんの超手数王暴走ドラミングには、そんなSOILのライブの在り方そのものを刷新していくほどのラジカルさがあった。
「ワールド・ツアーのキック・オフ・パーティーへようこそ! ワールド・ツアーには、秋の全国ツアーも含まれてるから。ということは、今日は下半期の始まりなんです!」とか「あ、そうだ。1つ言わなきゃいけないことがあった。アルバム、ほとんどできたぜ!」とか、もはや「言うことすべて名台詞」状態の風格をまとった社長からさりげなく重大発表があったり、さらにキャッチーでさらにフリーキーな新曲が自然にセットリストに組まれていたり、今やお馴染みとなった丈青/秋田ゴールドマン/みどりんのトリオ編成=J.A.Mのコーナーが目を見張るほど素晴らしかったり、タブゾンビ&元晴の高らかなファンファーレが眩しく鳴り響く“SAHARA”から始まった終盤のクライマックスでは♪ラーラーラーと会場一丸の大合唱が湧き起こったり……これで踊ってしまったが最後、安易なダンス・ロックやディスコ・ナンバーなんか聴けない!というくらい、音楽的に危険で爽快なステージだ。
「お前らのおかげで、いい空気ができた。いいキック・オフ・パーティーになった。ありがとう!」と、本編最後に再び社長。「今日この日にしかない音を」と、この日の社長は幾度となく口にしていたが、SOILの場合はその気迫が形となって、本当に曲の姿を変えて、アレンジを未知のものにしていく。つくづく不思議で、だからこそ最高のバンドだ。アンコールで、「なんでこんなに気持ちいい空間が生まれたのか? お前たちが集まったからだよね。きせ、奇跡的に……」と、肝心なところで噛んでしまうくらい、社長含め6人は全力を出し切ってステージを後にした。ヨーロッパ・ツアーを経て、SOILの6人はどれだけタフになって帰ってくるのか? その前に、9月発売のアルバム『6』はどんな作品になるのか? と、ライブを観終わった瞬間からいろんな期待が渦を巻いて仕方がない。そんな一夜だった。(高橋智樹)